第1話:彼女との出会い
わたしは、かわいいものが可哀想な目に遭うということに興奮する。対象は人間の女の子はもちろん、動物、キャラクターなどなんでもよい。
だが、別にわたしがヤバいやつというわけではない、と思う。ちょっと加虐性がある普通の女なのだ。かわいい女の子がリストカットしてるとか、かわいいキャラが可哀想な目に遭っているというのが好きなだけ。普通の範疇だ。
ただわたしは、自分にこんな性癖があるということには蓋をしていた。気づかぬふりをしていたのかもしれない。
というのも、わたしは今まで真面目な優等生で生きてきた。性別も女であるから、性癖など考えることが少ないのかもしれない。だからこそ、自分の特異な性癖に向き合うことが、23年間できなかったのだろう。
しかし人生23年目にして、彼女を見て、やっと自分の性癖、もとい、大好きなものに気づけた。
これはわたしと、かわいそうな彼女の、まだ他人だったころの話である。
わたしはいま、新宿に来ている。
新宿は不思議な街で、いろんな顔を併せ持っている存在だ。例えば歌舞伎町。ここは一言でいえば治安が悪い。ヘンなお店が沢山あって、ヘンな人たちが集まっている。
いつもならこんな所には絶対に来ないが、今日は大学時代の友達と集まるため、歌舞伎町のお店に向かわなければならない。
「お姉さん!かわいいですね!」
「天使が歩いてるかと思いました!」
ただ歩いているだけで何人もの若い男が声をかけてくる。こういうのはフル無視がいい。断ったりして下手に反応すると、かえって時間がかかる。これが東京の処世術である。
スマホを見ながらただ真っ直ぐ目的地に向かう。
「すみません、お姉さん」
ん?
同い年くらいの女の子の、かわいらしい声が聞こえた。女の子が声を掛けてくるなんて初めてのことで、スマホから顔を上げた。
「あの、あなたです。突然すみません、ちょっとだけよろしいですか?」
とても綺麗な笑顔を向けてくる。
スラっとした立ち姿で、黒い髪がさらさらとした、綺麗な女の子であった。身長はわたしより少し大きいくらいだろうか。
見とれるように、自然と足が止まった。
「・・・何でしょう」
「実は・・・そう!絵の!モデルを探していまして!ご興味があればと思ったんですが!」
急に慌てたように身振り手振りが大きくなった。まさか実際足を止めるなんて想定外だったのだろうか。左手で絵を描くジェスチャーをしながら笑いかけてくる。
どうやら芸術家?とまではいかないが、そういうものを志しているようで、絵のモデルを探しているらしい。今まで何度も声をかけ続けて、やっと反応を示したのがわたしだったそうだ。
「ぜんぜん!怪しくないので!お時間があったらでいいので!」
手と手を合わせて、お願いをするようなポーズでそう言っている。
「・・・今は無理だけど、また今度ならいいですよ!」
彼女の笑顔に応えるように、そう答えた。実際、全然怪しいとも思わなかったし、迷いは全くなかった。
この出会いが、わたしたちの物語の始まりであった。




