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伯爵家、潜入計画 (ラルフside)

 シュピーゲル家での衝撃の事実を、ラルフは誰にも言えるはずもなく、ひたすら心を無にして仕事に徹していた。

 いつもよりハイスピードで書類の処理を済ませ、終業時間を迎えた時、レポルトがラルフの肩を叩いた。


「ラフィ、ちょっといいか?」

「……はい」


 何かを忘れるように仕事に打ち込むラルフの様子を、察しの良いレオポルトが見逃すわけがなかった。


「いつもの覇気がまるでない。仕事はそつなくこなせているが、お前らしくないのはやはり気になる」

「申し訳ございません」


「お前の憂いは、かの男爵令嬢のことか?」

「……」

「訊くまでもないな。これから、イーゼンブルク伯爵家の捜査に着手するにあたり、男爵令嬢の情報もほしい。彼女が、伯爵家でどのような状況に置かれているのか言え。知っているのだろう?」


「彼女は、伯爵家でクラウディア嬢の話し相手をしているようです。彼女の母親は、伯爵家より報酬を受け取っていて、連れ戻すつもりは一切ないと言われました」


「金銭を掴ませて、口封じをしたか。胸糞悪い話だな。男爵令嬢は、早い目に助け出した方が良さそうだな、強硬手段で人質にとられるのは避けたい」

「はい、同感です」


「そこで提案なんだが……、クラウディア嬢が、お前と婚約したがっていることを利用してみるのはどうだろう。婚約の申し出をしに、お前がイーゼンブルク伯爵家に行けば、邸に入れる」


 レオポルトが、イーゼンブルク伯爵家潜入捜査計画案を、ラルフに言った。


「彼女と婚約しろとおっしゃるのですか?」


 ラルフは、承服できないと、速攻拒否した。


「違う! 睨みつけるな。捜査に行く口実にしろと言っている。それに、まず伯爵邸に行って、当主のハルトヴィヒ卿がお前とクラウディア嬢との婚約を、本当に望んでいるのか確認すべきだろう? ハルトヴィヒ卿が婚約に前向きなら、クラウディア嬢に会いに行く口実で、伯爵邸に行くようにすれば、結界に阻まれず証拠集めができる」

「……」

「婚約したことがなくても、貴族家同士の婚約が、国王陛下の許可が必要なのは知っているよな。伯爵家がどんなに急いで手続きしたがっていても、すぐ婚約成立できない。エリーゼを助け出すためだ。演技くらいやってのけるよなぁ?」


 ラルフは、レオポルトの言葉を苦虫を噛みつぶすような顔をして睨んだ。


「婚約は、したくないんだな」

「当然です」


「冷静に聞け。書類にサインしなきゃ、正式な婚約は成立しない。噂は流されるかもしれんが、男爵令嬢に嘘だと伝えることができれば、不都合はないだろう? あ、一応、お前の両親には、嘘の噂流すって報告しておけ」

「了解、しました」

「きっと、上手くいく。信じろ」


 レオポルトが、情報をまとめた書類を捲りながら話し始めた。


「ハルトヴィヒ卿は、魔法使いとしても優秀だが、学生時代は薬に魔力を込めて効果を高める研究をしていた。その当時の同級生から聞き出した話なのだが、彼は平民に金を渡して、薬の臨床実験をしていたらしい。その時、亡くなった平民がいたという噂を聞いたことがあったらしい。しかし、噂は流れたが、殺されたと訴え出る者がなかったせいで、噂は立ち消え、真実は闇の中に消えた。亡くなった伯爵の二人の娘も、何かの実験に協力したのかもしれない」


「それは、犯罪ではないですか」

「そうだな、本当に薬で死なせていたとしたらな」

「……」


「だから、エリーゼ嬢が実験対象になる前に、連れ戻した方が良いと思う。婚約するふりをしろというのも、時間がかけられないと思うからこそだ」

「そうですね」


「それと……ベンノに化けた人物を洗ってみたが、全く分かっていない。痕跡を完璧に消したことから、相当の手練れだと予想できる。クラウディア嬢と共にエリーゼを連れ去った者がいることを、決して忘れるな。多分、クラウディア嬢の近くにいるだろうからな。私の予想としては、クラウディア嬢の兄であるルーカスだと睨んでる。ベンノとルーカスは同級生だったらしい。ルーカスが、顔見知りに変身したと考えると、合点がいく。最近、姿を見せなくなった点も気になるところだ。新しい情報は、こんなところだな」


「了解しました。早速、両親に連絡します」


「おう! 私も変身してついて行ってやるから、安心しろ」


 そう言うと、レオポルトは変身して、ハムスターになった。

 ラルフの肩に飛び乗り、器用に後ろ足で立ち上がる。


「はい、よろしくお願いいたします」


 ラルフは、さほど驚かない。

 レオポルトの変身を、何度も見ているからだ。


「胸ポケットに入れて、連れて行け」


 ハムスターのレオポルトは、小さいのに態度は相変わらずでかい。

 しかし、ラルフの肩の上でふんぞり返るハムスターは可愛い。


「マルコ達も一応外に待機させておくか」


 絶妙なタイミングで手紙を持ってきたマルコが、ハムスター団長を見つけた時の顔は、ちょっとした見ものだった。


 変身を解除したレオポルトは、明日イーゼンブルク伯爵家への潜入捜査作戦を決行すると宣言した。






急務は、ラルフの演技指導。


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