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まじわり輪  作者: がおがおの
第一章 少年期

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第三話 初級魔術



馬車亭に着くと、既にセリカが着いていた。


アルクナ魔導初等学舎行きの馬車は、通学時間帯は十分おきに来る。

彼女は何故か今いる馬車を見送って僕の方を見ていた。


「おはようございます。セリカさん。どうかされましたでしょうか?」

「どうもしてないわよ!行くわよ。」


(あれ?一緒に行く約束して記憶がない。怒ってはなさそうだし、僕が忘れていたって訳では無さそうだ)


「あ、あのセリカさん?今日って約束してましたっけ?」

「何よ?何か文句でもあるわけ?」


反論なんて無かった。

むしろ嬉しかった。


「い、いえ!ありません!ありがとうございます」

「ありがとうございますって何よ?」


少しだけ気まずかったが、僕達は一緒に馬車に乗った。


そして、学校に着き早速魔術の授業が始まった。


まずは座学からだ。

父の教え方は、『こうシュッとしてバンだ!』みたいな感覚で教わるから、一旦自分の頭で整理する必要がある。


それに比べてリリア先生の声は、なんだかスッと頭に入りやすい。なんだか母に似ている気がする。


「魔術は皆さんの身体に巡っている『縁(えにし)』を使って使用します」


リリア先生は、絵を描いてイメージしやすいような授業を行っている。


「縁は身体の成長と共に自然と増えてはいきますが、生まれた時から限界値が決まっていると言われています。ですが、魔術を沢山使うことにより身体の中の縁量は早く増えるとも言われています」


僕はそれを聞いて確信した。

昨日の魔術の練習をしていた時、いつもより多く魔術を発動できたのは、日々の練習で増えた縁って事を。


それから、リリア先生は魔術の基礎について黙々と説明をしてくれた。


父や母から聞いたこともある内容ではあったけれど、知らなかったこともあり僕自身は楽しかった。


ふと、後ろを振り返るとセリカは頬を机に付け、寝ていた。

とても彼女らしい。


「魔術は四つの基本属性があります。火・水・風・土。これらを応用し属性魔術は多くの種類に増えました。私が知るだけでも五十種以上あります」


(五十種類!?そんなにもあるのか!)


「そして、魔術には階級というものがあり、初級 → 中級 → 上級 → 特級 → 聖級 → 神童級 → 神級の七つの区分に分けられています。中級魔術を扱いこなせるようになれれば、一人前と言われます。皆さんにはそこを目指して貰います」


聖級や神級など、名前からしてかっこいい言葉を聞いて僕は興奮していた。


(そう言えば、父と母は二人とも上級魔法が使えるとか言ってたっけな。今の話からすると、二人は普通に凄い魔術師なのかもしれない)


すると、同じクラスの一人がリリア先生に質問をした。


丸い眼鏡をかけて、黒髪のオカッパ君だった。

如何にも真面目そうな子だ。


「先生は何級魔術師ですかー?」


確かに。先生の階級も気になる。

リリア先生は直ぐに答えてくれた。


「私は風特級魔術師よ」


(風特級魔術師?各属性魔法の中でも階級が分けられているのだろうか)


僕は余計に母と父の階級が気になった。


すると丸眼鏡オカッパが、立て続けに質問した。

質問というよりリリア先生をなめている態度だった。


「じゃ先生は風魔術以外は使えないんだー。僕の兄上は基本属性は全て特級って言ってたから、兄上より弱いんだー」


(はい、殺す。なんだあいつは。僕のリリア先生を馬鹿にしたのか?というか凄いのはお前じゃなくて兄の方じゃないか!)


しかし、リリア先生は特に怒る様子もなく冷静だった。


「そうですね。私は風魔法以外の基本属性は上級までしか扱えませんから、あなたのお兄様よりは劣っているかもしれませんね」


(いやいや、先生はあんな黒髪パッツンオカッパ眼鏡野郎の兄になんて負けていませんよ!)


そして、セリカが起きたタイミングで丁度座学が終わった。


「では、お話ばかりだと疲れると思いますので実際に魔術の実技を始めましょう」


セリカはさっきまで、真剣に話を聞いてたかのような態度で応えていた。


「座学はしっかり身についたわ!先生早くやりましょう!!」


そして僕たちは魔術練習用の庭に集まった。


「まず皆さんにやってもらうのが、身体に巡っている縁を外に放出してもらいます。放出と言っても自分の身体に纏うイメージです。まずは先生が見本をお見せしますので、見ておいてください」


そういうと先生は目をゆっくりと閉じた。


その瞬間先生の身体に、縁の膜が纏った。

凄く綺麗で落ち着いた感じ、だけどその縁はどこか強い力を宿しているそんな感じだった。


(これは、よく父に、縁を扱う上で基本中の基本だから出来るようにと言われてたやつだ!)


先生の様な凄い縁を纏う事は出来ないけれど、それなりには出来ていると父に言われていた。


「こんな感じです。まずは縁を体内から外へ出す練習を始めてください。出来たもの人から次のレッスンに入ります」


(よし、いつもの様にやってやるぞ!)


僕は一旦、先生の視界に入りやすいところに移動した。


まずはいつも家で魔術を出してる感じで、身体に巡る縁をググっと練りだす。

そして、そのまま身体に纏わすイメージ。


すると僕の身体に縁の膜が纏い始めた。


(来た来たー!この調子で最大までに練り上げて先生に褒めてもらおう!)


「行くぜー俺のスーパーウルトラパワーーーーー!!!!!!!」


しかし、僕の縁がどんどん高まり大きくなった時、身体に纏っている縁の膜が、ガラスが割れた時のように壊れた。


(え、何が起こった?多分僕は何も間違ったことはしていないはず。いつもより少しだけ本気で縁を練り上げただけだ。もしかしてセリフがダメだったとか?)


それにしてもこれは、とても恥ずかしかった。


周りからは笑われた。

特に黒髪パッツンオカッパ眼鏡野郎と、どこかの貴族か知らんがいつも赤いドレスに包まれたクラスのマドンナ的な奴にはハチャメチャに馬鹿にされた。


「はっはっはっはっーミスってやんのー!!僕は一発でできたよーだ!」

「なんて無様な光景かしら。あんなにカッコつけて失敗するとかダサすぎますわ」


言い返す言葉も見つからず、ただただ悔しかった。


僕は恐る恐る先生の顔を見上げた。


リリア先生は真剣な眼差しで僕を睨んでいた。

そりゃそうだ。

先生の前でカッコつけた挙句失敗。


(帰りたい......お母さま助けてください)


「えへへ、先生。む、難しいですね」


すると威勢のいい聞きなれた声と共に、凄い縁を背後で感じた。


セリカだった。


「シエロ!あんたこんな奴らに馬鹿にされて悔しくないの?こんな事で凹んで終わっていたら、この先ずっと馬鹿にされ続けるわよ!」


確かにそうだ、あんな奴らに馬鹿にされて終わっていたら、兄と同じ学校になんて行けない。


(よし、仕切り直しだ)


恐らく先ほどの失敗は、縁のググっとした感じの練りこみが足りなかったのだとそう思った。


まずは縁を練り込む。

先ほどよりも何倍にも身体の中で練り込む、いや圧縮する感じか。

そして、縁の放出する量も調整させる。

ゆっくり落ち着いて、身体全身を使て纏わせていく。


そしてあのセリフを、いや今回は辞めておこう。

これで失敗したらもう僕はここに戻れない。


するとうっすら金色を纏ったような縁が僕の身体に纏いついた。


「やった!できましたよセリカさん!」


僕は馬鹿にしてきたやつらにもわざと見せびらかすように堂々と構えていた。

勿論そいつらより質のいい縁を纏わせれたと自負している。


セリカは少し驚いたような顔をしていた。


「シエロ、その色何なのよ!私の縁には色は付いてないわ!どこでそれ覚えたのよ!」


(......色?)


よく見ると少し金色っぽい感じの色がついていた。

しかしこれと言った事はしていなかった。


「なんででしょうか。僕には良くわかりませんが、こうググっとする感じを強くしたらなりました」

「な、なによそれ!.」


僕はもう一度リリア先生の顔を見上げると、真剣な眼差しで僕を睨んでいた。


(げっ、なんでだ......)


それから続々と皆が縁を纏う事に成功し、そのタイミングでリリア先生が次のレッスンの説明を始めた。


「はい、皆さんお疲れさまです。皆さん上出来ですね。今の感覚が、身体に巡っている縁を放出する感覚です。それを踏まえて次は実際に魔術を使用してみましょう」


◆リリア先生視点


(はぁ、朝から私の事を馬鹿にしたあのクソガキにムキにならず冷静を保った私えらい♪)


私は、あのオカッパに馬鹿にされたことが腹立った。

次の実戦で各の違いを見せる予定だ。


「まず皆さんにやってもらうのが、身体に巡っている縁を外に放出してもらいます。放出と言っても自分の身体に纏うイメージです。まずは先生が見本をお見せしますので、見ておいてください」


(まずこれが出来ないと始まりませんからね。よし。いつもの授業より少しだけ強く縁を)


身体に縁が纏う。


(よし!いつもより上手く出来た気がする。どうよ、これが私の練り上げた縁よ!)


しかし、生徒からの反応は薄かった。


(もしかしてこの感じ......はぁ......)


最近は学校に通う前から、家で魔術を教わっていると聞いていたので、この位は見たりやったりしていると思っていた。

恐らく、最近の親はこんな基礎も覚えさずにいきなり魔術を覚えさせようとしているのだろう。


しかし何人かの生徒は、良い感じに反応していた。


(そ、それよりあのオカッパ眼鏡は!)


私はすぐに、オカッパ眼鏡を探した。

オカッパ眼鏡ことルイドス・スカラルトは、先生に興味も示さずに周りの自(・)称(・)下部たちとダベっていた。


「なぁ、お前たち俺の魔術みるか!」


(は?なんなのあいつ?私が真面目にしているのに無視ですか......)


私はイライラしたので、彼らの授業態度を減点とし授業を進めた。


「こんな感じです。まずは縁を体内から外へ出す練習を始めてください」


すると、私の斜め前に男の子が移動してきた。

私に見てほしいと言わんばかりの立ち位置に。


(なんでしょうこの子は......確か、シエロ・アルランド君だっけ。この子のお兄さんがこの学校で有名だったのは聞いたことがありますが)


シエロが縁を練り始める。

そしてあのセリフが解き放たれ、縁がガラスの様に壊れる。


「行くぜー俺のスーパーウルトラパワーーーーー!!!!!!!」


シエロ君の発言はともかく今の縁の弾け方は、縁の暴発だった。


縁の量があの子の身体を上回り、身体がそれに耐えれずに弾けたのだ。


そこにセリカがシエロの所にやってくる。


「シエロ!あんたこんな奴らに馬鹿にされて悔しくないの!!」


(あの子は、マーガレット家の子ね)


セリナも立派な縁を纏えていた。

私は、中にはちゃんと基礎を教わっている子もいることに気が付けた。


シエロ君が再び縁を練り上げ、縁を身体に纏わせる。


「やった!できましたよセリカさん!」


それをみた私はとても驚いた。


(まさかこの子、あの縁を更に練り上げたって言うのでしょうか。あのうっすらと付いた金色に輝く縁、あれは上級魔術師が出来たら祝われるレベル)


私は、その子について少し考えすぎてしまっていた。


気が付くと、ほとんどの生徒が縁を纏わすことに成功していた。

中にそれ本当に纏っているか怪しいレベルも居たが、シエロ君を見て火が付いた生徒が沢山いた。


ともかく今は先生。

私は直ぐに切り替えた。


「はい、皆さんお疲れさまです。皆さん上出来ですね。今の感覚が、身体に巡っている縁を放出する感覚です。それを踏まえて次は実際に魔術を使用してみましょう」


◆シエロ視点


先生がなぜ僕を睨んでいたのかが分からないが、次の魔術の授業でぎゃふんと言わしてやろうと心に決めた。


まずは初級魔術の風の一吹き(ウィンドブロウ)と水の玉(ウォーターボール)をやるらしい。

これは僕が良く家で練習していた魔術だったので、今度こそ格好つけようと思った。


風と水魔術の二組に先生が見える範囲で別れることになった。


水魔術から練習する組は水バケツが用意されており、どうやらあの水を上手く使って水の玉(ウォーターボール)を発動させるとの事。


僕は、風魔術の方の組に混ざった。

当然セリカも付いてきていた。


僕を馬鹿にしたルイドス達は水魔術組に居た。


「では、皆さん初めに初級魔術の風の一吹き(ウィンドブロウ)と水の玉(ウォーターボール)、この二つを実演していただきます」


まずは、リリア先生が実践してくれるらしい。


「まずはこの二つを実演しますので、良く見ておくように」


リリア先生は縁を練り、杖を構えた。


「風よ、道を切り開け風の一吹き(ウィンドブロウ)」


リリア先生が放った風の一吹き(ウィンドブロウ)は、僕がいつも練習しているのとは比べ物にならなかった。

恐らくこれでも手は抜いていると思う。


しかし、僕はそれ以上に詠唱に驚いた。


今思えば、僕は詠唱をしていない。

初めて魔術の本を読んだ時は、詠唱を声に出さずに心の中で練習していた。

それが身に着いたのか、最近は無意識に詠唱を端折っていた。


「これが風の一吹き(ウィンドブロウ)です。吹いている風に縁を流し込んみ詠唱を唱えてください。初級魔術くらいは、無詠唱で出せることは練習を行えば可能ですが、そんな非現実的なことに挑戦するのは上達してからにしてくださいね」


するとあのオカッパ眼鏡が、また偉そうな質問をリリア先生に問いかけていた。

それに対してそいつの周りのやつらもゲラゲラ笑っていた。


「はーい!はーい!もし無詠唱で出来たら先生、僕の下部になってよ」


僕は再び、そんなルイドスに対してイライラが止まらなかった。


しかし、リリア先生はまたしても冷静だった。


「いいですよ。もしこの授業であなたが無詠唱で発動できれば、その願い叶えましょう。しかし、初級魔術と言えど無詠唱は困難な事です」


リリア先生は冷静に、ルイドスに向き合っていた。

大人の余裕なんだろう。


(万が一あいつが無詠唱が出来ても僕が先生を守りますよ)


それからリリア先生は、水魔術の水の玉(ウォーターボール)も実演した。

勿論、手は抜いてるだろうが練度が違った。


「では、始めてください」


リリア先生の合図と共に、実践授業がスタートした。

僕が魔術を発動しようとした時、横にいたセリカが魔術を唱えた。


「風よ!!道を切り開けぇ!!!!!風の一吹き(ウィンドブロウ)」


セリナから出た風の一吹き(ウィンドブロウ)は、風の竜巻の様に荒れていた。


「あ、あれ......」


その竜巻は、水魔術組に襲い掛かるが、リリア先生の一振りでその竜巻は消え去った。


「セリカさん。勢い任せは良いですが、それでは縁が乱れて今のようになってしまいます。もう少し風を身体で感じで、落ち着いてしてみてください」


セリカは先生に注意されると、顔を少し赤くしながらも、『分かってるわよ!』と訴えていた。

しかし、風の一吹き(ウィンドブロウ)を発動させようとして、あの竜巻を出せたのは逆に才能なんじゃないかなんて思った。


僕も魔術を唱える。

変に目立つのは嫌だった為、一応詠唱を行った。


「風よ、道を切り開け風の一吹き(ウィンドブロウ)!」


普段詠唱をしていなかった分、少しぎこちなく恥ずかしかった。

しかし、格段にいつもより上手く放てれた。


「シ、シエロ。あんた中々やるじゃないの」

「ありがとうございますセリカさん!」


彼女は負けず嫌いな性格なんだろう。

僕が魔術を発動させると、負けじと魔術を連発させる。


しかし、どれも風の一吹き(ウィンドブロウ)では小竜巻。

そのたびに、リリア先生が一振りで消してくれる。


「風よ、道を切り開け風の一吹き(ウィンドブロウ)!」

「風よ、道を切り開け風の一吹き(ウィンドブロウ)!」

「風!、道を切り開けぇぇ!!風の一吹き(ウィンドブロウ)!!!!!」


「はぁはぁはぁ......なんでシエロに出来て私が出来ないのよ」


セリカは、あれからずっと魔術を唱えるが小竜巻しか起こらなかった。


多分、彼女は細かい縁の扱いが苦手なのだろう。

もっとこう、爆発するようなデカい魔術の方が簡単にできそうと感じた。


「セリカさんの縁の練り込みは上手く出来ていると思われますので、そこから発動するまでのコントロールを意識してみては如何でしょうか?」


僕はセリカにアドバイスを行った。


「まずはイメージです!風の一吹き(ウィンドブロウ)がどんな魔術なのかをイメージしつつ、そのイメージに練り込んだ縁をなぞる感じです!縁を練り込む→イメージ→それに沿って縁をなぞる→発動みたいな感じでしょうか」


こんな説明で良かったかは分からないけれど、父よりは上手く説明できたと思う。

ググっとかドンとか効果音を使わず説明できたのだから。


僕はふと思った。


(しまった!調子に乗り勢いで上から目線で説明をしてしまった!)


また、あのミゾ打ち蹴りが飛んでくると思い、恐る恐る目を開け彼女の顔をうかがった。

しかし素直ではないけれど、案外聞き受け入れてくれていた。


「シ、シエロのくせに生意気なのよ!ま、やってみるわ」


蹴られる覚悟はしていたけれど、案外僕の説明が良かったのか安心した。


セリカは先ほどよりも落ち着きがあった。

手を前に出し、詠唱を行う。


「風よ、道を切り開け風の一吹き(ウィンドブロウ)」


すると、少し荒々しいが螺旋状に回転しながら横に駆け抜ける風の突風が放たれた。


彼女は勿論、僕も嬉しかった。


「やったわ!シエロ!」

「凄いです!おめでとうございます!」

「ふん!この位出来て当たり前よ!でもまぁ、ありがとう、ね」


僕の説明が上手くて、そのおかげですね!なんて調子には乗らない。

痛い目を見るのは既に見えている。


「いえいえ、セリカさんの努力の証ですよ!」

「というか『さん』要らないって前言ったわよね?セリカでいいのセリカで!」


そう言われても、自国の王の後継者候補家のお嬢様を呼び捨てにするのはどこか気が引けた。

しかし、せっかく友達になったのだから彼女の思いを無駄にはしないでおこう。


「分かりました、セリカ......」


しかしとても言いずらかった。

少し心の中で練習でもしておこう。


(よう!セリカ!)

(どうしたのかねセリカ?)

(今日もいい天気だねセリカ)


僕は気づかないうちに、ニヤついた顔をしていたらしい。

セリカにはひかれていた。


「あんた......ちょっと気持ち悪いわよ」

「あっ、すみません......」


その後、セリカは直ぐにコツをつかみ完璧に魔術を発動させていた。


因みに縁切れにならないように、縁回復薬(リンクポーション)を一人一個配られている。

結構貴重な薬品ではあるらしいが、優秀な調合師が居れば作るのはそう難しくはないと母が言っていた。


少し庭に生えている木の木陰で休憩していると、水魔術の方大きな音と水しぶきが上がった。

すかさず視線を向けると、案の定オカッパ眼鏡が調子乗っていた。


僕はムカついていた。

何故か僕に危害が無くても、リリア先生に対して何かしていると思うと腹が立つ。


セリカは呆れているというか、鼻から興味を示していなかった。


◆リリア先生視点


風魔術組の方は、あのシエロ君を筆頭に全体的に上手く出来てきたので、しばらく、水魔術の方に少し視点を向けていた。


先ほどの基礎が出来ている方は、上手く水の玉(ウォーターボール)を唱えれていた。


「いいですか、皆さん。水の玉(ウォーターボール)は水を縁で丸く固め前方に飛ばす魔術です。皆さんの前にあるバケツに入っている水を丸めて前に飛ばす。そんなイメージをしてください」


(さて、あのオカッパ眼鏡君はどうでしょうか)


私が視線を向けた時、そこはオカッパ眼鏡の魔術自慢大会になっていた。


「おい、お前たち!僕は水の玉(ウォーターボール)なんてしょぼい魔術よりも、もっと凄い魔術を使えるんだ!よーく見ておくんだ!」


そう言うと、オカッパ眼鏡は水の玉(ウォーターボール)ではない、違う魔術の詠唱を行った。


「深き海の底より湧き上がる水よ、大海の怒りとなりて我が前に現れ、道を切り開け!荒波の奔流(ワイルドウェーブ)!!!」


ドバァーン


ルイドスは、全員のバケツの水を使い放った魔術は少しだけ高く波が上がり、地面へ衝突して消えた。


当然、周りからは拍手喝采が起こった。


「はっはぁーん!どうだ!僕の魔術は!これは中級魔術だぞ!!」


確かに中級魔術だったが、基礎もろくに出来ていない分、完璧と言えるのは程遠かった。


(使えると、勘違いしているのは見るに耐えますね)


すると、オカッパ眼鏡君が私に案の定挑発してきた。


「おい先生みたか!僕の魔術の才能を!このままだとすぐに先生を抜かしてしまうかもしれんないぞー!ハッハッハッハッ!」


私は、そんなオカッパ眼鏡を無視しても良かった。

だけど、無視すれば更に絡んできそうだったので、いっそう分からせてやろうと思った。


「そうですね。この年で中級魔術を扱えるなんて凄い才能ですね!しかし、皆さんの水が無くなったので補充しないとですね!」


私は杖を上げ、詠唱を唱える。


「深き海の底より湧き上がる水よ、大海の怒りとなりて我が前に現れ、道を切り開け荒波の奔流(ワイルドウェーブ)」


荒波ではあるが、その波が丁寧に一人一人のバケツに注がれていく。

別にもっと簡単に水を補給する方法があるが、敢えて同じ魔法を使用した。


誰がみても、圧倒的な技量。

先ほどルイドスが使用した魔術と同じには見えなかった。


「さっ!水も補給しましたし続きしましょうか!」


ルイドスは顔を赤くし、自分が今恥をかいている事を理解していた。

その顔は額に怒りマークがついてるのが見えそうな位怒っていた。


私は、そんなオカッパ眼鏡をみて満足していた。


そう私が思っていると三十メートル程離れた位置から、明らかにルイドス君を笑いながら馬鹿にしている声が聞こえた。


「何が中級魔術だよ!全然扱えていないじゃーん!ダッセー」


シエロ君だった。

読んでいただきありがとうございます。

良ければ評価の方をしていただければ、嬉しいです。

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