105話 月って実際
「【スキル:アスパラガスの槍】」
これが攻撃スキルな訳あるか、アスパラ農家なら多分鼻で笑う。
アスパラが地面から生えるスキルなのだが子供でもポキポキ簡単に折れるアスパラ。
速度が早かろうが刺すことは出来ない、完全に食用のスキル。
「なんですこれ?」
「アスパラガス」
「あすぱら?」
「【スキル:ろくろ】」
月の土を使って食器を作って鍋に入れ水をレイニーに入れてもらいゆでた。
まずは食べてから動けと鍛えられたサバイバル技術はこの状況でも結構余裕を持てた。
異世界転生者は栄養バランスを考えなくていいためこれだけで充分。
「寒さ対策もラップを巻いて完璧」
「見た目が異質でしたが魔物に寄生されてなくてほんとうに良かったです」
「寄生する魔物はちょっと怖いかもな……」
「……カドマツ様は美味しそうに食べてましたよ?」
「え」
「彼女が作ったフランスパン」
「寄生する魔物ってメイドにいるの!?」
「太った人間が好物なのでカドマツ様は大丈夫ですよ」
「新しく入ってきた人間が心配になるわ」
四天王を早くぶっ飛ばして欲しい。
こんな寒いところからは旅行よりも帰りたい気持ちが勝つ。
人がいなくて月の冷たい土があるだけの寂しい空間は面白くない。
旅行はやはり物を売っていたりのどかな田園風景だったりがいい。
「不機嫌ですね」
「月つまんない……土しかない」
「地下にいきますか?」
「地下?」
月の外側に移動することはできない。月には地下に機械都市があるので四天王がいるかもしれないし離れたところを狙われても―――と2人で地下都市へ。
入る前にトイレを済ませて案内された巨大階段をおりていく。
真っ暗なので【スキル:ガスコンロ】で照らして温かさも確保しながらゆっくり進んだ。
科学の進んだあと滅びたらしい世界がそこにはあった。
「おぉ!?」
ロボットがあちこちに見えるが動いていない。
何かの機械だったりする――壁にうんこの絵が垂れさがる。
月まできて壁にウンコ描いた奴がいるのかロボットが描いたのか。
「これ、ここの国旗です」
「国旗なの!?」
「シャックさんやティラノさんが解読した結果、ロボットではない生き物がする証拠であり神聖なもの――という意味らしいです」
「ロボットからすれば憧れる、ってことなのかね」
馬鹿みたいに広く〈車っぽいロボット〉に魔法石を使って移動することに。
機械は予想外の動きをするのでレイニーとは相性が悪いらしいが……。
動かなくなったので水を飲ませてみたら黒焦げになったらしく、機械というものをレイニーは本当によく分かって無いらしい。
「ばあちゃんがテレビのリモコン叩いて直そうとしてたの思い出すわ」
「両親に追い出される前ですか?」
「あとの話―――祖母はそれなりに優しい人」
「ん?」
「ヨウコソー!!」
もう全部が動いていないとの話だった。ブリキのおもちゃみたいなロボットに声をかけられ目を輝かせる。ロボットアニメだって俺は好きだった。
「ナナゴさん、まだ動いていたのですね」
「ななご?」
「ワタシ、ナンバーナナゴ、レイニー、ヒサシブリ」
ナナゴには当時案内されたが裏切られたらしい。
別のロボットから侵入者排除と聞こえた瞬間に他のロボットと共に襲い掛かってきた。
だから全部のロボットを殺すことができるスイッチを押した筈……説明されたがロボットに対して殺すって言葉は普通なら使わない。
「裏切者の言葉を信用しないほうがいいですよ」
相手はロボットなのに裏切者か。
レイニーが死んだ時代は詳しく聞いていないが昭和とかなのだろうか。
システムとして何かが原因で敵対しただけで、ロボットなら直せばいい。
「七十五?」
「ハイ」
「七十五にとってロボットの敵を判断する基準を教えてくれないか?」
「スキル使用ハ敵トシテイマス」
「他には?」
「……リーダーガ命令スルナラ敵デス」
レイニーが口をMにしている。
ま、自分を裏切った相手に友達が近づいて行ったら嫌なのは俺も一緒だ。
ロボットというものについては俺が教えてやろう。




