スペクルム ” 印を持つ者と7人の魔導師達”
41面
イクシスは自国について話した、国のみんなが同じ印を持っている事スペクルムは未来に関係のある事柄が映し出される事や建国についても、話すことで信頼を少しでも得られればこれまでの疑問が解決できると考えたからだ。
「何か質問はありますか?」
「あまりにもこの国、いや、この大陸にある国とは違い過ぎて何から聞けば良いか分からぬ……」
「では、こちらから質問しても?」
「あ、ああ構わん」
「ではまず、スペクルムの事は聞いた事はありますか?」
「王女達、いや、印を持った者が誕生した時は神々の島より神官によって賜る物だ、生後三ヶ月の頃に神官によって先ず祝名を賜る、その後彼らが十五歳の誕生日にスペクルムが与えられるのだ」
「神々の島から神官が来るのですか? あれ(スペクルム)を持って」
「そうだ」
「神々の島は何処にあるかご存知でしょうか?」
「詳しい場所は知らぬ……誰も、ただこの北の海よりさらに北に行った所にある島とだけしか分からぬ。しかしあの海域はいつも霧に覆われおり海流も複雑で近づけない」
「彼らは私達のように印を持った者ですか?」
「いや、彼らは普通の容姿だ」
普通? 普通の筈はない。
何故ならスペクルムは印を持った者にしか作り出す事はできないのだから、明らかに容姿を隠してこちらに来ているしかも魔法で移動して。
イクシスとハントの眉間には深いシワが見てとれた、いつも優しく接してくれるイクシスから放たれる全く別人のような冷気......部屋の温度が下がった。
「すまない、少し空気を悪くしたようだ」
いや、少しじゃないから……一瞬死を感じたから
「後いくつか聴かせていただきたい。フィヨルド以外の国にも印を持った者がいるのだろうか?」
王は少し悩んだが彼らに隠し事をしても無駄なような気がした、言ったところで彼らがこの国に何かする事はないだろう。
するならもうとっくにしている筈だから。
「西のトゥーリスに数ヶ月違いで王子が誕生されている、南のサジュアルには居ない。東イージスとはフィヨルド含め三国とも国交がないためわからないと思う......私が言えることはこれくらいだ」
「そうだ桜の木のことも聞いておかないと」
ハントが囁くように言った。 イクシスは小さく頷いた。
「この城の中に桜の木がある庭園はあるだろうか?できれば見たいのだが、それとこの国でかつて王太子が突然消えた事がありましたよよね?」
彼らはこの国の事をどれだけ知っているんだろうか?
「庭園をご案内しますよ、話しながら」
「お願いします」
イクシスは庭園に移動しながら周りを見渡していた、スペクルムに映っていた風景がないか。
「桜の木がある庭園は一つだけです、この庭園の一番奥噴水がある所です」
指をさした先に目を向けた、一瞬風が吹き抜けた風に花びらが舞い花の香りがイクシスを包んだ。目に映る風景にハッとした、ハントもそれに見覚えがあった。
二人は確信した。アレ(スペクルム)に映った風景は間違いなくあそこだ。
「消えた王太子が実在したことに間違いはない、もっと詳しい事が知りたければ城の図書室で調べても構いませんよ」
「本当ですか? もしそうならありがたい、なイクシス」
「ああ......」
ここにもあの絵本があった、当たり前か…… 七人の魔導師についての記述もあった、魔導師の名前も書かれている。
その名前を見た瞬間言葉を失った、ハントもそれを見た瞬間口元に当てた手が震えたそして冷や汗が背中を流れた。
まさか……
42面
「ねぇ、どうしたの?」
二人の王女が心配そうにイクシス達の顔を覗き込んでいる。
きっと今の顔色は最悪なのだと、安心させようと思った笑顔はきっと引きつっているに違いない……
「大丈夫だよちょっと本の内容にビックリしただけなんだ」
大きな瞳が不思議そうに本を見ていた。
「お姉様、お名前が同じだわ、ハントさんも」
二人だけじゃない……七人とも同じだなんて、そんな事ここで言える筈もない。
「私達の国では比較的多い名前なんだ、たまたま同じなのでちょっと驚いただけだよ」
ここにある本は当然持ち出し出来ない、書き写すことは可能だろうか?
「お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい、何でしょうか」
「この本書き写す事は可能でしょうか?持ち出しは出来ないでしょうから」
「当然です。しかし、書き写すとなるとかなり時間がかかるのではないでしょうか、陛下に確認してみないと」
「それならご心配には及びません薄い本ですからすぐ終わります、紙を頂けますか?」
「ペンは?」
「ペンは結構です」
そう言うとイクシスは紙と本に何か唱えた、白紙だった紙に文字が浮かび上がった。
周りの人々からはため息が漏れた。
「これが魔法なんだ……」
数分で書き写し終えた。
一刻も早くコーライズに帰りた気持ちを抑えイクシスは最後にもう一度あの桜の木まで行きたいと頼んだ、何故だかわからないがあの場所は大事な場所のような気がしてならなかったからだ。
「王女様達に魔法を教えに来てもいいでしょうか?」
「勿論です」
また来る事を約束してイクシスとハントは城を後にした。
コーライズに帰ってきた二人は禁止書庫へみんなを集め七人で書き写してきた本を前にして言った。
「この本の内容を見て一緒に考えて欲しい」
考えるって?何をだ?
不思議そうに五人は顔を見合わせた。
イクシスは七人の名前が書いてあるページを開いた。
「ここを読んで欲しい」
開かれたページを読み進める五人、自分たちの名前が目に入った。
王子を助けた七人の魔導師の名前だった。
何故?自分たちの名前が書いてある?
「なあ……この本は絵本の中身について書かれている事に間違いないか?」
「ああ、王子は実在の人物だと国王が言っていた」
「王子は実在の人物、七人の魔導師も実在の人物って事か?」
「国王が言うにはそにようだ、ただ三百年前の話だ事実かどうかは......」
「俺、冷や汗が出てきたんだけど……」
七人ともそうだ!偶然にしては出来過ぎている、とても信じられない、もし本の内容が事実なら俺たちは三百年前に行くし必要があると言う事なのか?
「俺たちがそこに行かなくてはいけないのか?歴史が変わるんじゃないか?」
「そうだよ!確かに移時日記はあるでも、それを使って移動した事がある人はいないって聞いたぞ」
「まるで実験台みたい……」
実験台、この言葉でみんなの思考が止まってしまったかのよだ。
これ以上言葉が出なかった。
43面
彼らは答えが出ないままだった、というかその事を考えないようにしていたのかもしれない。
そしてあっという間にイージスに行く日が来ていた。
イクシスとハントは約束の森でテシウスを待った、待つ間もあの事が頭から離れずにいた。 程なくして護衛の騎士と共に現れたテシウスは満面笑みを浮かべ走って来た。
「イクシス久しぶり」
弾んだ声にここ数日の出来事に重たかった気持ちがゆっくり溶けていくようだまるで雪が溶けるように……
「久しぶりだね、テシウス元気だったかい?」
「うん、元気だったよ」
小声でテシウスが聞いてきた二人は元気かと
「ああとても元気だよ」
テシウスは安心したようで頬を少し赤らめていた。
「イクシス様でいらっしゃいますか? 近衛隊隊長ジョルゼンとこちらがマルコエルです」
「私がイクシスです、こちらはハンスですどうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします、では、ご案内致します。今から行く所は王家領地の北の別荘になります、訳あってテシウス様にはこちらで生活して頂います詳しくは国王陛下から話があると思います」
川沿いを上流に向かって歩いて行った少し進んだら橋が一本対岸にかかっているのが見えた。
橋を渡り森を抜けた所に城壁が現れた、こじんまりとした城だったが城壁は高く城内には入りにくそうな城だ。
ゲストルームに通された、大きくはないが日当たりの良い落ち着いた部屋だ。
ガチュ ドアを開ける音がし振り返った二人の視界に気高いオーラを纏った王が入って来た。
「よく来てくれた、王子より話は聞いているが情報が全くない故わからない事が多く疑問が多いので答えて欲しいのだがよろしいだろうか?」
「勿論です、答えられる事は全てお答えいたします」
「先ずは……」
そう言うとイクシスとハントは自分達の本当の姿を見せた。
我々の姿を見た王に騎士の二人は言葉が出ない様だ、無理もないこの国には今まで印を持った者が一人も居なかったのだから。
「この容姿はこの国では見た事ない姿だと思います、ですがこの大陸に四つの大国が統一される前にはこの東の地域にも居たんですよ、私達の祖先がこの容姿によって迫害を受けた事から印を持った者を各地で声を掛け集めて印を持った者だけで国を作りました」
「では、この国にもあなた方の様な容姿の方がいたと言う事ですか?」
「はい」
「どうして、陛下は王子であるテシウスをこの北に別荘に隠しているんですか?」
躊躇っている様だが少し間をおいて話し始めた。
「お恥ずかしい話だが俗に言う権力争いです」
どの国にもある話だ、テシウスもだが母親である王妃はさぞかし苦しんだであろう、亡くなった事にしなければなれなかった、目の前で成長を見る事ができないとはなんとも……
44面
「理由は分かりました、私達がその事に干渉する事はないのでご心配なく。私達は彼に魔法の使い方を教えるだけです、もっと上達すれば私達の様に姿を隠すことも出来るようになりますから」
「さて、これからお話しする事は口外されませんようお願いします、万が一漏れれば大陸の四つの国の国益に大きな問題が起こるでしょう、最悪は……言わなくてもお分かりだと思います」
「分かりました、必ず守ります」
「早速ですが、王子が誕生してから三ヶ月した頃神々の島から神官が来たと思いますが」
「神々の島?神官?ですか?」
王は腕組みをして考えていた。
宰相からもそんな話は聞いていない。
「三ヶ月後ですか?」
「ええ、そうです……来ていませんか?」
「もし、神官達が来ていない場合不都合がありますか?」
ハントと顔を見合わせた、我々は神官ではない、どんな事が起きるか分からない。
「実は私達はコーライズという国から来ました、神々の島の神官について何も知らないのです、なのでどんな事が起きるかは分からなくて、申し訳ありません」
「いえ……」
「それについて近いうちに調べてきます、そこで実はテシウスの他にも印を持った者がいます、その子はテシウスと同い年で友達です」
王はかなり驚いたようで言葉に詰まっていたがそれが誰なのか何処の者なのか知りたかったようで
「友達?ですか……男の子ですか女の子でしょうか?」
「双子の女の子です」
「女の子、しかも双子だって? 何処の者かわかりますか?」
イクシスはこの事を言って良いものか少し考えた、躊躇い(ためら)はあったが正直に話すことにした。
「彼女達はフィヨルドの王女です」
王女と聞いてさらに言葉が出ない様子だった、それもそうだ印を持った者がいることさえ知らないのに王子に友達?更に印持ちの女の子に双子、何よりそれが隣国の王女だなんて、一度に知り得たことがあまりにも大き事は言うまでもない。
「魔法はいつも森の中で双子の王女と共に教えていました」
「フィヨルドにはこの事は?まさか話しましたか?」
「いえいえ、安心して下さい、魔法を教えていた事と私達が印持ちと言うこと以外は知りません」
「では、何故私達にはそこまで教えてくださるのですか?」
「それは、ここイージスは他の三国とは国交が無いとお伺いしていたので……」
「友達という事は……子供達はこの事を知っていると、お互いに立場を知っているという事ですね」
「そうですね……全て分かっています、そしてその事実を知っている唯一の権力者が陛下だと言うことです」
45面
眉間に刻まれた皺の深さで王の苦悩が伺えた。
「今一番知りたいのは洗礼式を受けなかった事で良くないことが起きてしまわないかという事です、フィヨルドの王女との事は勿論気になりますが今は深く考えたくないというのが本音でしょうか」
今まで調べてきたがこれまで神々の島についての記述はどこにも無かった、フィヨルドの国王に聞くまで……考えられるのは、コーライズを創った最初の八人のうち出ていった一人が創ったその考えが自然だ。
部屋に広がる音のない世界を鳥の鳴き声だけが支配していた。
沈黙を破ったのはイクシスだった。
「コーライズに帰って神々の島のことを調べようと思います」
「私共の国には情報が無さ過ぎでしょう」
本当にそうだ!それどころか情報は何処にも無いのだ、掴みかけた闇の中の光がゆっくり消えていった。
また来ることを約束して二人はコーライズに帰った。
二人は帰って直ぐ(す)七人で禁止書庫に集まった、イージスでの事を話し意見を求めた。
「イージスでは神々の島から神官が来ていないって事か?」
「もう六年も経っていたら魔力の残痕を辿る事も出来ないな」
「彼らがこの大陸に移動していることは間違いない、潮流の流れが複雑で船は無理だと言っていた、きっと魔法陣が何処かにある筈だよ!」
「考えられる場所は、あの森とコーライズの何処か?だと思うんだ」
「ここってことか?」
「ああ」
「イクシス、何故そう思うの?フィヨルドの何処かってことはない?」
「コーライズを創った中心人物は八人、複雑な出来事から七人になった。ここを出て行った一人が神々の島を創ったと思うのが自然じゃないか?もっとも魔力の強かった彼なら島へ行くのは簡単だったと思う」
みんな黙り込んだ……
僕たちはどうやって島へ行けばいいんだろうか?
「島へ行く事は後回しにしよう。まず魔法陣を探そう、必ずあるはずだ」
七人は先ず森を探した。丸二日を費やしたが魔法陣は見つからなかった。
「森はなかったね何も」
イクシスの頭の中は今までの事がまるでスライドショウのように一枚一枚と流れて行った、ふとある場面で思考が止まった。
「ちょっと師の所に行ってくる」
「待って!イクシス何か分かったのなら僕たちにも説明してから行ってよ」
「そうそう、自分だけで納得しない!」
苦笑いをして頭を掻いた。
「イクシスはいつも言葉足らずだね」
46面
「これはあくまで僕の勝手な想像なんだが」
と前置きをしてイクシスは話し始めた。
「僕たちが持っているスペクルムは自分の未来の事しか見えないよね、思い出して割れた七枚のスペクルムを一つに合わせた時何が見えた?」
その問いに部屋の空気が変わったのが分かった。
「あの時映し出されたのはその時は何処なのか分からなかったが、フィヨルドに行って初めて城内であることが分かった、七枚を一つにする事で見えた。仮に出て行った一人、ノークが僕達と同じように割れたスペクルムのかけらを一枚にして持って出て行ったとしたらこの大陸のことが分かるんじゃないかな?」
「そうか……だから」
イクシスは師を尋ねた、久しぶりの訪問に師も笑顔で迎えてくれた。
「元気でしたか?お変わりなかったですか?」
「ああ、元気じゃよ、イクシスはどうじゃ?今日はどうした何かあったか?」
少し顔に暗い影を落とした。
「僕達の割れたスペクルムを一つに組み合わせたら、ある風景が映し出されたのですが……僕達の力で完全な一枚のスペクルムを造る事はできますか?」
顎髭を手でなでながら何かを思い出すように考えている容姿だった。
しばらく考えてゆっくり話し始める。
「出ていったノークは非常に強い魔法の使い手だったようだわしにもハッキリと分からないのが本音じゃ、ただ、この国ができた時造ったスペクルムを持って出て行ったと伝わっている、禁止書庫の中に魔法書があったと思うんだがその中に七人で一枚を造る方法が載っていたと思うそれを探してみなさい」
「師はこの事を知っていましたか?」
「いやいや、まずヒビが入った事がないんじゃ、これはこの国が出来て初めての事でこの先まだわしらが知らんことが出てくるじゃろう。ただ、ノークが別れた妻をいつまでも想っていたと伝え聞いている、別れたことを相当後悔していたようじゃ」
「そうですか……ありがとうございます魔法書探してみます」
「ああ、他にも役に立つ魔法が載っているはずじゃ」
「今までこの印のお陰で平穏な生活が送れていたことに胡座をかいていたとしか言いようがないですね、勉強しないと......」
「ああ、そうだな、これは何らかの予兆かもしれない」
師のもとを出てイクシスはみんなの所に帰って来た。
それから魔法書を探し各々で読み始めた、スペクルムを造り出すための魔法が載っている箇所を黙々と探した。
47面
”満月の明かりの下水面に灯る火は風に消えることなく紫の部屋を照らしている。草花は輝くクリスタルを包み込み傷を癒すだろう”
「いろんな魔法陣が載ってるけど……該当する箇所がないかも」
「どれも自分達が今出来る事ばかりじゃないか?」
「まだ見てない本はあるか?」
「あと、これだけだよ」
最後の一冊を開いた、この本の真ん中あたりのページが光っているように見えた。
「ねぇ、そこ光ってない?」
「ああ......そうだな」
トゥーリオは手に持った本が少し光っていることに気が付いた。
七人はその本の周りにゆっくり集まって囲んだ。
光っているページに指を添えてゆっくり開く、そこには魔法陣ではなく詩のような逸文が書かれていた。
「どういう意味?これ?」
「???????」 間抜けな効果音がみんなの頭に流れた。
「全く分からん」
「また行き詰まった……な」
「もー解散!! ちょっと頭冷やそう」
確かにこれ以上は今考えるのは無理だと七人は思いこの詩をメモして帰って考えことにした。
その後いく日か経ったが答えは全く見えてこずイクシスはフィヨルドへ向かった子供達の約束を守る為だ。
「こんにちは、久しぶりだね元気だったかい」
「こんにちは先生、元気でした」
小さな双子の王女は満面の笑みを浮かべ、キラキラした瞳をイクシスに向けた。
二人は小声でイクシスに聞いた。
「テシウスは元気?長い間会ってないからちょっと心配なの」
「君たちに会った後にイージスに行ったよ、それから会ってないから分からないけどきっと元気だよ」
「もう会えないのかな?」
「何とかするからね」
「うん!」
まだ子供の彼等には損得勘定などない、純粋に友達と会いたいと思ってる、この先のことは誰にも分からないただの友達で終わるかそれともそこに恋心が芽生えるか?
色々想いを巡らせてわずかに頬が緩んだ。
「ねぇ〜ねぇ〜先生 先生ってば」
呼ばれたことに全く気付かず、柔らかな笑みが口元を覆っていたが子供達にはこの笑みがちょっと気持ち悪いものに写ったようだ。
ハッとして慌てて返事をしようと双子の顔を見た、何とも言えない顔に眉間に微かな皺が(シワ)よっているのを見てイクシスは焦った。
「ごめんごめん、何だい」
「もー先生私達の話聞いて!」
「はい、聞きます」
「あのね、イクシス先生とハント先生の服の襟の色はどうして違うの?」
「ソニア!私も思ってたの!」
「これは持っている魔法の種類によって色が分かれているんだよ」
生まれて時から決まっていた色、服で区別できるようにコーライズの人達はみんなそうだから気にも留めていなかった。
今までのおさらいと新しい魔法を教えて今日は帰ることにした。
「じゃあまた来るね、国王陛下に許可をもらうから今度は森で会おう、テシウスと一緒にね」
帰り際何気なく思い出した双子の王女が言ったことを。
48面
コーライズに帰ってきた二人は禁止書庫に行きもう一度魔法書を読んでみる。
”満月の明かりの下水面に灯る火は風に消えることなく紫の部屋を照らしている。草花は輝くクリスタルを包み込み傷を癒すだろう”
「この詩にヒントがあるよね……」
「ヒントと言うより答えだよ」
「答えなの?」
「王女が言ったことを思い出したんだ、私達にはそれぞれに色があるだろ僕はクレスタル透明だ、サジアルは赤、ジルは青、ハントは白、ウィーゴは紫、カロナは黄色、トゥーリオは橙だ」
「うん、それは分かる よ」
トゥーリオが言った
「分かった!一人一人がこの詩に基づいて魔法陣を描けばいいんだ、そうでしょイクシス」
「その通り!」
「試しに描いてみうよ」
「でもどこで描く、満月の月明かりの下でしょ、コーライズは地下にある国だよ森に行っても木が邪魔で満月がちゃんと見えないんじゃないかな?」
また七人の思考が停止した、まるで時間が止まったように……
「みんな息して!!なんか全部止まってるよ!」
「っは……」
「そこは今は考えるのをやめよう、先ず魔法陣の完成が先だよどうせ今は満月じゃないし」
「そうだね、次の満月まで半月ほどあるじゃないか」
「早速魔法陣を描いて見ようぜ」
七人は森に移動し少し開けた場所で描くことにした。
「大きさは関係あるのかな?大きさは描いてなかったよね」
「魔法陣の大きさでスペクルムの大きさが決まったりして」
そう言ったジルの顔をみんなが一斉に見た、そして全員が指をさした。
「やめてみんなで指さすの」
「でもきっとそうだ!!」
「もしそうだとして、あまり大きいと便利悪いよ程々がいいよね」
七人は話し合い20センチ程の大きさにすることにした。
「小さい魔法陣って書くの面倒、帰って難しい」
「それなら心配は要らないよ」
みんなは顔を見合わせピンと来た表情をして一斉に言った。
「そう言うことか、納得!」
六人の声が揃い少し間をおいて声を出して笑った。
49面
森についた七人は先ず中心にイクシスを、イクシスを包むようにトゥーリオが癒しの魔法を描く更にそれを包むようにカロナが花の魔法をかけた、三人を囲むようにウィーゴの部屋の空間が覆うサジアルの炎が優しく包んだ瞬間描いていた魔法陣が消え去った。
呆気に取られた、中心にいたイクシスの頭上に舞い上がった花は雪のように消えていった。
「皆んな怪我はないか?」
「何が起きたんだ?魔法陣の描き方が間違っていたんだろうか?」
「それしかないね」
「もう一度詩を確認してみよう」
「水面に灯る火 だから……水の上に炎って事か?」
「風に消えないってことは……風は外から吹くものだから」
「一番外が風の魔法陣かな?」
「いろいろ試してみれば分かるさ、一番外に風」
「あとはさっきと同じでいいんじゃないか」
最後の魔法陣を描いたところでまた消えた、無情にも。
「あ……これも駄目だ」
「紫の部屋だから色をつけてみない?」
「じゃあ草花は輝くだから光らせて見ようよ」
「有りかも」
もう一度描いてみた……だがこれも駄目だった。
その後何度か試してみた、だがやはりどれもあっという間に消えた、魔法陣を描くのも体力がいる皆一様に疲れが滲んでいた。
「お腹すいた……」
「腹が減っては戦はできぬって言うし休憩しよう」
「一度帰って何か食べよう」
その様子を木の陰からそっとみている者がいた。
「彼らは立体的に魔法陣を描くことができないのか?」
そっと呟く人物がいた。
「大好物のミートパイだ!!」
「さあ食べよう!」
「おばさんのミートパイ最高だよね」
「食べてまたやって見よう」
それから何度も試した、だが全く上手くいかない何がいけないかも分からない。
「また行き詰まったね……」
「どうしたものか……」
「禁止書庫で魔法書を見直して見ようか何かヒントになるものが載っているかもしれないし」
「うん、今のところ頼れるのは魔法書だけだしね」
パラパラとページを捲る(めくる)音だけが聞こえる、黙々と魔法書に観入る。
何時間経っただろう何十冊みただろうか、あの詩が書いてあった書の一番最後のページを触った時だった。
「あれ?」
「どうしたイクシス」
50面
何度も触ってみた、前のページと違う?最後だけ少し、ほんの少しだけ厚みが違う。
「厚みが違う……違うんだ」
イクシスはページの三片をそっとさするゆっくりと、光と共に重なった二枚のページがゆっくりと剥がれていく、一枚が二枚に……
「これは? 魔法陣だ、けど今までの魔法陣とはすこし違うな」
「どれどれ、ん?」
「なんか立体的だねこ魔法陣」
「そう言うことなんだ ね!」
「そう言うことだ」
あんなに暗かったみんなの顔が一瞬で明るくなった重たい部屋の空気が一変した。
「よし!今度こそ出来るよ きっとね」
皆んなが移動して早速試してみた。
今まであっという間に消えていた魔法陣は光を放って消えない。
「消えない!!消えないよ」
「ああ 成功だな」
だがゆっくりと消えていった。
「消えた……」
「満月の明かりの下だから、満月の下じゃないといけないって事じゃないかな」
「満月は明後日だね、で、この魔法陣どこで描くの?」
「あーーーー」
「大きな声出すなよ、びっくりするだろ!」
「イクシスどこで描くか決まった」
「え!僕が探すの」
イクシスはちょっと不満げな顔だ、フグとまではいかないがリスの頬袋ほどには膨れている。
「イクシス以外に探せないし……」
「わかってるよ、もう探してある」
「何だよそれ」
「やっぱり!それでこそイクシスだ」
「調子がいいな、明後日皆んなで行こう」
「天気も良くて月もバッチ見えるね、よかった」
「で、どこの行くの?」
「禁止書庫の鍵を取り出すのに行った所にいくよ、あそこは川に迫り出した丘になってて朝日も当たるけど遮る物がないから当然月明かりも良く当たる」
「あそこか!」
小一時間歩いてその場所までやって来た、月が真上まで昇るのを只々無言でまった。
静寂を破ったのはウィーゴだった。
「一枚のスペクルムが出来るんでしょ……これで」
沈黙が何を意味するのか、経験がないことは言いようがなくイクシスもただ月を
見上げるだけだった。
「そろそろだ」
イクシスの呟きに皆んなが見上げた
「始めよう」
満月の灯りの下でそれぞれに与えられし役割のもと魔法陣を完成させていく、イクシスを中心とした立体的な美しいそれは(魔法陣)仄かな(ほの)光を放った。
月から一筋の光が降りてくる、その光は決してケバケバしい光ではなく、心安らぐ柔らかな光だった。




