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食べ物で遊んではいけません。  作者: 九重センジ
第二章・クロウリー魔法学院
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申請の時間




この世界に来て2日目。

とある経緯で俺は一旦旅を中断し、ショーの手伝いをする事になった。俺としては一刻も早く凶星を見つけ出したいのだが…。


とりあえず、手っ取り早く終わらせよう。ごねて抵抗するよりも、その方が賢明な判断だ。そう自分に言い聞かせながらも、俺の目はビスタの挙動を追い続けていた。



◆◇◆◇◆



ショーは、「魔法を使ってパフォーマンスをする」というコンセプトに沿い、参加者名簿に登録さえされていれば人数、魔法の使い方に特に制限は無いらしい(流石に危険だと思われるものはNGを出される)。その中でクオリティや魔法の使い方などが審査され、得点が与えられるので、形式的にはショーと言うよりもむしろコンテストに近い。


俺たちもチーム「白夜(ホワイト・ナイツ)」として登録申請に向かった。

参加者は大勢おり、4人組、5人組の大所帯もちらほら見られたが、

ほとんどが学生同士一人か二人であった。


「そういえばビスタ、演目は何をするのか考えてるか?」

「昨日人型の嵐を足止めした時に合わせ技をやったでしょう?あれと同じことをするんですよ」


ビスタによれば、大量のはんぺんを召喚と同時に凍らせて氷の彫刻を作る、ということらしい。はんぺんの表面や中に氷ができて、その氷が接着剤のようにはんぺん同士をくっつける。ちょうどレンガの壁と同じような仕組みだ。はんぺんをレンガ、氷をレンガとレンガの間に挟まっているセメントだと考えて頂ければよい。


ふと、俺の脳裏に一つの疑問が浮かんだ。


「おいおい、そんな回りくどい事するくらいなら、最初から普通に氷を作った方がいいんじゃね?」

「それは無理です」

「は?」

「無理なんです」

「……そうか!そうだった!」

「はい?」


そうなのだ。「剣に嫌われた剣士」の話の中でそうだったので覚えていたのだが、この世界における魔法は世間一般で言われる魔法とは少し違う。例えば、「火の魔法」と聞けば多くの人は炎を生み出して相手にぶつける、あるいは身体などから炎を噴き出すものを連想するだろう。しかしこの世界のそれは「ものを燃やす魔法」である。だから燃やす対象となる「もの」が無ければ使えないし、火のつきにくいものなら発動が困難になる。ビスタが使う氷属性の魔法も同様だ。


「…い、いやぁ何でもないんだ、気にしないこった」

「はぁ…?」

「そんなことより!は、早く彫刻にするもの決めちまおうぜ!」

「センジさん…見てて痛いです…」


うっ…

ビスタの呆れたような表情が、視線が、声が、俺の心に突き刺さる。


それから沈黙すること約10分。


「あ、それじゃ行きますんで」

「行くって?」

「決まってるでしょう、授業です。あ、教室に覗きに来ちゃ駄目ですよ?

夕方まで出てこないので、学院敷地外で適当に時間潰してて下さいね」

「りょーかい。ライオン巡りでもしておくよ」

「レギオンです。いい加減覚えてください」

「あ、ああ…」


ビスタはそう付け加えると、まだ朝もやに包まれてうっすらとしか見えない魔法学院に駆けていった。もやが晴れるまでには、まだ時間がかかりそうだ。


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