第14話
茶をすすり、頭の中を整理しながら口にした。
「まず、月沈国の17代目皇帝の息子である皇太子が祈祷を依頼したのがきっかけだ。祈祷は『皇帝を殺してほしい』ということ。理由は、17代目皇帝が16代目皇帝を暗殺したため、その復讐ということになるな」
「先帝ということは皇太子にとってみれば祖父、ですか?」
「いいや。16代目は17代目にとってみれば兄であり、皇太子にとって伯父にあたる」
「ああ……」と明櫻が呟く。
「本来であれば17代目が即位することはなく、16代目皇帝の息子が即位するはずだった。しかし、17代目は自分の欲のために16代目を殺したというわけか……これはいい」
いやらしい笑みを浮かべる明櫻を見ていると、どことなく悪鬼らしいと思う。面白がり、楽しそうだった。
なにを考えているのかなど、悪鬼の思考は手に取るように分かる。
もっと争え、もっと血を流せ、もっと派手に大胆に──。
「そして、2年前、伯父の復讐のために当時皇弟となっていた叔父と協力関係となる。まあ、皇帝を倒すためだ。しかし、叔父は皇帝に殺される。それも、皇太子の前で、だ。皇太子はその際、化け物となった皇帝の姿を見ている」
「化け物ですか……どういう姿だったのでしょうね。聞きました?」
「聞いていない」と言うと、明櫻は目を丸くした。
「大事なことでしょう」
「……そういうのは部下がいつも聞いてくれるから……そのときいなかったんだよ……」
言葉を詰まらせる。すると、明櫻は声を出して笑った。
「あなた、天狐にまでなったというのに、こういう探偵仕事は向いてませんね! 部下がいないとなにもできないなんて。あなた、天狐より人間に向いてるよ」
おかしく笑う明櫻に明紅は思わず唇を尖らせる。
明紅は昔から抜けていると指摘されることが多かった。だからこそ、その穴を埋めてくれる朱亮を重宝しているのだ。
「では、あとでちゃんとどういう姿をしていたか確認してくださいね」
「ああ」
「それで?」
「歴史保管庫で調べたとき、書物が契約した時点から真っ黒に染まっていた。どの皇帝も」
「それはうちの主と契約していたからでしょう。そして、17代目とは途中で破棄されているので、普通であれば途中から黒く染められていないはず。しかし、化け物になっているとなれば……」
「そうだな」
そもそも、何者かに体を乗っ取られている可能性だってある。早めに対処しなければならない。
「しかし、皇帝を殺したら次の皇帝はその皇太子ですか?」
「そうなるだろうが……野心は感じられない」
「へえ……なんだか……楽しそうなことがおきそうですね」
そう言って笑った明櫻はこれでもかと言うほど楽しそうな顔をしていた。




