<華麗なる直夫の仕事ぶり>
<華麗なる直夫の仕事ぶり>
自称フリーランスのITコンサルタント業、俺は真柴直夫。
人生の落伍者となる寸前に、ある日突然降って沸いた謎のクライアント。
その結果、未知の工作物の作成を強要される。
要約すると、そんなとこかなぁ・・・
ボロアパートの天井を仰げば、度重なる雨漏りの跡。
だが今では、詫び寂びの効いた作品に見えるほど生活が充実していた。
一階の大家のメシは最高にウマイし、
いまのところセッティングした有料チャンネル(じだいげき)も、
目を輝かせて鑑賞してくれている。
この分だと一ヶ月どころか、当分メシに苦労することはなさそうだ。
なにしろばあちゃんの買い物に付き合うため、
中古の軽カーまで買って貰ったし、
おかげで毎日スーパーまで行き来するようになった。
メシ以外についても、例のプリカのおかげで何不自由なく過ごせている。
人生のどん底を一度拝みかかった俺なので、
こんな何気ない毎日でもたいへん有り難く感じている。
一点だけ、普通の人間では経験できないような現実が目の前にある。
説明するまでもない、部屋の中心に鎮座する例の工作物だ。
時間が有り余るほどある自分にとって、
工作物の仕様書を読解することはそう難しくなかった。
まずは仕様書の組み立て工程をAからDまでのグループに分け、
グループ毎に必要な部品を二階の通路上で仕分け、
それをナンバリングした。
次に、第一工程に位置するグループAの作成に必要な部品を、
部屋の中に搬入しその梱包を開け仕様書を参照し畳に並べた。
それが一体どんなものか見当もつかないが、
子供の頃、父親から買って貰ったばかデカい戦車のプラモキットを前に、
胸の奥からわき上がったあの高揚感と同じものを俺は感じる。
《さてさて、そろそろやっつけようかい。
必要な工具は揃っているし、組立てはそれほど難しくない。
まあ、問題はちゃんと動くのかだが・・》
そのとき仕様書を広げ仰向けになった直夫の背に、
僅ながら細かい振動を覚えた。
このところずっと、地震とは違う断続的な横揺が続いているのだ。
その原因が何かはわからないものの、
あちこちの工事現場で入れ替わり立ち替わり、
掘削作業でもしているのだろうと勝手な想像をしていた。
それにしても、最近また街の外れが近くなっているような・・
直夫が住む落日荘は、街のほぼ中心の高台に立っていた。




