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109話 まだ生きる目的

 

 これは、()()()()が数百年前、ハクアに挑んだ時の話だ。



「なんで言わんかったんや!?」


 医療に詳しい仲間が怒りの声をぶつけてきた。

 それは恋人が死んでしまったことに関係するらしい。

 私が何かをすれば別の誰かが助かったらしいのだが世界のすべてが雑音にまじり聞き取れない。

 何度も治療のスキルを使っても身体が復活しない。

 手や足ですら生えてくれるような治療なのに、心臓が踏まれただけで人は死ぬ。

 それが当時の私には理解できなかった。


「やめなよ……」

「シャック、今は好きにさせましょう」

「きみは僕に間に合わなかったこと怒鳴らないの?」

「油断してた自分に怒鳴りたいわよ!! でもッ―――!!」


 気が付いた時には北にある国の小さな山小屋だった。

 私は三日も飲まず食わずで気を失い続けていたらしい。

 ウルフが看病してくれたのは分かったのだが、礼の言葉も言えなかった。


「……水も食事も、あんなに望んでいたのに」


 食べられない、水ですら飲めない。

 喉を通らなくなっていた。


「少しでも食べなきゃこんどはお前が!!」

「レイニーガ嫌イナモノニ会ッテクルトイイ」


 恋人が頼っていたユニコーンの魔物、トルマリンから不思議なことをアドバイスされた。


「いやいや、そもそも飯も食えないのに誰かに会うなんて」

「死ヌ前ニ殺シタイ相手ハ1人モイナイカ?」

「ええ別に」

「本来ノ役目ヲ果タサズ、ノア、レイニー、二人ヲ売リ飛バシタ()()()モ許スノカ?」

「それ、は」

「今ナラ魔物ノ大群を手ニ入レラレル」


 ノアが従えていた魔物たちのカード。

 全体が倒しても良い魔物と良くない魔物が把握できないからという理由で使用されなかった彼ら。


「……私をカミノ王国へ、連れていって下さい」

「俺も行く!!」


 こうして再び訪れたカミノという国。

 草木が枯れて川は干上がり、すべては金で輸入することで生活は成り立っていた。

 スキルカードを使って城に潜入して内情を探った。


『子供でも売れるなら燃やさなければよかったな』

『まぁいいじゃない! 異世界転生者が出てくる限り売れるんだから!!』


 本来の役目とか難しい話は分からなかった、ただ怒りという感情が沸いた。

 産まれてから出したことのないほどの大声で叫びと島でも沈められるスキル。

 気が付けば私とウルフの他にはカミノという国に()()は残っていなかった。


「何ですか、この、威力?」


 私は国王を殺そうとした。だけ、のハズだった。国は濁流に呑まれもう、枯れた草木も大きな城ですら泥のなかに沈んでいた。


「こ、こんな威力があればお前に逆らえる奴なんかいねぇって!!……誰も」


 思い出すのは魔王ではない、人の姿をした悪者。

 同じ異世界転生者を殺す異世界転生者。

 今回の討伐で――始まる前に()()()()があった。

 ハクア・ハートが食料にロープ、治療道具などを運ぶ一般市民を皆殺しにした。

 そのせいで使えなかった道具の一つ。


 緊急用の笛、たとえ声が出せずともウルフにはその笛が聞こえた筈だ。


「もし、ハクアがいなければ――ノアは」

「ぶっ殺しに行くってんならいい案だ!!」

「……1人で行かせてください」

「俺じゃ足手まといっていうのか!?」


 今までの情報からしてハクアの拠点である〈わすれ谷〉は外へ出ようとすればスキルの力を奪われ最後には記憶が消えていく最悪な仕掛けがある。

 相手から力を奪う【スキル:強奪】と【スキル:バリア】のスキルカードで作られたことまでは分かっても今までハクアを倒せた者は一人もいない。


「谷すべてを水で埋めればいくらハクアでもいつかは溺れるでしょう」

「そ、れは」

「記憶を失くした私を受け止めてくれる人がいるから、私は行けるのですよ」


 こうして私はわすれ谷の奥底へと降りていった。

 思ったよりも縦にも横にもかなり広くて溺れさせる作戦は厳しいかもしれない。

 判断を誤れば命とりになるのは、経験したばかり。



「こんな場所までくる異世界転生者は久しぶりだよ!!」


 魔物でも人でも様子見で使える技、癖になっていたものをくり出した。


「【スキル:水 飴網あめあみ

「【スキル:影 鏡の幻影」


 こっちがかけたスキルは動きを鈍らせるためのもの。ハクアが使った光をまとったスキルを防ぐことはできず直撃をうけた。

 光が眩しいと思った次の瞬間には自分が目の前にいた。

 ハクアの分身だけでなく他人まで影を人型にできるのは初めて知った。


「【スキル:水】」


 分身がそのまま自分の力を持っていたらどれほど厄介な敵かと一瞬で気付いた。

 ハクアの分身とは何度か戦い、すくなくとも心臓を破壊すれば分身は消えることを知っている。




「【スキル:水 銃】」


 撃ち抜いた瞬間、私が見たものは、#コア__・__#。

 この世界において命である、分身には存在しない、ありえないもの。

 今私が殺したのは#誰__・__#なのか結論は容易に出せた。


「【スキル:影 送迎】」


 スキルを奪うバリアをハクアはわざと【解除】して私を谷の外へと追い出した。

 こんな結末をどう受けとめればいい、死んだ? 私がレイニーを殺した。

 いや、それより私は分身――いや、私もレイニーだ。

 分身体だが本体と切り離された影に肉体がつけられた鏡のような存在。

 戦ってもし消滅したらこの心や魂はどこに、消える?



「……怖い」


 口に出すつもりがなかった言葉がこぼれた。

 ウルフの待つカミノに帰った。それしか、できない、思いつかない。

 私は本当のことを話さなければ。



「れい、にー?」

「……」


 何も言葉は出なかった。

 真相を教えられない、けれど待っていた魔物たちがここに国を作ろうと言い出した。

 ノアの頼みを叶える手伝いを頼まれた。

 どんな奴かもわからないが、その役目をこなせば私はレイニーでいられるかもしれない気がして――魔物たちの国民、新しい王国の王子となった。


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