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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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ある女生徒のひとりごと

 十二歳の時、私は魔力量が多いので国一番の魔法学院へ行けることになった。それを知ってから、やけにリアルな夢を見るようになった。魔法学院らしき場所で、誰にしようか悩むほどのイケメンに囲まれてきゃっはうふふと過ごす夢。夢の中の私が、誰を選ぶかで結末が変わる夢だった。夢は始まりから終わりまでをあらすじを追っているような感覚で、詳細は良くわからない。


 私は生まれた時から前世の記憶があったらしく、パパとママに話をして聞かせていたらしい。前世のことはもうほとんど覚えていないが、うっすら残っている記憶の中で、趣味でたくさん読んでいた小説やゲームの世界と、夢が結びついた。

 登場人物は同じなのに、誰を選ぶかによって変わる結末の夢。これはもしや乙女ゲームに転生したのではないかと思った。この乙女ゲームをプレイした覚えはないが、夢で転生特典とかで教えてもらえているのではと思った。


 他にも根拠はある。私は伯爵令嬢で、名前はまさかのヒロイン。これがヒロインに転生してきた強制力なのかもと思った。だけど、さすがにヒロインってどうなのよ。

 見た目は可愛らしい庇護欲をそそるタイプで、ピンクブロンドの髪にピンクの瞳。両親も弟も祖父母も平凡な茶髪なのに、自分だけピンク。それなのに誰も疑問に思っていなかったし、私も疑問に思っていなかった。

 普通皆とここまで色が違えば色々な疑いがかかってもおかしくないはずだが、ゲームの設定だからか私はちゃんと両親の子どもとして愛されている。夢をちゃんと覚えておくように努力して、毎朝ノートに書き出すようにした。


 書き出した最初の夢は、私がベルンハルトを選ぶもの。ベルンハルトは婚約者だったエルヴィーラと婚約を解消してくれるのだが、私とベルンハルトは周囲に認められない。

 私が必要最低限の語学さえ習得できていなかったからだ。努力したが、習得がかなり困難な道のりだと自分自身も周囲も気が付いてしまった。

 ベルンハルトは王位継承権を放棄して、陛下のお情けで伯爵領を拝領する。家族の反対を押し切って、伯爵領へベルンハルトを追いかけても何故か結婚は許されず、一年を待たずにベルンハルトが病死した。分岐ルートを間違えた、バッドエンドだと思った。


 二つ目の夢はヴェルナー。ヴェルナーは既にルイーゼとの婚約が内定していたが、白紙に戻そうとしてくれる。それが、ちっともうまくいかない。そのうちルイーゼを含む公爵家からの嫌がらせが凄いことになる。

 ベルンハルトの婚約者エルヴィーラや、ディートリヒが公爵家を抑えてくれている間に、こっそり二人で駆け落ちするが、国外で追っ手に見つかりヴェルナーだけが連れ戻され、異国でぼっちになる。これもバッドエンドだな。


 三つ目はディートリヒ。とにかくベルンハルトが邪魔をしてくる。ベルンハルトは私の事が必ず好きになってしまう設定なのだろうか。そのせいで、ディートリヒとベルンハルトの仲が険悪になってしまう。

 親友同士?みたいだし、私の為に喧嘩しないで~。みたいな状況になっていた。ベルンハルトがエルヴィーラとの婚約を解消するからと、強引にプロポーズしてきて…?どうなったんだっけ。ここから先が重要でしょうに!!目が覚めたら忘れてしまっていた。


 一度見た夢はもう一度見られないのか、同じ夢を繰り返し見ることはなかった。最初の頃に見ていた夢は幸せだった気がするから、ハッピーエンドを覚えておくタイミングを逃してしまった気がする。残念。しっかりと攻略方法を知りたかった。

 でも、前世で私は普通の顔でもそれなりにモテていた。うっすら残っている経験と、今世のこの可愛さでどうにでもできるような気がした。


 最後に見た夢は最悪だった。


 全員と仲良くしていると、イザークと知り合える。イザークに狙いを定めるとややこしかった。イザークと恋人になれてもいないのに、皆が嫉妬をして妨害してくるのだ。結局友人にもなれないまま、イザークは離れていってしまった。

 その後、学院三年の夏にベルンハルトに誘われてパーティへ行くと、賊が暴れた。そうすると皆急に頭がおかしくなったみたいな行動を取ったのだ。


 ベルンハルトは婚約者であるエルヴィーラを斬りつけ、慌てたスヴェンの火魔法で大勢の人と一緒に私も酷い火傷を負うことになる。

 ベルンハルトとスヴェンは混乱するし、ヴェルナーとディートリヒは斬られたエルヴィーラに駆け寄って、私は放置されてしまうのだ。

 何とか死にはしなかったけれど、全身火傷で悲惨だった。思い出しただけでも火傷が痛い。火傷とか、絶対に嫌。イザークはきっと隠しキャラで難易度が高すぎるのだ。


 今までに見た夢を一度整理することにした。

 ヴェルナー ・・・入学式で人波に押し流されているところを助けてもらう

 ベルンハルト・・・魔法の授業で吹っ飛ばされる

 ディートリヒ・・・迷子になったハルトくんを連れて行く

 スヴェン  ・・・魔法の授業で倒す

 クリストフルとアメリー・・・多分お助けキャラ


 とりあえず出会いイベントさえこなせば、皆と食事ができることがわかった。後は雪崩イベントとお助けキャラクリストフルを助けに行くイベントが大きいのかな。


 正直ベルンハルトは格好は良いけど鈍感すぎて面倒だったし、王妃とかは柄じゃない。何ヵ国語も覚えられないから無しだ。ヴェルナーは母親やエルヴィーラを気にかけ過ぎていて、溺愛はしてくれるがちょっと微妙な気がした。マザコンとシスコンは将来に影響を及ぼす気がする。

 途中で興味を無くしてしまい、うっすらしか覚えていないスヴェンからはもの凄く好かれたが、性格の矯正を手伝うほど私は親切じゃない。


 消去法になるけれど、ディートリヒがいいな。顔も良いし、性格も良さそう。ベルンハルトの側近候補だったから、間違いなく将来も安泰。よし、ディートリヒにしよう。

 攻略するにはベルンハルトとの好感度を上げ過ぎてはいけないのだろう。ディートリヒは側にいるとだんだん話をするようになっていた。ゲームとは違うから時間はたくさんある。

 ディートリヒに関して覚えていることを全てノートに書き出して、対策を練った。



 結果、私は十三歳で魔法学院へ入学できなかった。希望者が多かったため、しがない伯爵家で年齢も若い私は後回しにされたのだ。

 慌ててパパに頼んで調べてもらうと、エルヴィーラはベルンハルトの婚約者になっていなかった。そのせいなのか、入学希望者が殺到していた。

 ついでにルイーゼに婚約者がいないことも知った。夢の内容とあまりにもずれている。だからって、だからって!!


「物語が始まらんわーーーーー!!!!!!」

 屋敷で乱心のあまり叫んでしまい、周囲を心配させてしまった。仕方ないと思う。

 しがない伯爵家ではどうすることもできず、ただ傍観者になるしかなかった。色々考えていた時間を返して欲しい。

 折角転生できたのに、何の苦行だよ、これ。


 パパにお強請りをして、詳細を学院に確認してもらったら、寮が一杯で誰かが卒業した後にならないと入学できないと言う。せめて生で乙女ゲームを体験したかった!!こんちくしょう。

 しがない伯爵家と侯爵家では参加できるパーティも違っている。学院で知り合えなければ、生ディートリヒを拝める確率でさえ異常なほど低くなる。


 二年間もやもやしながら過ごした後、ようやく魔法学院へ入学できることになった。スキップ制度を利用して、卒業した人がいるそうだ。

 新入生は少なくなるが、それでも良ければと話が来た。在校生は三年生。おそらくゲームのエンディングまで、それほど時間がない。どんな無理ゲーなの、これ。それでも会えさえすれば、なんとかなるかもしれないと期待して、学院へ向かった。


 やっと来ました魔法学院!


 まず、夢で入っていた寮の別館が空いていなかった。既に誰かが入っていて、私は普通の伯爵令嬢と同じ本館の部屋になった。夢のように部屋でこっそりイケメンと会うのは無理なのが確定した。


 入学式、エルヴィーラはとっくに入学しているから、ヴェルナーは入学式には来ない。入学式の会場にもやっぱりいなかったし、今後も会える気がしない。ルイーゼと婚約していないなら、ある意味危険が少ないイケメンだったのに。

 ベルンハルトやスヴェンとは、一緒に魔法演習の授業を受けないと仲良くなれないのに、学年が違うからそもそも一緒に授業を受ける機会がない。しかも、授業の曜日が違う。こちらが座学の日に、あちらは演習になっていた。

 広い校舎で座学と演習の曜日が違えば、偶然会うことも難しい。令息と仲良くなって、男子寮の談話室に行く手もあるが、同級生の令息に確認するとディートリヒは基本いないと聞いた。


 詳しくはわからないが、何故かスヴェンもルイーゼもいない。雪崩も既に起きたらしいし、きっともうハルトくんも迷子になっている。二年も経って、今更迷子にもならないだろう。


 念のため情報を集めたら、ディートリヒの婚約者に内定している人はいないようだった。ただ、ハーレムを作っていると言う謎情報だけ手に入れた。ハーレムは昼の食堂で拝めるらしい。

 乙女ゲームの定番かと思って、お弁当を用意して貰って中庭で食事をしていたから知らなかった。シナリオ崩壊しすぎじゃない?


 あえて行った食堂で、やっとディートリヒを拝めた。やっぱりめちゃくちゃイイ!!格好良すぎる!!だけど、食堂では大勢の令嬢に囲まれていて、話しかけられる状態じゃない。

 あれが、ディートリヒのハーレム…。ストーリーだけでなく、性格まで変わっちゃったの?エルヴィーラまでいるんだけど、どうなってるの?

 ベルンハルトは別の令息令嬢と食事をしているし、訳が分からない。


 これでは全く絡めない。いったい私はどうすれば…。簡単に諦めたくない。


 個別鍛錬前後を狙ってみたが、ディートリヒはいつも人に囲まれていて近づけない。それならばと図書館などの学院施設へ通ってみたがいない。無駄に敷地内をうろうろするが、基本出会わないし、いっこうに単独行動がみられない。


 面識もないし、学年も違うから本当に何かきっかけが欲しい。面倒だけど、ベルンハルト経由で近寄ってみようか。それくらいしかもう手がない。ベルンハルトの好感度は直ぐに上がるはずだ。上がり過ぎないように気を付けないと。

 無難に食事予約制度に友達と一緒に申し込んでみた。一緒になった上級生のお姉様たちが怖すぎて、違う意味で難易度が高すぎる。

 それに、俺様王子キャラのはずなのに、そんな雰囲気は無い。結局お姉様たちに邪魔されて、ほとんど話せずに終わってしまった。友達もお姉様たちを怖がっていたので、次は一緒に申し込んでくれなさそう。


 切っ掛けさえ掴めれば何とかなるはずだと思うと、諦めきれない。最終手段にしたかったが、ディートリヒを待ち伏せすることにした。偶然を装えるように何か偽装が欲しいな。

 これが無理なら危険もあるけれど、時々ぼっちでいるのを見かけるベルンハルトに本格的に近付こう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 再開、嬉しいです。 思わずもう一度最初から読み直しちゃいました。 自分にはポンコツな2人が幸せになりますように:-)
[一言] しばらく羽を伸ばせそうですね! お兄様は気の毒だがww 向こうは向こうで楽しんでるといいなぁー(笑)
[一言] エルさん、ディートリヒとデートですか?(違) 父は明らかに怪しい薬の注文を。 そして、自分の領地が既に妻と子供達のテリトリーになっていることに気付いていないのが、何とも……。 そういう怪しい…
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