スペクルム ” 印を持つ者と7人の魔導師達”
76面
「じゃあ行こうか」
フィヨルドから帰って来たイクシスはフェルゼンとイージしに行く事を六人に話した、出来れば後二人誰か一緒に来て欲しいと話た。
その結果、回復魔法のハントと空間魔法のウィーゴが一緒に行ってくれる事になった。
「行ってくるよ」
「ああ、気を付けて」
四人に別れを告げイージスに移動する事になった。
「よし先ず城の何処に移動する?」 ウィーゴは何処か落ち着かない様子だった、と言うかワクワク感が顔から滲み出ているようだ。
「随分楽しそうだねウィーゴは」 ハントは相変わらずの冷静さで彼を見るとこっちまで安心できる。
「フェルゼン何処に移動する?」
少し考えてフェルゼンは頷いた。
「禁止書庫」 一言そう言って三人の顔を見た。
「主たるイクシスが創る 空間移動」 そう唱えて移動した。
四人は淡い光に包まれて足元からゆっくり消えて行った。
閉じた瞼に光が差し移動が完了した事が分かった、四人は目をゆっくり開けた。
着いた先は真っ暗で、少しカビ臭かった、暗闇に目が慣れてきた。
「無事に着いたみたいだねフェルゼン」
フェルゼンは周りを見渡した。間違いないここはかつて自分が住んでいた城だそしてここが禁止書庫だと分かった。
安堵のため息を吐く。四人は息を殺し周りの音に耳を澄ませた、人がいるのかという事を。
幸い静まり返った城には何の音も聞こえなかった。そこには自分の心臓の音だけがやたらと騒がしく聞こえた。
フェルゼンはのぶをゆっくり回しそっとドアを開けた、目の前に広がった景色は二年前に去った時のままだった。
「イクシス、ここは荒らされて無いみたいだ」
「ああ……そのようだね」
「荒らせれてた?のか」
「ああ、ここを出て半年後に来たんだ二人で、その時フェルゼンの執務室は荒らされてた。まるで、何かを探しているみたいに」
「で、その探し物が何か知っているのか?二人は」
「知ってる、でもこの城にはないよ。僕が持ってるそして今それはコーライズにあるから」
「お!いきなりの告白だな」
「お宝の匂いだ、僕達に話していいの?それ」
「構わないよ、信じてるから」
「照れるねその言い方」
「まあコーライズではお金で争いが起こることはないもんね」
「そうだな」
他愛もない話をしながら図書室を見て回っていた。
遠くの方で何か聞こえたような気がした、イクシスが「しっ!」 一斉に息を殺し身を屈めた《かがめた》
「証拠は随分集まった、テシウス様が見つかれば」
その言葉を聞いた途端、フェルゼンはスックと立ち上がり駆け出しそうになったがイクシスが腕を掴んでその勢いを止めたのだ。
「しっ!まってフェルゼン静かに」 「何で!イクシス離してよ」
「気持ちは分かる、でもここは慎重にしないと」
その言葉を聞いてフェルゼンはその場に留まった、握られた拳が微かに震えていた。
「イクシスの言う通りだよフェルゼン焦ってもうまく行くものも行かなくなる」
「それより彼らが何処に行ったかそれを探さないと」
「フェルゼン心当たりあるかい?」
「心当たり? 今の声……」
「今の声?フェルゼン、ジョルゼンかマルコエルどっちだった?それともどっちでもない?」
記憶を辿った《たど》 子供の頃から聞いていた声だった、あれは……
77面
微かな記憶が蘇る、あれは……そうあの声は ジョルゼンだ!
「ジョルゼンだ!イクシスあれはジョルゼンだった、さっきの声ジョルゼンだった」
無くした宝物を見つけたみたいにキラキラした瞳で言った。
「フェルゼン、彼の声だったんだね」 イクシスも宝物を見つけたみたいにキラキラしていた。
「うん……探そう」
「彼らは何故、二年も経ってまだここに来てるんだ」 ハントは不思議に思った。
「さっき言ってた、証拠は集まったって。あの日何が起きたのか知りたかった事が分かるんだね、そう言う事でしょイクシス」
「多分そうだ……うん」
「マルコエル?彼が裏切ったって事だよね」
「行こう」
城から四人は出た、慎重に城の周りを探した、会話をしていた二人だけかそれともそれ以上の人がいるのか?
「フェルゼン、彼らの行き先に心当たりはないかい?」
「うーん、中の自分の部屋か、兵士の控え室……でも目立たないようにすると思う普段行くことのない部屋かな?」
「ジョルゼン、テシウス様だけど生きていると思うか?」
ジョルゼンの眉間に深く刻まれた皺、あの日の記憶が蘇る。
彼が裏切るなんて…… 「何故だ!なぜ裏切る陛下が最も信頼しているのは俺たちだぞ」
「お前にはわからないよ、俺の気持ちなんか。お前と俺は同等じゃない!」
「それは……」
数年前の不正により爵位を降格させられた領地も縮小されそれにより離れていく貴族もいた徐々に衰退していったのは知っていた。
「それでも陛下はお前を今の地位から外す事はなかったじゃないか」
「それが余計に惨めだった」
「あと数年だ、数年待てば爵位を元に戻すと陛下は仰っていたのに、なのにお前は」
その言葉を聞いて一瞬怯んだ隙にユーハイトによって倒れた。
自分が最後に……せめて最後に倒したかった、彼の願いを叶えたかった。
「最後はお前にとどめを刺して欲しかったよ」 それが最後の言葉だった。
長い沈黙の後彼はテシウス様の秘密を話し始めた。
「ユーハイトこれから話す事はここだけの話として聞いて欲しい、いずれテシウス様が戻って来た時国民に明らかにするから」
ユーハイトはジョルゼンが一体何を語るのかと息を呑んだ。
「テシウス様には秘密がある、彼はこの国の国民とは明らかに違う点がある……」
「そ、それは?どう言う事」
「彼の容姿、容姿がこの国に人々とは違うんだ」
「容姿?」
「そう、容姿。髪は金色瞳は虹色をしている」
この国の国民は黒髪がほとんどだ、せいぜい違っても濃いブラウンだそれが金色の髪に虹色の瞳って。
「う、嘘だろ!」 ジョルゼンの言った事が信じられないと言った表情だった。
「王妃は、不......不貞を働いたのか?」
その声は口にしてはいけない事のように静かに囁いた。
「バカ言うな!!」
「だが、どう考えてもそう考えるのが納得いくだろ」
「陛下が間違いなく自分の子供だとハッキリ言った、それにその容姿を持つ人間を私は知っている」
「え!!他にもそんな人がいるのか?」
「ああ、いる。そして彼等は魔法が使える」
ユーハイトは息を呑み、目を見開いてジョルゼンを見た、一体何を言っているんだ!!まさにそんな言葉が飛んできそうだった。
78面
「その話を信じろと言うのか」 ユーハイトはじっとりと手に汗が滲んだ。
「見たのか、魔法を」
「魔法を使えたからあの時あの場から消えたんだ……だから必ず生きてる、生きてるんだテシウス様は」
四人は城の中に入った。
「姿を消して探そう、その方が安全だ」 四人は陣を切って姿を消し囁くように静かに言った。
「まず、僕の執務室に行ってみよう、その後ジョルゼン達の部屋、それから兵士の控え室と最後に図書室」
「了解」
執務室に移動陣で行ってみた。あの時荒らされていた部屋は綺麗に片付けられたいたがこの部屋には誰もいなかった。
「次はジョルゼンの部屋だ行こう」
部屋を出ようとしたフェルゼンに
「ジョルゼンの部屋には魔法陣は描かなかったのか?」
「従者の部屋に行くことはないからね」
「そうなのか?」
「ふふ、それが貴族だ……階級社会だからね」
「ふ〜んそう言うもんなのか」
「コーライズにはないもんだな」
「場所はわかるから行こう」
四人で移動を始めた、中央の階段を下り階段の裏側向かった。そして扉に手を掛けた。
「こんな所に部屋が……」
ドアに耳を当てて中の気配を探った。
「人の気配は感じないよ」
「じゃあ入ってみようか」
そっと開けた。カチャっと音を立てドアが開く、ゆっくりと引いて開けた。
やはり人は誰も居なかった。
「騎士の控室に行ってみよう」
その頃騎士の控室ではジョルゼンとユーハイトが抜け道を使って図書室に移動する所だった。
「セシウス様とは何時会う予定だ」
「次の満月の夜だ、証拠になるものを持ってこちらに来る」
「話は変わりますが。近頃天候が変じゃないかと、市政に出て他の支援者達と宿の食堂で食事中に商人や旅人が話しているのを聞きました。他の国に行ってもこのイージスの上に黒雲が覆っているように見えるそうです」
「元々ここは北部に当たるから雪が多い地域だが、天候か……その内容はどんなのもだった?」
「目立ってこれというものはないみたいですが、ただ作物が育たないと言っていました」
ジョルゼンは顎に手を当て何かを考えていた。
「そう言えばテシウス様がこの城にいた時寒い時期なのに庭に花が咲いていた」
「え!よく意味がわかりませんが、それは一体どう言う事ですか?」
「そう言えば……陛下にそのことを話した事があった、セシウス様が魔法が使えると言う話になって花の話をすっかり忘れていた」
「季節にそぐわな花が咲いていたと言う事ですか」
「二年も経って思い出すなんて……その時テシウス様に魔法を教えに来ていた者がいた、テシウス様と同じ容姿の者だった」
何故、あの日彼等のことを思い出さなかったんだ……
「ジョルゼン彼等は何処から来たんだ?」
「ああ……何て言ったかな……」
頭の中で初めて彼等に会った時の事を思い返していた。
「そうだ、コーライズ? 確かコーライズだ」
「そんな名前の国この大陸にあったか?」
「知られていないよ、どの国にも」
「一体何処にあるんだその国は、そこに行けばテシウス様に会えるのではないか?」
「会えるかもしれない……」
79面
二人は抜け道を使い城の外に出た。
「この川の向こう側に北の国フィヨルドがある当時テシウス様は城を抜け出して川向こうの森によく行ってたようだ」
「ようだ?って護衛騎士のフェルゼン様は一緒に行かなかったのですか?」
「実は城を抜け出していることを知らなかった」
な!何と知らなかった?ですと! ユーハイトはたいして大きくもない目を見開いてジョルゼンの顔をマジマジとみてしまった。
「よく何事もなかったですね、大問題ですよ!それは」
「二年も前の話だ、今更だろ」
「開き直ってますね」
頭を掻きながら苦笑いをするジョルゼンが何だか可愛く思えた。
「川向こうに行ってみましょう、何か分かるかもしれませんしもしかしたらその人達に会えるかもしれません」
二人は橋を渡って森に入った。
その頃イクシス達は騎士の控室には誰もいない事を確認した。それから図書室に移動することにした。
図書室には移動魔法陣を描いていたので控室に陣を描いて図書室に移動することにした。
「フェルゼン、禁止書庫に移動する方がいいと思うあそこなら他の人は入れないからね」
「そうだね、そうしよう」
「主たるフェルゼンが……」 言いかけて急に止まった
「ん!どうしたんだ?フェルゼン」
「ねえ、最初に陣を描いたのはテシウスだった僕でしょ、今僕はフェルゼンになってるけど移動魔法陣使えるの?」
「ああなるほど、大丈夫だよたとえ名前が変わっても君自身の陣は変わってないから」
「陣が変わらないってどう言う事?」
「描いた陣にはその人独自の癖があってね同じように見えてまるで違うんだよ、だからテシウスもフェルゼンもどちらも同じ人だから全く問題ないよ」
フェルゼンは納得したようで移動陣を描いた。
「主たるフェルゼンが創る 空間移動」
四人は禁止書庫に無事移動した。
「よかった無事に移動できて」
「フェルゼン酷いな僕のこと信用してないんだ」
バツの悪そうな顔がなんとも言えなかった。
禁止書庫を出た四人、だが図書室には誰も居なかった。
「どうする?誰も居ないけど」
「時間も時間だし、今日は帰ろう。 な 、フェルゼン」
「ん……うん分かった」
あまり納得してはいないようだったが帰ることに同意した。
「ジョルゼンが生きていた事が分かっただけでも収穫があったから」
「また行けばいいよ。それより来週はいよいよ炯眼式だね観に行こう、せっかく姿を消す魔法も身に付いたイージスでは他の人に会ってないから本当に消えているかが不安だろ、いい機会だ」
落ち込んでいた顔に光が差したようにパッと明るくなった。
80面
そしていよいよ炯眼式の日が来た。
「雨止まないね、昨日から凄い嵐だ」
「この天気はまずいな……想定外だ」
「雨だと問題があるの?」
「ある。いくら姿を消しても実態はあるんだから目に濡れない地面が出来るだろ」
「あ!そうか……じゃあ行かないの?」
「いや行くよ、ただし少し離れた所から見るようになるけどいいだろ」
「うん」
「とりあえず姿を消してフィヨルドへ行こう」
イクシスとフェルゼンは二人でフィヨルドに向かった。
その頃神々の島からフィヨルドの城外にやって来た。
「今日ここで炯眼式を執り行う為に神々の島よりやって来ました神官です、どうぞお取次ぎをお願い致します」
「伺っております、どうぞこちらへ」
城に通された神官達は神殿に入り祭壇に大きなスペクルムを置いた。
「あの宜しいでしょうか、今日は天候が悪く光も差しませんがこのような状態でも炯眼式は行えるのでしょうか?」
「勿論です」
まるで雨のことなど始めから気にしていない様子の神官達に不安な気持ちはあったものの一応安堵した。
「双子の王女様の準備はお済みでしょうか?」
「はい、もう少々お待ち下さい」
「畏まりました、では準備が終わり次第始めましょう」
「イクシス、教会の中見える?もう始まった」
「いやまだのようだ。中に入ってみるか?」
「中に入っても大丈夫ですか?」
「影に隠れていれば大丈夫だそれに雨もしのげる、中に入ったら話さないように」
二人は教会の中に入ろうとした時だった、今まで降っていた雨が止み雲がスーッと晴れてきた、まるでここで炯眼式が行われる事が分かっていたみたいに。
「凄い!晴れてきたよイクシス」
「ああ、声は抑えてねフェルゼン」 思わずフェルゼンは口に手を当てた。「
凄い魔術量だここに来た神々の島の神官の魔力量か?私達も多少気象を変化させることが出来るがここまで一気に晴れさせるなんて……
そして二人は静かに教会の中に入り入り口近くの柱の影に隠れていた。姿は見えないのになんだか不安でならなかった。
「それでは準備が整ったようなので只今からフィヨルドのお二人の王女様の炯眼式を取り行います。王女様のご入場です」
双子の王女が教会に入場して来た。
各々の印華を刺繍した純白の絹のドレス。頭にもそれぞれの印華をあしらったティアラが二人の美しさを引き立てていた。
感嘆のため息が参列者から漏れた。
「なんて美しいのでしょうか、まだ七歳だと言うのに……ですわ、あんなに降っていた雨がぴたりと止むなんて」
「本当ですわねやはりあの珍しい容姿が関係しているのでしょうね」
「そうそう、何百年ぶりかの炯眼式らしいですもの」
「きっと素晴らしい炯眼式になりますわ」
「お静かに。それでは只今から炯眼式を取り行います。お二方はこちらに」
二人はゆっくりと祭壇に進んだ。
いよいよ炯眼式の始まりです。




