147 俺たちは子爵と野盗の接点を考察します
「シューターさん、ぼくはもう大丈夫だよ」
体力全快をアピールする様に、ひもぱん一丁でバンザイをしてみせるけもみみかわいい。
「後遺症も残らなかったみたいだし、本当によかった。でもエルパコ、無理はするなよ?」
「うん、わかった……」
「あたしがしっかりと治療を施したのだから当然ね」
けもみみの頭を撫でてやると、エルパコは上目遣いにぼーっとした表情で俺の顔を覗き込んできた。
してみると、主治医であるところの雁木マリまで一緒になって俺に褒めて欲しいのか自慢げな顔を見せて来るではないか。
「うんうん、マリのおかげだな。ありがとうな」
「ちょ、何であたしまで頭を撫でるのよ!」
ちょっとの抵抗をして見せる雁木マリだったけれど、悪い気がしないのか抵抗するのは口だけだった。
そういうところもかわいい婚約者である。いいね!
「と、ところでニシカさんと奴隷の姿が見当たらないのだけれど」
「ベローチュは今、シェーン子爵の身辺洗い出しのためにひとっ働きしてもらっている。ニシカさんは、ちょっと野暮用お願いをしたところだな」
「野暮用?」
「エルパコが寝ている間に、やれる手だけは打っておこうと思ってな。いろいろお願いをしていたんだよ」
俺はそう言いながら宿屋の部屋を見回した。
まだニシカさんにお願いした事は、みんなには伏せておこうと思っている。
翌日の朝の事である。
部屋には俺と雁木マリとけもみみの他に、徹夜で側に付いていてくれた愛すべき正妻カサンドラとようじょの姿がある。
「カラメルネーゼ卿の姿も見えないわね」
「本当だ」
言われてみれば、蛸足麗人の姿がいつの間にか見えなくなっているので、俺と雁木マリは顔を合わせて思案した。
確か朝の段階では、食堂で野牛の兵士やモンサンダミーなど傭兵の連中と雑談をしていた様に思う。
「それなら、今朝がたオッペンハーゲン公商会の商館に顔を出すと言っていたのです」
「オッペンハーゲンの? リンドル市内にある商館ですかね、シューターさん」
睡眠不足で少し疲れているけれど、けもみみが元気になって安心した様な顔をしたカサンドラがそんな質問をして来た。
「シューター、あなたの指示かしら?」
「いや、俺はニシカさんには野暮用をお願いしたけれど、カラメルネーゼさんには何もお願いはしていないぞ?」
第一カラメルネーゼさんは女村長に頼まれたからなのか、いつのまにかサルワタ外交使節の面々に加わっていたが、一応は員数外の人間という事で彼女はもっぱら自由に行動をしている事が多いのだ。
雁木マリの質問に俺が疑問を頭に浮かべていると、ようじょが言葉を続けてきた。
「どのみちリンドルの後はオッペンハーゲンに向かう予定があるので、カラメルネーゼねえさまに先触れをしておいた方がいいと進言したのですどれぇ」
「おお、なるほどッヨイさま。賢いですねぇ」
えっへんと胸を張っているようじょの頭も撫でていると、その横でカサンドラがけもみみが服を着るのを手伝ってくれていた。
みんな撫で撫でが好きなので、俺はちょっと幸せな気分になった。
そんな幸せ気分に浸っているところで水を差す不快音が聞こえて来るじゃないか。
コンコン。
寝室の扉を叩く音がしたので一同の注目がそこに集まる。
すると雁木マリがみんなを代表して声をかけた。
「どうぞ、入ってちょうだい」
「失礼しやす。あの大使の旦那がた、宿屋の主人いうのが面会を求めておりやすが。どうしやすか」
「何でも他のお客様から苦情が出ているらしいですよ、シューターさん」
「その客ともども、宿屋の主人をとっちめてやりますかね?」
扉が開くと、ガラの悪い傷だらけの顔をした傭兵モンサンダミーと、ゴブリンのッジャジャマくんがひょっこりと顔を出したのだった。
「みなさん、そんな物騒な発言をしてはいけませんよ。わたしたちはサルワタの顔なのですからね?」
「し、失礼しやした姐さん!」
眼の下にクマを作った、らしくない顔をしたカサンドラのひと言によほど凄みがあったのか、悪相の傭兵と量産型ッワクワクゴロ兄弟は直立不動で謝罪した。
◆
「あんたら、悪いが出て行ってもらえないかね」
「えっ」
宿屋の親爺はこう言った。
「ミノタウロスやら盗賊みたいな連中やらが、宿屋の入り口や食堂に一日中たむろしているでしょう」
「は、はあ」
「お客さまが怖がって、みんな逃げて行ってしまうんですよ。挙句の果てに先日は、ガラの悪い長耳のあなたの奥さまが、酒を持って来いと晩酌をしていたお客さまを恫喝してくる始末です」
「も、もうしわけございません。もうしわけございません」
俺とカサンドラはふたりそろって平伏した。
ガラの悪い長耳の奥さんというのは、たぶんというか間違いなくニシカさんの事だろう。
リンドルにやってきた晩、ヘイジョンさんを相手に夜遅くまで酒を浴びる様に呑んで管を巻いていた事があるので、たぶんその時の事を言っているのだろう……。
食堂での事である。
ドワーフ面にヒゲをたっぷりと蓄えた宿屋の親爺は、無慈悲にも土下座した俺たちに向かって路銀の詰まった革袋を差し出してきた。
「前金でずいぶんと頂いておりましたけれど、お返しするよ。出ってってくれ」
全裸でないので平伏しても効果が無かったのだろうか……
俺たちは宿屋を放り出されてしまったのである。
◆
旅を重ねる度に増え続けている随行員の数も今や三〇を超える有様である。
してみると都合よく次の宿屋を簡単に見つける事が出来るはずもないので、俺たちは仕方なくいつもの場所を頼る事にした。
ようするにブルカ聖堂会の関連施設である。
リンドル領は大きな街をかかえる土地という事もあってリンドル聖堂の他にも教会堂がいくつか街の内外にあり、修道院も郊外にあるらしい。
今回はすぐに移動する必要があったために、大人数を収容可能なリンドル聖堂をあてがってもらう事になったのである。
「最初から、聖堂に泊まればよかったんじゃないの?」
「そういうわけにはいかないわ。やはり外交は面子の問題だもの。サルワタの人間が旅費もケチって聖堂を宿屋代わりに使っていると思われるのは、よく無い事だわ」
「そういう、ものなの?」
「そういうものよ」
けもみみと雁木マリが会話をしている姿を見かけるのは珍しいな、などと思いながら宿泊所の中に荷物を運び込みながら俺はそんな姿を見やっていた。
ハーレム大家族が和気あいあいとしているのは、いいね!
ちなみに留守にしていたニシカさんやカラメルネーゼさん、男装の麗人への言付けは宿屋の親爺に残してきたので多分大丈夫だ。
その夜の事、今後の善後策を話し合うために宿泊所の一室にみんなが集まる。
ちょうどその時にオッペンハーゲン商館に顔を出しに言っていたカラメルネーゼさんと、シェーンに接近する人間の洗い出しを頼んでいたベローチュが戻って来たのである。
いいタイミングだぜ。
「ご主人さまにご報告します。シェーン子爵の近辺に、明らかにブルカ辺境伯の手の者と思われる人間が接近している事を確認しました。具体的に言うと、シェーン子爵が趣味にしている絵画の蒐集を商っているのがブルカ商館であるらしく、そこの人間が密かにリンドル城への出入りをしている様ですね」
自分がこの眼で確かめたので間違いありません、と男装の麗人がまず自信満々に報告してくれたのである。
「マリアツンデレジア夫人も絵画や陶磁の蒐集を趣味にしていたはずだが、これもブルカ商館を利用して集めていたのか?」
「いえ、それはどうやら違うと確認が取れていますわ。そちらはオッペンハーゲン方面からの蒐集をなさっているのです。王都とリンドルを繋ぐ交易のルートは、ブルカ経由とオッペンハーゲン経由のふたつがありますもの。ブルカは税を高く賭ける事で有名なので、マリアツンデレジア卿は恐らくオッペンハーゲン経由での蒐集を出入りの商人に命じていたのですわ」
俺の疑問に明確な回答をしてくれたのは、調べを行っていたベローチュではなくカラメルネーゼさんの方だった。
彼女は商人のひとりとして、この街へやって来た時も独自に調査を行ってくれていた。してみると、その時にすでにその辺りの情報を入手していたのかもしれない。
「しかし義母上と同じ趣味に興味を持ったシェーン子爵は、自分でも子飼いの人間を使って蒐集を試みたわけです。城から出入りしている人間は家中に出仕している文官のひとりですね」
この辺りは推測ですが、と前置きしたベローチュは、俺たち集まった人間を見回しながら言葉をつづけた。
「たぶん、旧ブルカ出身の者だったのではないかと思います。文官の中にかなりの数のブルカ出身者がいたという事ですし、その伝手を使ってブルカ商館を出入りしていると考えるのが妥当でしょう。その文官に限らず、商館からも何人かが頻繁にリンドル城に出入りしている事は確認させました」
「お前、よくこの時間に短時間に調べる事が出来たわね」
目ざとくその点を指摘した雁木マリに、伏目がちだった視線を上げてニヤリとしてみせる男装の麗人である。
「セレスタの人間は自分の他にもリンドルにいますからね。オコネイルさまのお名前を出して協力を仰ぎました。セレスタの商館はありませんが、領内の御用商人がこの街に店を出しておりますので」
「なるほど、他に何か気付いた点はあったか?」
「触滅隊の件ですが、やはりこの街にも何人かは潜んでいる事は間違いないと思います。昨夜、カサンドラ奥さまを襲おうとした男ですが、ヘイヘイジョングノー氏に協力してもらって死体の似顔絵を描いてもらったのですよ。そうしてみると、」
どうやらその男、ブルカ商館を出入りしていた事が調べてみると明るみに出たというのである。
「他にも軍隊崩れと思われる人間が、ブルカ商館を出入りしていた事も近くの商人に聞き込みをしたところ発覚しました」
「どうやったらそんな事がわかったんですか、どれぇのどれぇ。普通の格好をしていたら、兵隊上がりかどうかなんてわからないのです」
不思議そうな顔をしていたようじょに、俺が口を挟んで説明する事にした。
「それはですねッヨイさま、一見すればすぐにわかります。軍事訓練を受けた人間というのは、歩き方ひとつをとっても独特ですし、数人いれば妙に規則正しい行軍めいた歩き方をします。それと腰の運びというのも、いつでも臨戦態勢に入る事が出来る様にするので、たぶんその辺りからベローチュは察したんでしょう」
むかし俺がアパレル企業でバイトをしていた経験がある事は過去にも触れた事だ。
あそこの社長も店長も、偉いひとはみんな自衛隊上がりのひとばかりという一風変わった企業であったけれど、ふと面白い事を言っていたのを思い出した。
街の中で自衛官か元自衛官の人間に出くわすと、それが人ごみの中でも簡単に見分けがつくというのである。
百貨店の物産展の様な場所ですらそれが「あ、同業者だな」とわかるというから驚きだ。
してみると同じ様な理由で、妖精剣士隊の出身だった男装の麗人には、それが簡単に見抜けたのかも知れない。
俺も熟練の格闘技経験者と対面すれば、大体の場合は立ち居振る舞いを見ただけで何となくその実力がわかるから、間違いないだろう。
「そうなのですか、どれぇのどれぇ?」
「はい、ご主人さまの仰る通りですね、あれは軍隊崩れで間違いないと思います。そしてそれは触滅隊の主要構成員の状況と合致するというわけです。それにやはり人相が悪かった」
商館職員のフリをしながら普段は官憲の眼を欺き、時には野盗働きをしているのか。
だが野盗稼ぎをしている人間たちなので顔も荒んできていて、その辺りも隠せない要素になってきているのかもしれないな。
そんな事を考えていると、ようじょがふっと俺の顔を見上げるのだった。
「どれぇ!」
「どうしましたッヨイさま?」
「きっと触滅隊に襲われた隊商の被害を調べたら、ブルカこーしょーかんだけが襲われていないのがわかるはずです」
「!」
ようじょが軍師みたいな顔をして俺にそう告げた瞬間、男装の麗人が報告の途中にも関わらず立ち上がって驚いた顔をしているじゃないか。
「ご主人さま、中座をお許しください」
「どうした、何か思い当たる事があるのか」
「ありますもなにも、ただちにセレスタに問い合わせを入れましょう!」
勢い勇んでベローチュがそう言った。
すると雁木マリもそれに同調する様にしてベローチュの言葉に乗っかる。
「リンドル領内での調べでブルカ商館の荷物だけが襲われていないというのであれば、これは言い逃れされる可能性があるわ。けれど、セレスタでも同じ状況という事であれば、もはや言い逃れできるものではない。ベローチュ、触滅隊が主に活動している縄張りというのはどこからどこまでか、わかるかしら?」
「おおよそリンドル往還と呼ばれるゴルゴライとリンドルまでの街道沿い、それからそこを多少は離れた村々、という感じでしょうか」
「カサンドラ義姉さん、地図はありますか?」
「これですね。ちょっと待ってください」
カサンドラがあわてて旅荷の山の中から地図を持ってくると、寝所の小さな机の上にそれを広げた。
道中俺やニシカさんがいつも見ていたものである。
当然小さいので、みんなが立ち上がって肩を寄せ合う様に車座の格好になった。
ようじょは必死で背伸びしても地図を見る事が出来ないので、素早くけもみみが自分のイスを差し出して、俺がその上に抱き上げてやる。
「覚えている限りですが、こことここ、それからここでも襲撃されましたね」
「オッペンハーゲン側では襲われていないという調べはついておりますわ。なので、ダアヌ派の商会もみんなこちらの街道を使っているという話でしたもんね」
「そうね、それであたしたちが襲われた場所がここ……」
ベローチュの言葉にカラメルネーゼさんが乗っかり、最後に雁木マリが締めくくる。
こうしてみると、ぽっかりと過去に襲撃のされていない場所がひとつあった。その場所を差してようじょが示すと、
「どれぇのどれぇ、往還とその周辺の中で、このあたりだけ襲撃があまりないんじゃないでしょうか。ここを調べれば触滅隊のアジトがあるかもしれないのです」
「養女さま、ただちにセレスタとリンドルに問い合わせて、詳細な襲撃地点の地図を作製する事にします。ご主人さま、失礼します!」
机に広げた地図を引ったくった男装の麗人は、貴人への礼をとるのもそこそこに、豊かな胸を荒ぶらせながら飛び出していったのである。
「思わぬところから、触滅隊のしっぽが掴めそうになったな」
「本当ですねシューターさん、まさか触滅隊のアジトを攻撃するのですか?」
「いや、今はそういう事をしている場合ではないし、その場所はリンドルの領内だからなあ。襲われもしないのに勝手な事をやるわけにもいかないから、了解もいるし……」
「ねえさま、どれぇ。その必要はないのです。もしその場所に見当がついたなら、リンドルの御台ねえさまに報告をすればいいのです!」
俺とカサンドラがそんな会話をしているとようじょがそんな風に助言をしてくれた。
まあその通りだ。何も俺たち自身の手で、その様な事をする必要などどこにもないのである。
「これで触滅隊がブルカの息のかかっている連中である事は、確定的になったと言えるんじゃないかな」
領地経営はダアヌ夫人派の職掌であるから、マリアツンデレジア夫人にこの事を通告すればきっと彼女を経由してオゲインおじさんのところにこの情報はもたらされるだろう。
ダアヌ夫人派も派閥の面子があるだろうから、これは是が非でも触滅隊を潰しにかかるだろう。
これできっとダアヌ夫人もオゲインおじさんも、ブルカ辺境伯がいかに危険な存在であるかを改めて認識できるはずだ。
「多少でも感謝をしてくれるのなら、これを機会に両派を手打ちに持ち込む事が出来るかもしれないわ」
「多少じゃ困るんだなあ。オゲイン卿とマリアツンデレジア夫人を引き合わせて、俺たちと三者会談でもぜひしなくちゃいけない」
俺たちの話の続きをしていたところ、ニコニコ顔をしたカラメルネーゼさんが触手でもって俺の肩をトントンと叩く。
「おーっほっほっほ! シューター卿、わたくしからひとつ嬉しいお知らせもありますわ」
「な、何でしょう。オッペンハーゲンの件でしょうか?」
「そうですわ。リンドルの件が片付いた後にオッペンハーゲン領に向かう事を伝えたら、商館の方でその旨を歓迎するとご返答をいただきましたわよ。あそこの男爵さまは代々ブルカ嫌いですわ。今回の外交の趣旨をそれとなく伝えたら、いい具合に食いついてきましたわよ」
商談チートスキルでも持っているのだろうか、カラメルネーゼさんは蛸足をうねうねと嬉しそうに動かしながら、得意げな様子で俺たちにドヤ顔をしてきたのである。
「辺境開拓以来のライバルという事でしたけど、何でそんなに大喜びされるんですかねえ」
「どうやらブルカ伯は、輸送コストを高騰させるために触滅隊を使っている節があるのですわ」
「ほう?」
「リンドルと王都の間にはブルカ経由の方法とオッペンハーゲン経由の方法がある事は存じ上げていると思いますけれど、オッペンハーゲン経由は距離も大回りになるので輸送コストがその分高くなりますわ。触滅隊が暴れれば多くの商会はリンドル往還を避けて、仕方なくオッペンハーゲン経由を選ぶでしょう?」
「そんな事をしたらオッペンハーゲンが儲かるんじゃないですかねぇ。いや待て、そこでブルカ伯の息のかかった商会だか公商会の商館だか、それだけは触滅隊に襲われないという様な寸法なのか……」
何やらブルカ辺境伯も色々な方法で、リンドルなりオッペンハーゲンなりを締め上げる方法をやっているらしい。
経済戦争を周辺国に仕掛けて、値を上げたところで取り込むつもりなのだろうか。
「それもありますけれど、触滅隊は基本的に河川を使った船舶の流通については手を出していないのです。つまりリンドルへの上り道、輸出代価の金目のものや高価な衣類だけが襲われるのですね、カラメルねえさま! ブルカ辺境伯は悪い事を考えるのです!」
「悪い事を考えるものだ。そこまでやっていたら、そのうち俺たちみたいに、ブルカ商館だけが触滅隊の被害にあってない事もわかるだろうに……」
「その企みが暴かれた時には、ブルカ伯の仕掛けた魔法が爆発するときなのかもしれないのです」
ようじょの言葉にゾクリとしたものを感じる。
「だがそんな事はあたしたちがさせないわ。シューター、あなたもニシカさんを使って何かをやらせているのでしょう?」
「あ、ああ。後でその事は教える。というかニシカさんはしばらく帰ってこないからな」
「あらそうなの?」
俺たちがニシカさんの動向について話そうとしていたその後ろで、寝台にふたりそろって腰かけた奥さんたちの声が耳に聞こえてきた。
「むつかしいことはわからないけど、ぼくわかるんだ」
「それは何ですか、エルパコちゃん?」
「シューターさんが全裸になれば、もうすぐ解決だよ」
「そうですね、エルパコちゃん。落ち着いたらリンドルの街でお買い物をしたいですね」
「うん。きっと秋分の祝祭日までに、リンドルは平和になるよ」
振り返ると、クリスマスまでには家に帰りつくみたいな口調で、けもみみが瞳を輝かせて元気にそう言っていた。
それ、フラグとかそういう事にはならないよね? ね?




