木の精霊様にご挨拶?
ええ、はい。頑張ってしまえば、後は何てことありません。おいしく頂きました。
そして、気がついてしまいました。お乳を頂き、お世話していただく。
……これはレイさんをお母さん、もしくは皆のようにママと呼ぶべきなのでは?!
ちらりとディアさんの顔を伺います。
「《どうした、モエ寝るのか?》」
鼻を近づけ、ディアさんが私をくんくんします。
「《ディアさん、…ぱぱと読んだほうがいいのでしょうか?》」
「《そんな事を考えていたのか。世話はするかもしれんがわざわざ父親呼びする必要はない。むしろ我はモエが従えている物だ。呼び名だけで十分だ。さんもいらん。レイの事もな。》」
などとおっしゃいます。
お世話になる人(人ではありませんが)に呼び捨てるなどできそうにありませんでした。
「《呼び方は自由ですよね?ディアさんのままで!》」
…と、主張します!
「《……好きにしたらいい。》」
ディアさんは私にまとわりつくようにくるりと丸まりそのまま伏せをしました。
どうやらお昼寝の時間のようです。
もふもふの毛に埋まりぽかぽかな私は、すぐに眠くなりそのままおやすみなさいします。
「《おい、なぁ!起きろよモエ!》」
…なんでしょう?赤子の私に出来るのはせいぜい寝ることと食べる事くらいなのですが。
辺りは夕焼けに近い色をしています。まだまだ寝られそうです。
「わふわふ!《なぁ!起きろよモエ!あの木!見ろよ!なんかいるって!!》」
…ふぁぁあ。あくびをしながら目を覚まします。この幼い声…ルカくんでしょうか?
「《どうしたんです?》」
………っ!
目を開けぼやけた視界に目一杯ズームされた男の子が映ります。いったいどちら様なのでしょうか?!
〈おはよう、愛されし子よ。〉
愛されし子?私の事なのでしょうか?
「《ええっと、おはようございます?》」
〈申し訳ないのだが能力を貸しておくれ。ここしばらく回復が見込めていないのだ。〉
いったいなんの話なのでしょう?
私は首をかしげます。
一緒に寝ていたディアさんも目を覚まします。
「《なんだ、木の精霊が直接話しかけに来るとは珍しいな。》」
などと呟きます。
【ナビ機能:作動致します。】
あっ、おはようございますナビさん。
【魔力操作により対象の木へ魔力を注ぎ回復させることが可能です。】
んん?回復魔法の出番なのですね?
【ただ魔力を注ぐ行為なので回復魔法とは異なります。】
違ったー。全く違かったー。
まぁ、私に今出来ることはあまりないので出来るのであれば協力は惜しみません。
ナビさん、どうしたらいいか教えてください。
【解:対象の木へ向かい魔力を注いでください。】
はい、ナビさん。残念なお知らせです。私はまだ魔力を感じるという事をしたことがありません。
【…手を握りしめ前へ伸ばしてください。】
はいはい。それなら出来そうです。
【伸ばした先にあるレイの頭の上にある葉を退かしたいと念じてください。】
ほほう?ぼやけた視界に無理言いますなぁ~。と、思いながら薄目でかろうじて見えた葉へどいてぇ~念じてみます。
すると、なにやら糸みたいな物が伸びて行き、レイさんから葉を落としました。
「《?》」
レイさんが不思議がって、キョロキョロしてます。
…この糸みたいな物が魔力なのでしょうか?
【その糸が太くなるように念じて対象の木へ触れてください。】
対象の木へ向かわねばなりません。
…こういうときは甘えて見ましょう。
木の精霊に向かって両手を伸ばしてみます。
「《精霊は人に触れることは出来んぞ?あの木へ向かいたいのか?》」
そういってディアさんが私を咥えて歩いてくれます。
精霊さんって触れないんですね。甘えてみたのにちょっと残念です。
って、私この体にけっこう順応しちゃってません?!まぁ、問題無いんですが!
ナビさんの言った通り木に触れ糸を太く?…よくわからないのでいっぱいにしてまとめたのを引っ付くように念じてみます。
細いのを集めれば太いのになりますもんね!きっとあってるはずです。
………なんでしょうか?
あぁ、どっと疲れが来ました。…ま、魔力切れというやつなのでしょうか?
【解:まだ10/1も消費していません。】
え~っ、こんな脱力感あるのにまだそんだけしか使ってないのか~。意外とあるのだろうな私の魔力。…神様だってそう言っていたのでしたね。
って、私ディアさんに咥えられたままでしたね~。そりゃ疲れる体制ですよね~。宙ぶらりんです。
「《降ろしてください。ディアさ~ん》」
ディアさんは私をゆっくり降ろしてくれました。
はい、脱力感なくなりました!重力に負けてたんですかね?私!
そのような思考をしながらもちゃんも魔力は送れていたようで徐々に木が光出します。異世界、ふっしぎ~。
【これ以上は木に負担かと思われます。】
あっ、はいはい。止めます。止め~。
振り返れば木の精霊さんは嬉しそうな顔をして霧の様に消えてしまいました。
……お礼くらい言われても罰は当たらないと思います。ちょっと残念です。頑張ったのに。
そんな事を思っていると目の前に1つの実が降ってきました。先ほど触れていた木から落ちた物のようです。
言葉ではなく物で頂いてしまったようですね。…食べられませんが。
【イベントリにお仕舞いになられ、食べれる歳になられたら頂かれることを推奨致します。】
おお!その手がありましたね!いや~、はい。忘れてました。
イベントリ。またの名を魔法の集積箱!…と、勝手に呼んでいます!
同じ名称の物をまとめて仕舞えてしまう不思議なスキルなのです!
すみません。どうやってしまうのでしょう?
【仕舞いたいと思いながら持っているものに意識を集中することで入れる事が可能です。】
私は実へ意識を集中させます。入ってて下さい?っと念じたら消えてしまいました。…仕舞えたのでしょうか?
【解:収納されています。】
よかった!無事に仕舞えたようです!
「《変なの消えちゃった?…つまんねーのー。》」
あっ、すみません。ルカくんこの事も忘れてましたね。
のっそりとディアさんがルカくんのもとへ向かいます。
「ぎゃぁん!!」
ゴスッ!っと音が響きます。ルカくんの頭を前足で叩いたようです。
「《木の精霊に傷でもつけてみろこの森から追い出されるぞ?その時は我でも見捨てるしか無くなる。》」
「《うぅ…………ごめんなさい。》」
そうとう痛そうです。蹲ってぷるぷるしてます。
追い出されなくてよかったです。ほんとに…。




