死んだけど死ななかった魔王
勇者が魔王を討ち取ってから1週間。
屋敷には平和が訪れていた。
庭に出したテーブルとイスは、「いかにも優雅な午後」を演出するのに最高だった。
「コーヒー淹れました。コーテー様」
「あ、ありがと。夜は、昨日狩ってきた大猪でバーベキューしようか」
「はい、良いですね!お野菜もたくさんあります!」
「でも、まずは、淹れてもらったコーヒーをゆっくり飲もうかな」
『ちちち・・・』と小鳥の鳴き声も聞こえる。
「実にのんびりしている」
「はい」
「平和だなぁ」
「はい」
「なのに、なんで、お前たちがいる!?」
敷地内には、馬車で勇者くんとチコ、そして王妃までいる。
「城での騒ぎも少し落ち着いたので、来ちゃいました」
「いやいやいや、勇者くん、来ちゃいましたって・・・」
「来ちゃいました」
「チコ!お前こそ王妃様の食事を毎日作るって頑張ってたろ!」
「私がここに来たので、チコも連れてきました」
「なんで王妃様が護衛もなしにこんなところに!?」
結局、勇者が同行なのでと半ば強引に出てきたらしい。
「夕ご飯はバーベキューらしいので、ぜひ一緒に食べさせてもらえたら嬉しいです!」
勇者が元気にお願いした。
「・・・これだから食べ盛りは・・・」
コーテーは額に手を当てるしぐさをした。
「チコ!お前は城で料理を作らないのか!?」
「あ、材料をいただいたので、何回かは作ったのですが、料理人に中々受け入れられなくて・・・」
確かに見たこともない材料で見たこともない料理を作ろうと思ったら、受け入れられないのかもしれないけれど・・・
「王妃様がいるんだし、やりようがあったんじゃないのか?」
「攫われて、返ってきてすぐに見たこともない料理を作ったり、食べたいと言うと、偽物だと疑われる可能性も出てきたので・・・」
「なるほど、失念していた・・・確かに誘拐されたんだったな・・・」
「はい、ここにいたみんながきっと忘れてました。でも、城では不自然になる感じで・・・」
「それで、なんでここに?」
「「「またここでのご飯が食べたくなったので!!」」」
「・・・」
絶句するコーテー。
「夕ご飯は多めに準備しないといけませんね!チコ、手伝って!」
「うん、もちろん!」
「夕飯食べたらみんな帰ってもらうからな」
「ここまで馬車で数日かかります。そんな急に帰ったら変じゃないですか」
確かに!
「一週間くらいゆっくりお世話になりますね」
「王妃!陛下は良いんですか!?」
「陛下も、数日したら来る予定です」
「いやいやいやいや、おかしいでしょ!?大丈夫なのそれ!?」
「一人だけのけ者にしていたら拗ねて変なことを言い始めます。いっそ、巻き込んだ方がいいかと」
敵対する(かもしれない)両者を敵対する前に強引に引き合わせ、問題を事前に解決させようとするなんて・・もしかしたら、この人が一番クセがあるのでは・・・コーテーは心に思ったが、口には出さなかった。
メアリーが人数分の椅子を準備してくれていた。
チコもメアリーに付いて行って、イスを持ってきてくれている。
「あの、魔王様、僕聞きたいことがあったんですけど・・・」
「どうした、勇者くん」
「予言者の予言ってこれまでほとんど当たっていたんですよね」
「そうだね」
「今回も魔王を殺すっていうのはあったわけじゃないですか」
「たしかに」
「魔王様死んでませんよね?」
「そりゃあ、ね。死ぬ要素なかったし」
「予言って、そういうもんじゃないんじゃ・・・」
「まあ、いつか死ぬでしょ。80年くらいしたら」
「それはもう寿命では・・・」
「そうとも言う」
「あと一つ気になることがあるんですが!」
勇者がグイッと身を乗り出した。
「なに?」
「今夜のバーベキューには、ソーセージは出るんでしょうか!?」
「は?」
「なになに?ソーセージって!」
ここでルミニスが出てきた。
めんどくさくなる予感。
「あんたまだ何か隠してるわね!私にも食べさせなさいよ!」
「最近お姉ちゃんほっとかれて寂しいわぁ」
「あんた!私のことをほったらかしにしようったってそうはいかないんだからね!」
「退屈してた・・・」
「お兄ちゃんに・・・あそんでほしい・・・」
なんかいっぱい出てきた。
「あ、また椅子が足りませんね」
「もっと持ってきます。
メアリーとチコはまた椅子が足りないことに気付き、運び始めた。
「もー、何だよ。俺の引きこもり生活はいつ実現するんだよ!」
「きっと、陛下もここの料理を気に入ると思うので、食材の買い付けを始めると思います。村の方には頑張って作っていただかないといけませんね」
「今より畑を増やすとしたら、絶対またここに依頼がくるやつじゃん・・・」
「コーテー様、まだまだのんびりできませんね」
メアリーが椅子を運びながら戻ってきた。
「魔王様!村長の奥さまと言われる方が、相談があるっと来られてますけど」
チコが来客を知らせてくれた。
「魔王様、料理人に扮してしばらく城で料理を作っていただくと言うのはどうでしょう」
いや、王妃様いま来客が・・・
「お兄ちゃん!また新しい物つくろうよ!」
「お兄ちゃんに・・・あそんでほしい・・・」
「ん」
「もー、みんな一度に話さないでくれ~」
「ゆっくり対応されたらいいじゃないですか、時間はたっぷりあるんですから」
「そうだったな。早いこと全部片づけるクセが付いていて・・・」
「わたくしも微力ながらお手伝いさせていただきます」
「メアリーとみんながいたら他にはなにもいらないや」
なかなかニート生活は実現できずタイトル詐欺になりつつあるけど、実現できるのはまた別のお話で。
~第一部 魔王誕生編 完(いま考えた)~
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ありがとうございました。
次回はもっともっとおもしろい話を書けるよう頑張ります!
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びっくりです。
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本の能力が使える主人公には記憶がない ―主人公は多分異世界転移してるはず―
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