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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十三章 ブラック校則

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バレンタインを拒む女


 数学を担当している中年のハゲ教師が結婚して、現在新婚旅行中と聞き俺は驚きのあまり、立ち上がって叫んでいた。


「あの先生が結婚!? ウソでしょ……」


 すると短足先生が俺の顔を睨みつける。


「こら、私語をするな! お前は確か1年7組の水巻だったな? なんであの先生が結婚したことを不思議に思う?」

「それはその……もうお年を召されていたし。結婚は諦めていたのかなと」

「失礼なことを言うな! あの人はああ見えて、誠実な人柄なんだぞ。一回り下の若い女性と結婚してもおかしくない」

「ひ、一回り下の女性……」


 そんな人柄だけで結婚できるなら、前世の俺はなんだったんだよ。

 37歳で死んだんだ……。じゃあ25歳ぐらいの若い嫁がもらえたのか?

 

  ※


 いざ補習が始まってみると、授業の時は違ってとても砕けた態度の先生が色んな問題を黒板に書き、それを俺たち生徒がノートに書いて、問題を解いたら先生に提出するスタイルだった。

 でも、授業の時と違い、基本的に短足先生が怒ることは無かった。

 むしろ優しく感じる。


「水巻、ここは違うぞ。お前ならもっとやれるさ、うん。頑張れば国立の高校ぐらい目指せるぞ!」

「はぁ……」


 なんて望んでもいない進路の話まで盛り上げてくる始末。

 それに補佐として入っていたコル●ス先生も態度が全然違う。

 以前、体育の授業で俺に体罰をした時は違い、とても穏やかな顔つきで俺が書いているノートを覗きに来る。


「……どうした? そんなにこの問題が分からないのか?」

「あ、あの公式をどうやって使えばいいか、分からなくて……」


 そう言った瞬間、コル●ス先生の右手が天井まで振り上げられていた。

 ブッ叩かれると思った俺はすかさず両手で顔を塞ぐ。

 しかし、俺の予想とは違い、コル●ス先生の右手は俺の頭を優しく撫でまわしていた。


「え?」

「もっと自分に自信を持て。水巻だったな? お前には165センチという高身長がある。勉学ができなくても、女子バスケという道もあるぞ?」


 また女子バスケ部の勧誘をしてる。

 どうしても、俺を女子バスケに入れたいようだ。

 しかし鼓膜は必要なので、お断りしておいた。


 次の日も放課後の理科室で行われる補習だけは、リラックスできる時間だった。

 学校から下校する時間は遅くなるがここにいる時の先生たちは、いつも優しかった。

 何をしても、いつもニコニコ笑って「どうした? 何が分からない?」と聞いてくれる。


 この補習時間の先生たちの態度を見て、俺は思った。

「そうか……普段の先生はなめられないように演技してるんだ」と。

 90年代初頭ではまだ不良もたくさんいただろう。だから、生徒たちに対して普段は怖い教師を演技しているんだ。

 なんて、すばらしい時間だ。もうずっとこの態度のままいてほしいぜ。

 

 それに周りの生徒も俺と同じくアホの子ばかりなので、気兼ねなく質問できる。


「ねぇ、この問題わかった?」

「え……逆に水巻さんは解けたの」


 と固まっている女子を見て、俺は安心する。


「いやぁ、私が解けるわけないじゃん」

「やめてよ~ 水巻さんだけ、もう補習が終わりかと思ったよ」


 ~それから、数日後~


 毎日、放課後の補習でゆる~い勉強をしていたら、二月の半ばに入った。

 ある日の日曜日、一階のリビングが何やらうるさいので、降りてみると。

 お姉ちゃんがハンドミキサーを手に持ち、ボウルの中を一生懸命混ぜていた。


「ギュイイイン!」という機械の音が部屋中に響いてうるさい。


「お姉ちゃん。一体なにを作っているの? うるさいし、臭いんだけど……」

「あ、藍か。明日はバレンタインデーでしょ? 彼氏の分と義理チョコを作ってんの。よかったら、あんたも一緒に作らない?」

「私が? 別にいいよ。私、チョコが大嫌いだから」

「え、あんたってチョコ嫌いだっけ? 去年まで作ってたじゃん。あの優子ちゃんてお友達のために」

「知らない。とにかく私は絶対にチョコだけは作らないし、食べないよ!」

「そんなに怒らなくても……でも男たちに義理チョコを渡せば、ホワイトデーのお返しがたくさんもらえるよ?」

「興味ない!」


 俺と言う名のおっさんが藍ちゃんという美少女に憑依してから、好き嫌いまで俺になってしまった。

 だから、優子ちゃんには悪いが友チョコ作りは諦めてもらおう。

 

  ※


 翌日の朝、中学校に向かおうとしたら、自宅の前にひとりのセーラー服を着た女子中学生が立っていた。

 優子ちゃんだ。


「藍ちゃん! 今日はバレンタインでしょ? だから今年も藍ちゃんのために、いっぱい手作りチョコをたくさん持って来たよ!」


 そう言って、小さなケーキボックスを差し出す。

 中を見なくても、その独特な香りに俺は拒絶反応を起こしていた。


「うおぇっ!」


 妊婦のつわりに近い症状かもしれない。

 箱の中にチョコがあるというだけで、吐き気が止まらなくなった。

 それぐらい、俺はチョコが大嫌いなんだ。


「酷いよぉ~ 藍ちゃん! 去年まではチョコを作って交換してたじゃん!」

「ご、ごめんけど……今の私にそれを近づけないで……」


 その後、中学校へ向かう間ずっと優子ちゃんから「チョコを受け取って」と言われたが、俺は絶対に受け取らなかった。

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