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88.そしてヤクザになつかれる

「きゃあああ!」


 そのとき、塀の向こうから女性の悲鳴が聞こえた。

 アニキは飛び起きると駆け出す。子分の三人もあとに続いた。俺も追う。


 塀の外は通りになっていた。そこでサメ人間の吸血魔が女の人を襲うまいとしていた。アニキが叫ぶ。


「待て待てぃ! キサマは暗黒鮫のところのシャークマンじゃないかい。DBDの事務所の前で騒ぎ起こしてんじゃねえぞぉ!」

「暗黒鮫って何だよ」


 俺が聞くと、リーゼントのイッチが唾を飛ばしながらまくし立てた。


「この町を支配しようとしている吸血魔の組織じゃ。つねにワイたちと抗争状態。シャークマンは暗黒鮫の中でも最強と言われる鉄砲玉じゃ。DBDが不安定な時期に突っ込んでくるとは、卑劣なヤツじゃ!」


 そこへ大柄な男が近づいてきた。


「吸血魔! 人間を襲っているのか」


 ちょうどいい。俺は男に女の人を任せることにした。


「この人を連れて遠くまで逃げてくれ」


 男は頷くと女の人を連れて離れていった。


「コラ、ガキ。どうして一緒に逃げなかったんだコラ」

「相手は吸血魔だ。放っておけるわけないだろう」

「威勢のいいジャリじゃのぅ。気に入ったぁ。四人目の子分にしてやるぜぃ」


 いいです。そういうの。

 アニキと子分たちは一斉に懐から短刀を出した。

 シャークマンは両腕に武装されたヒレを差し向けてくる。アニキの短刀と鮫のヒレが火花を散らした。


 よし。俺も。アイテムバッグから魔剣を取り出して、アニキから距離を取ったシャークマンに一太刀浴びせた。ところが、斬撃が効かない。


「私の肌はサメ肌です。刃物程度では傷つけることは出来ませんよ」


 刃物って言っても魔剣だぞ。それにサメ肌って。

 続いてシャークマンは地面に沈んだ。時おり背びれだけ出して、俺たちのまわりを泳ぐように、獣が獲物の様子を窺うようにグルグルと回っている。


「どうして鮫が地面の中を泳ぐんだよ」

「兄ちゃん知らんのか。鮫が地面の中を泳ぐのは常識だろうがぁ」


 なんだよ、そのB級映画のモンスターみたいな設定は。


「お喋りは終わりましたか? いきますよ」


 突如シャークマンは地面から飛び出すとアニキに喰らいついた。


「ええいぃ。離れんかいぃ!」


 アニキは肩を噛まれながらも、短刀でシャークマンの腹を刺す。うしろに跳びのいたシャークマン。しかし無傷だ。再び地面の中に潜ってしまう。


「ううう。やっちまたぁ」


 肩を押さえ、うずくまるアニキ。子分が駆け寄る。


「アニキぃ!」

「油断するなぁ。まだ終わってねぇ。アイツのタマ、必ず取ったるぅ」


 俺たちに向かって地面から出た背びれが突っ込んでくる。


「クエナ。力を貸してくれ!」


 カブトムシの鎧を顕現。飛び出して背びれをつかんだ。地面から引きずり出して塀に投げつける。


「その鎧はなんじゃ!」

「話はあとだ。あれ。もう話には出したような。それどころじゃない!」


 俺はシャークマンに魔剣を叩きこんだ。


「グハァ! やりますね。貴方には未知の恐怖を感じます。今回は撤収するとしましょう」


 シャークマンは地面に潜ると姿をくらました。波津壌気・感知で索敵すると、高速で去っていく吸血魔の存在があった。

 追いかけるか。それとも。


 俺は鎧を解除して、手にある魔剣を見た。魔剣でもシャークマンに傷を負わせることが出来なかった。それどころか魔剣は日に日に黒い刀身を白く変色させている。切れ味も悪くなっているような。


「アニキ! アニキ!」


 アニキは息荒く横たわっていた。口には牙が生えかかっている。シャークマンに噛まれたから、吸血魔になりかけているんだ。


「ああ。俺は吸血魔になっちまう。そうなる前にイッチ。オレを殺してくれぃ」

「何言ってんじゃアニキ。オレにはそんなこと出来ないんじゃあ」

「オレはよう、暗黒鮫の仲間になんてなりたくなんかねぇ。人間を襲いたくないんだぁ。なぁニーノ、オレは漢として、お前らのアニキとして死にてぇんだよぉ」

「うう。気持ちは分かった。でもアニキがアニキである最後の瞬間までアニキと過ごさせてくれ」

「俺は良い子分を持ったなぁ。泣くなサーン。それでも将来のDBDを背負う男かよぉ」

「ウェイ……今までありがとうアニキ。仇は必ず取る」


 坊主のニーノはオレに向き直る。


「ここにいるのも何かの縁だコラ。お前もアニキに一言伝えとけ」

「え、うん」


 俺はアニキに近寄って一言告げた。


「波津壌気・逆バージョンと、波津壌気」


 アニキから吸血魔の成分を抜き取り、さらに魔力で回復させてあげた。


「何じゃこりゃああ! 人間に戻って肩の傷も全快だぁ!」

「アニキ!」


 子分たちはアニキに抱きついた。よかったよかった。


「やめろぃ、お前ら。これからのアニキは俺じゃねぇ。そこにいる新町長が俺たちの新アニキだぁ」


 え、なにそれ。


「新アニキ。俺のことはぁゼロォと呼んでくれぃ! 何なりと命令をぉ」

「新アニキ!」


 子分たちが俺に抱きついてきた。やめてくれ。それにアニキ、そのパンチパーマでゼロって名前はどうなんだ。俺はとりあえず、初めての命令をしてみた。


「昼ごはんを買える店を紹介してくれないかな」




 アニキ達と商店街にいくと、事情を知った店の人たちは、挨拶代わりと言ってタダ同然で食べ物を売ってくれた。


 町長屋敷に戻ってみんなと昼食を取る。

 俺はアニキ達が別れ際に言っていたことを思い出していた。


「新アニキよぉ。実は頼みごとがあるんだぁ」


 アニキ達は深刻な表情で話しかけてきた。なんか怖い。


「DBDの親分が先日亡くなったんだぁ。いい人でさぁ、新アニキにも会わせてやりたかったわぁ」

「親分が死んで間もないっちゅうのに、親分の息子である通称ジュニアと、組を支えていた若頭が、仲が悪くて跡目争いをしているんじゃあ」

「今日の夕方、二人は代理人をたてて、代理決闘をしようとしているんだコラァ。新アニキには、その見届け人になって欲しいんだコラ」

「……え、あ、ウェーイ!」


 面倒なことに巻き込まれたな。深沙央さんたちに事情を話すと


「行きましょうよ」

「え? 行くの?」

「町の今後を左右することだと思うわ。町を良くする上ではDBDとも付き合っていかなくちゃいけないだろうし」


 それもそうだけど。


「何より面白そうじゃねえか!」


 アラクネは実に楽しそうに、遠足前日の子供のように目を輝かせた。そう言うと思っていたよ。

 こうして俺たちは地元ヤクザの組長の座を決める決闘を見に行くことになった。


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