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龍神の思い


ある日の晩、夢を見た。


神社に参拝して数週間が経った頃だった。


神社の境内の中央に私は正座している

やや霞(かすみ)のかかったぼやけた雰囲気が辺りを覆っている


(私はいま布団の中で眠っているはず。。。何で神社にいる?)

(これは夢だ。。。所謂(いわゆる)、自覚夢・・・明晰夢ってやつか?)


初めての感覚に戸惑いながらも、きょろきょろと周りを観察する


何故真っ先に気付かなかったんだろう?

正座している私の正面には灰色の絣(かすり)を着た丸みを帯びた顏の

いかにも翁(おきな)って感じの人が対峙して座っている。


おじいさんというより昔話にでも出て来るような翁というイメージしか浮かばない、まるで仙人って感じだ。

純白の髭が首の下辺りまで伸びて、灰色の服なのに全体が白く光っている


「神様。。?」


直感で思わずそのまま頭を垂れ深くお辞儀した格好になる。


(( ・・・大きゅうなったのぅ・・・蛍真 ))


直接頭の中にゆっくり語りかけてきた言葉に思わず涙腺が刺激されジワリと眼が潤む


(( 我はここの龍神じゃ、蛍真の事も昔からよ~く知っておる ))


「・あ・・・ああ」


涙が自然と頬を伝った。上から見つめる瞳に何もかも見透かされたような気恥ずかしさで固まる。


頭は上げていない、その光景がありありと頭の中に映し出されるのだ。


(( この世界における絶対真理は等価交換 ))


言葉が頭の中に語り掛けてくる

なんか俗っぽい言葉だと思った、自分に解りやすい言葉に変換されたのか。

思わずパチンコのって頭に浮かんだが慌てて打ち消した。

「・・・等価交換」


でも今の私にそんな言葉は意味を為さない


言われてる意味が掴めなかった。


「・・・もう疲れました。たった一人になりました」


翁は何も言わず、ただ私を優しい瞳で見ている。


「私は憎しみに心を汚しすぎた・・・」


「・・・辛いです」


ヤンキー達の騒音に苦しめられてきた年月が一気に頭の中で凝縮され駆け巡る

あぁ・・・ほんとに何も出来なかったんだな。。。


「許せない・・・・絶対許せない!」

「叶うなら・・此処まで私を追い詰めた不良連中を豚や牛にでも転生させてください!」


「もう何もいらない、私の魂の消滅が対価でいい!こんな感情もいらない!もう消え去りたい!」


本心だった、自然と子供のような純粋な怒りと悔しさがにじみ出てくる。


(( 人の魂の行きつく先は経験と培われた徳のみじゃ ))


頭の中に響く


「叶うなら、これ以上、痛みや苦痛をもう感じたくない」

「ただ眠るように消えたい・・・それだけです・・・」


自分の感情が爆発するのを防げない

父のように母のようにただ静かな瞳で優しく私を見続けている翁に

溜め込んでた感情が嵐のように吹き荒れて飛び出てくる。


もう何もかもが嫌になった

本当にそう思った。

何故こんな意味のない苦しみを味合わなければいけないんだ。


蹲り願望を泣き叫ぶ私に目の前の翁はやがてすっと立ち上がり

私の前に立った。そして手を私の頭にすっと添えた


あたたかな優しい手の感覚が当てられた頭に伝わってくる


(( ここも随分、せからしゅうなった。かつてより日ノ本は音の大切さを何より

分かっていたものじゃ。我もしばらくこの地を離れる事とするかのう。。。))


翁は優しく微笑み、そう静かにゆっくりと語った。


「龍神様!」

はっと頭を上げた時、布団の中で目が覚めた。


なにもない静かな部屋で涙で目を腫らした自分がいる


「夢。。。じゃない、、、か。。。」


ふっと力が抜けていく。


***************************


人の魂は永遠であり消滅は神の意志すら届くところではない。

未熟な魂は転生を繰り返し喜怒哀楽を通して魂は玉を目指す

苦痛にあえぐ魂や無残に散った魂も100年1000年の時を超え

やがて再結晶し願いを果たすため再び蘇る


1つの文明が永遠と続かない秘密が此処にある

偽政者によって拡大された世界はやがてその陰で繰り返され

無念のまま死んだ者たちに復讐される

それは数100年単位で転生された魂による場合が多い。


この時蛍真の述べた言葉は矛盾した望みだった。

しかし龍神は蛍真を子供の頃から見てきた、

神社を掃除し無邪気に遊ぶ姿を好ましく思っていた

故に願いは聞き届けられる。


蛍真の世界からの消滅と、痛み苦痛を伴わないという望みと共に

異世界転生といったフラグがここに成立してしまった。


****************************



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