ケース2 自動運転AI(2)
お客様は、ひたすら速さを追い求める運転を、
信条とされていたようです。
しかし、お世辞にも安全運転とは、
ほど遠い運転をされていたようで御座います。
前にゆっくり走る車がいたら、
ギリギリまで近づいて、
執拗にあおってから抜き去った上で、
急ブレーキ、急発進をして脅してみたり……
目の前の横断歩道でない道路を、
ゆっくりと横断している歩行者がいたら、
アクセルを踏んでエンジン音と速さで脅し、
速く渡らせようとしたり……
……といった感じでした。
――AIは、そんな運転を学習していきました……
1,000km超えて、
まずは、基本運転90%、お客様の運転10%の比率で、
運転出来るようになりました。
一応、AIは、お客様に、
自動アシスト機能を使われるか、確認を致しましたが、
お客様は、即決でOKの返答をされたようでございます。
AIは、お客様よりも、十分に車間距離を取りながらも、
お客様の運転で学習したように、
前を走る遅い車を自動的に煽り、
前車がいない時には、最大限の速度で走行致しました。
2,000km超えて、
AIは、お客様の運転比率を上げるか、確認しましたが、
ここでも、お客様は、
即決でOKの返答をされたようでございます。
――当社のAIは、学習していない事は、
絶対にしないように作られおります……
AIは、お客様の運転で学習したように、
道路を横断する歩行者をも、煽るようになりました。
きっと、お客様は、何度も何度も、
そういう運転をされていたのでしょう。
お客様は、その度に、わざとにハンドルから手を放し、
相手に、より恐怖感を与える事までされていたようです。
煽り運転で、事故を起こした高齢運転者の方の対して…
「あはははは……、ざまぁみろ、
俺の前をちんたら走ってるのが悪いんだ」などと
暴言をつぶやくのも日常茶飯事だったようです。
当社のAIは、
お客様の運転を忠実に再現するものであり、
お客様の望まない運転はしない仕様で御座います。
お客様が、普段から、
どのような運転をされていようと、
それを模倣し、より極めようと致します。
お客様は、AIが自分好みになった事で、ご満悦のご様子。
走行距離も5,000km超えて、
お客様好みの運転比率を、選択出来るようになりました。
お客様は、ためらわずに、
お客様好みの運転比率120%を選択しました。
これにより、
AIは、お客様の運転を完全コピーしてなお、
お客様の運転を、
より高みに上げる動きを再現するようになりました。
人の能力を超えるギリギリまでの接近と、
人の能力を超えた回避を繰り返し、
究極の煽り運転を実現していきました。
ある日、AIは、お客様の恩師の車を煽り、
その車を事故に追い込み、恩師の方は重症を負われました。
その時、お客様は唖然としていましたが、
AIがお客様に変わり、
お客様の声を忠実に再現した声で発声しました。
「あはははは……、ざまぁみろ、
俺の前をちんたら走ってるのが悪いんだ」
この様子は、近くを走っていたドライバーの
ドライブレコーダ映像がネットにアップされ、
とても有名になりました。
次に、AIは、お客様の彼女の車を煽り、
彼女の車が事故にあいました。
お客様は、しばし呆然としておりましたが、
ここでも、AIはお客様に変わって、
お客様の声で、
外に向けて大声で発声しておりました。
「あはははは……、ざまぁみろ、
俺の前をちんたら走ってるのが悪いんだ」
彼女は、この事故で、命を落とされたそうです。
お客様は、傷心されたのか、車を止めて、
彼女を救いに行こうと思ったのか、
走行中に、AIを切りました。
しかし……
現在、人の限界を超えた高速走行中です。
人の反射速度を超える限界走行は、
人の力では対処出来る限界を超えております。
AIを切るのは自殺行為です。
お客様は、盛大に事故を起こして、
車を大破、ご自身も大けがを負いました。
その後、事故の裁判が行われ、
警察から依頼がありました。
契約通り、お客様の運転の全てを記録した
ドライブレコーダの全記録を、
一般公開致しました。
納車の際に、説明をしましたが、
当社の車は、ドライブレコーダの映像を、
当社サーバーに全て記録しております。
ご要望に応じて、いつでも一般公開できるように……。
これにより、多くの余罪が明らかとなり、
前代未聞の大きな刑と、賠償請求が確定したそうです。
ここまで来て、お客様は、
やっと安全運転の大切さを知ったようで御座います。
もっとも、裁判の結果、どんなに改心しても、
免許を永久に与えられない事が決まったようですが……。
皆さまも、運転には、ご注意くださいませ。




