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朝焼色の悪魔-第3部-  作者: 黒木 燐
第4章 乱麻
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6.ルーモア


「園山さん? あ、ウチの2階に入っとお人? え~っと、園山修二さん。礼儀正しい人やったけどね。管理人の僕にもいつも笑顔であいさつしてくれるんだよ。ゴミ置き場の掃除なんかも時々手伝ってくれてねえ。ほんと有難いよ。……彼に変わったこと? いや、特になかったけどねえ……。むしろ真面目(マジメ)過ぎてさ。最近、女っ気もなかったしねえ。最近よく行ってた場所? 昔は年替わりみたいにいろんな宗教にはまってたみたいやけど、最近はそういうの聞かなくなって落ちついとったみたいやね」


「ああ、彼ね。もう、ホント、クソ真面目っての? 話しかけても当たり障りのない返事が返って来てさ、後が続かないのよね。散髪にはよく来てくれて、お得意様だったわよ。そうそう、前にウチの旦那がここで倒れた時、ちょうど居てね、迅速に処置してくれたのよ~。その時、看護師さんって知ったの。ほんと、感謝してるわぁ。宗教とかセミナーとかの勧誘? やだあ、全然なかったわよ」


「あの兄ちゃんなら、よく儂の手を引いて横断歩道を渡ってくれたのお。いつもにこにこ笑って挨拶してくれて、なんか仏さんのごたる人やったばい」


「ときどき、キャッチボールしてくれたよ。妹は風でとんで木に引っかかったぼうしを取ってもらったんだよ」

「うん! とってくれたー」

「やさしいおじちゃんだよ、ね」

「うん!」


「ああ、園山さん。そこのアパートの人ね。いい子よ」

「そうそう。若いのにゴミ出しもきちんとしとったよね」

「むしろ、カラスが荒らしたごみをよく片づけよったやろ」

「だいたい、夜収集だから夜出せばいいのに、あのアパートの住人守らない人が多くてさ~。最近マナーが悪いのが増えたからさ」

「あの笑顔のあいさつが()いっちゃんねえ」

「え~、宗教? そげんとは無かったっち思うけどねえ」

「そういや、ここ数日姿見んよねえ。どうかしたっちゃろか?」

「え? 亡くなった?」

「サイキウイルス? うそやろ?」


 葛西は九木と共に園山修二の住んでいた地域で聞き込みをしていた。もちろん、園山が見えざる敵のスパイであったことの告白を受けてのことであった。しかし、誰に聞いても園山に対して良い評判しか返って来ず、彼が関わっていただろう宗教団体やテロ組織についてはまったく手がかりを得ることが出来ないでいた。しかも皆、園山の死や死因を知った途端に尻込みをして、口をつぐむか、そそくさと去ってしまうのだった。

 日もだいぶ傾いてきたので、缶コーヒーを手にして小さな公園のベンチに座って一服していた時に、葛西の電話に着信が入り、二人は五十鈴の訃報を知らされた。

「今日二人めの死者か……。やりきれんな」

 九木からくつろいだ表情が消え、コーヒーを飲むのを中断して言った。

「川崎さんは、確か先に夫を亡くされていたな」

「はい」

「彼女の夫は秋山珠江の遺体を発見した時に、遺体にたかっていた蟲に咬まれて発症したんだったね」

「はい。蟲に咬まれて発症した方からの感染ということになりますが」

「これでまた、不安要素が増えたわけだ。時に、君は川崎夫妻に会ったことがあるのかね?」

「僕はお会いしたことはありませんが、ギルフォード教授はお二人に会われたそうです。夫の死を知らされた時の奥さんの嘆きようは、気の毒で見ていられなかった……とか……」

 葛西は最後に少し声を詰まらせて言った。

「そうか……。ご主人も、奥さんには生きてもらいたかっただろうにな……。さて、ご夫妻の無念を晴らすためにも、もうひと踏ん張りするか」

 と言うと、九木が立ち上がった。葛西はそれに倣って立ち上がったが、少し不安そうに言った。

「それにしても、聞き込みを始めたばかりとはいえ、手がかりがなさすぎませんか?」

「だが、人のやることだ。絶対にどこかほころびがあるはずだ。現にアパートの管理人は、園山が宗教を何度か変えていたとか言ってただろう。蟻の穴から堤防が壊れることもある。とにかく蟻の穴を探そう」

「はい」

「まあ、なかなか『快刀乱麻を切る』とはいかないがね。警察の仕事とはこんなものさ」

 九木は少し自嘲的に笑うと歩き出した。葛西の脳裏に多美山の言葉がよぎった。

「ジュンペイ、刑事の仕事はな、地道の一言に尽きるったい」

 葛西は両手で自分の頬を叩いて気合を入れ、九木の後を追った。


 祐一が家に帰ると、香菜が庭にあるジョンの小屋の前に座っていた。ジョンは香菜に撫でられながら、気持ちよさそうに横になっていたが、祐一の姿を見つけると起き上がって嬉しそうに尻尾を振って「ウォン!」と吠えた。

「やあ、ジョン、ただいま。どうした、香菜?」

 祐一は妹と愛犬のそばに座り、ジョンの頭をなでると更に訊いた。

「お母さんは?」

「学校に呼び出された」

「え? なんで」

「あのね……」

 香菜はそこまでいうと口ごもった。

「どうした?」

「よくわかんない。お母さんは先に帰っときなさいって……」

「どうしたんだろう。で、香菜はどうしてここにいる? 鍵がないとか?」

「鍵はもらったよ。お兄ちゃん待っとったと」

「? ……まあいいや。はやく家の中に入ろう。もう蚊がおるやろ。刺されなかったか?」

「ジョンとこには虫除けがあるもん。でも、ここに来るまでにちょっと刺されたみたい」

 香菜は思い出したように腕を掻きながら言った。

「バカだな。薬つけてやるから、早く家に入ろう」

「香菜ね、ポケットかゆみ止め持っとおよ」

 香菜は、ランドセルを膝に置くと、中に入れているかゆみ止めを取ろうとした。祐一は、香菜がランドセルの中をごそごそしているのを何気なく見ていたが、ノートや教科書が薄汚れているような気がして訊ねた。

「あれ、香菜、教科書とか、なんか汚れとらん?」

 香菜は、焦ってランドセルを閉じて言った。

「ポケムナ、入れ忘れたみたい……」

「あのさ、ランドセル、留め金が壊れとおみたいやし、なんか形も少し歪んどらん?」

「ちょっと落としただけやけん……」

「なんだ、相変わらずドジやなあ」

「おにいちゃん、ひっどぉい」

「あはは、じゃあ、早くかゆみ止め塗らないといかんね。ジョン、またあとでな。さ、香菜、行くぞ」

 祐一は香菜を促して、一緒に家の中に入った。


「いじめ?」

 祐一は、母から聞いて愕然として言った。母は夕食の下ごしらえに牛蒡を削ぎながら答えた。

「そうなんよ。最近、香菜、元気なかったやろ? だから心配はしとったんやけど……」

「なんでまた……。まさか……」

「うん。祐一が気にするから言わんどこうかと思ったんやけど……」

「じゃあ、ランドセルや教科書が傷んどったとは……」

「誰かがゴミ捨て場に捨てたらしくて……」

「でも、学校では香菜は風邪をこじらせて休んだことになっとるんやろ?」

「それがね、どこからか本当の欠席理由が漏れたみたいなんよ」

「そんな……」

「香菜は負けないって言ってるけど、事の次第によってはしばらく休学させた方がいいのではないかって」

「そんなこと言われたと?」

「祐一は大丈夫なの?」

「オレには仲間がいるから、大丈夫だよ」

 と、祐一は少し誇らしげに言った。それを見て、母の暗い表情が少し明るくなった。

「そう、心強いね。でも、その子たちに迷惑かからんと?」

「大丈夫だよ。あいつら意外と根性あるから。特にヨシオと錦織って女子は」

「錦織さんって、あのかわいい子?」

「うん」

「へ~え……」

 母親が意味深な笑みを浮かべたので、祐一は急いで話を戻した。

「それより、もし、休学とかなったら、勉強どうなると?」

「長引くなら家庭教師を雇うとか、最悪転校も視野に入れておいてくれって……」

「なんだよ。体の良い厄介払いじゃないか!」

「お母さんもそう思ったっちゃけど、香菜のこと思ったらそれも仕方ないかなって……」

「香菜は? なんて言うとるん?」

「大丈夫って言ってくれとるんやけど……。祐一は先生から何か言われとらんね?」

「オレの学校は中学校長は頼りないけど、学校総長がしっかりとした人だから、大丈夫だよ。呼び出されたけど、成長するための試練だと思ってがんばれって逆に檄を飛ばされた。学校も最大限のフォローをするからって」

「そうね。それなら安心やけど……」

「香菜だって、ああ見えて芯が強いから大丈夫だよ」

「だったらいいけど……」

 そう言いながら母はため息をついたが、はっと気が付いて言った。

「どうしよう。牛蒡、削ぎ過ぎた~。洗い桶いっぱいになってしもーた」

「いいよ、オレ、きんぴらごぼう好きだし、余ったら明日食パンにはさんで食べるけん」

「きんぴら牛蒡サンド……。あんた、変なものが好きやけんねえ」

「美味しいんだってば」

 祐一は笑いながら言った。


 ギルフォードは玄関のドアを開けると美月に言った。

「お嬢様、ここが当面のお住まいにございます。むさくるしいですが、ご辛抱のほど」

 美月はお座りをしたまま、首をかしげてギルフォードを見た。

「あはは、ミツキ、そんな顔しないで。さあ、入ってクダサイ」

 ギルフォードは美月を連れて部屋に入ると、リードを外し居間の隅にしつらえた犬用ベッドを指して言った。

「居心地悪いでしょうから、ジュンに頼んでミハの部屋からあなたのベッドとトイレとおもちゃを持ってきてもらいました。寝るのはここで、トイレはこっちです。部屋の中は自由にしてていいですよ」

 美月はしばらく部屋の中の臭いをかぎながらうろうろしていたが、安心したように自分のベッドに行き、中で寝ころんだ。

”よかった.思った以上に落ち着いてくれたぞ.やはり雌だから性格が穏やかだな.まあ,どこかのお嬢さんの飼い犬は雌でもかなり狂暴だったが”

 ギルフォードがつぶやいた。

”たしかに,サヤの言うとおり寂しさは紛れるな.ジュリーもミツキとの同居は同意してくれたし……”

 それから日本語に戻って言った。

「あとはミハが戻ってくるだけですね」

 言葉がわかるのか、美葉と言う名を聞いて美月は悲しそうな顔でギルフォードを見た。

「ダイジョウブ,無事に戻ってきます.そんな顔しないで」

 ギルフォードが美月にそう話しかけた時、電話に着信が入った。

”ギルフォードだ.なんだ、クリス、どうした?”

 電話の主は、ジュリアスの兄、クリスだった。

”ジュリアスじゃなくて残念だったな”

”クサるなよ.しかし,早起きだな.そっちはまだ朝方だろ? 何かあったのか?”

”そうなんだ.やられたよ”

”何を?”

”先ほど情報があった.例のこっちに来ていた日本人感染者……えっと,カワベ=サンだったかな.彼が軍に持って行かれたらしい”

”なんだって!?”

”保護すると言う名目で,CBIRF(シーバーフ)がさっさと連れ去っただと”

”CBRIF? たった一人の感染者にすごいのを出してきたな”

”それだけ脅威ということだろう.なにせ既に20人以上殺している’殺人鬼’だからな.迅速に動ける海兵隊の実行部隊を出してきたんだろう.まあ,建前はカワベ=サンを日本へ安全で速やかに帰すためということらしいが”

”厄介なことになったが,CBIRFならあいつがいる”

”何年も会ってないだろ.宛てになるもんか.それに,今回の彼らの役割はパシリみたいなもんだ.おそらく,カワベ=サンが連れて行かれた先は……”

”ああ,多分フォート・デトリック(※)だ”

”上層部には『デス・ストーカー』野郎が返り咲いているらしい.あの時おまえをひどい目にあわそうとしたやつだ”

”さぞかし出世したんだろうな”

”大佐だと聞いたが”

”ふん! しかし,一抹の不安てやつが当たったな”

”うちの所長もカンカンさ.朝っぱらから政府(ホワイトハウス)に猛抗議を入れたらしいぞ”

”そりゃそうだろう.気の滅入る話だが俺にはどうしようもねえな.それでも,そういう情報は助かるよ.知らせてくれてありがとう”

”ところで,ジュリーとはしっかりと連絡取れているのか?”

”それが,時差とかお互いのスケジュールとかでなかなか繋がらなくてね”

 と、ギルフォードが少し気落ちした声で言った。

”それにおまえ,時々携帯電話の電源を入れ忘れているだろ? ジュリーがぼやいていたぞ”

”ジュリーだってそうだぞ”

”あはは,お互い様か.……そろそろラボに行く準備をしなきゃならんので、失礼するよ”

”ちょっと待ってくれ.肝心のウイルスはまだ見つからねぇのか?”

”せかせるな。砂漠に落ちたコインを探すようなものだってことくらい、知ってるだろ?”

”わかっている…….だけど……”

”じわじわ被害が広がっているのは知っている。だが、それを抑えるために君がいるんだろ? そもそもウイルスが発見されただけでは防ぐに至らん.ワクチンが出来るまではひたすら封じ込めるしかないぞ”

”ああ、わかっている”

”僕たちも必死で探している.いろいろと辛いだろうが,がんばってくれ”

”ありがとう”

”じゃな,良い子は早く寝ろよ!”

 そういうと、クリスは電話を切った。ギルフォードは時計を見てぼやいた。

”こんな時間に寝れるか,馬鹿”

 しかしギルフォードはその後電話をしまいながら、ふうっとため息をついてつぶやいた。

”だがな,クリス.ウイルス発見はそれだけでみんなの希望になるんだ……”

 ギルフォードは再び美月のそばに座ると、頭を撫で話しかけた。

「ミツキ、あまり聞きたくない名前が出てきました。僕は、またあのサソリ野郎に追われるのでしょうか……」

 美月はおもちゃのぬいぐるみにじゃれていたのをやめ、ギルフォードの方を見るとキュウンと鳴いて、彼の手をなめた。

「言っていることが判るんですかねえ。不思議な子です」

 ギルフォードがつぶやくと、美月は彼の前に座って右前足を彼の膝に乗せ、しっぽを振りながら軽く「ワン!」と吠えた。

「そうですね。今から不安になっても仕方ありませんよね。さて、テレビでも見ましょうか」

 と言うと、彼は不安を振り払うようにして立ち上がった。


 由利子は、家に帰るとすぐに夕刊を開いてみた。河部夫妻のことについては間に合わなかったようだが、朝の女子中学生自殺については、三面記事にしっかりと掲載されていた。ただし、サイキウイルス感染ではなかったために、普通の自殺事件として扱われていた。

 しかし、夜には各局のニュース番組がサイキウイルス感染による新たな死者のことと、河部夫妻の感染について伝えていた。特に河部夫妻については、夫が末期感染者の近くを通っただけで感染し、しかも妻に二次感染させたことがかなり脅威と捉えられたようだった。しかも、その夫は海外に出張しているという。ニュースでは、早々とNYの現地記者が通行人にインタビューしていた。


”え? なに、Psyche(サイキ)? ギリシャ神話の?”


”新手のコンピューターウイルス?”


”知らないわよ.ニュースにもなってないわ.じゃね,急ぐから”


”NYに出血熱? エイプリルフールはとっくに終わったよ”


”日本でそんなものが流行ってるなんて初耳だね.だいたいF県ってどこよ? え~,そこ? Okinawaじゃないの?”


 ほとんどの人がそういう感じだったので、由利子は却って驚いてしまった。しかも、F県の名を聞いて、けしからんフォーレターワーズを口にする輩すらいた(もちろん「F」以下はピー音で消されていたが)。アメリカ国民にはまだ日本のウイルス騒動についてはあまり知られていないのか、単に興味がないだけなのか。しかし、インタビューでは

”ああ、サイキウイルスについては知っているよ.大変だね.でも、この街に感染者が居たことは,まだニュースになってないなあ”

 と答える人もいたので、少なくとも、NYに危険なウイルスが入り込んだかもしれないということは、伝えられていないのだろう。

「何よ。辺境の田舎都市で悪かったわね」

 由利子は口を尖らし気味に言った。

「そりゃあ、地震や津波よりは地味だけどさ、それでも死者が20人以上出ているんだぞ」

 そう言いながら、由利子はパソコンを開き、ネットで掲示板やツイッターなどのチェックを始めた。もちろん検索するキーワードは、サイキウイルスである。


 一方、ギルフォードの方もテレビを見ながら若干の不安を感じていた。CBIRFまで出して大捕り物をやった割に、情報公開がされていない。だが、まだ時間があまりたっていないし、しかも、かつて炭疽菌テロのあった街なので、無用な恐怖をあおらないように、公表に慎重になっているのかもしれない、と、ギルフォードは思った。おそらく、公表は感染の有無がはっきりしてからになるのだろう。そう結論付けた時、由利子から着信が入った。

「はい。ギルフォ……」

「アレク、大変!」

 ギルフォードが返事を終えるのを待たずに由利子が言った。

「匿名掲示板やSNSがすごいことになってるよ! 今日亡くなった園山さんたちや、新たな感染者の河部夫妻ついての素性探しが始まってる!」

「なんですって?」

「サイキウイルスがSNSのトレンドに上がっている。テレビとかじゃあ、住所などは

言わなかったし、河部夫妻なんて名前も公表されなかったのに、ネットではどんどん情報が集まってきて……。しかも、根も葉もない尾ヒレまでつき始めているよ」

「みんな不安なんでしょう。感染者保護に不満を持っている人も多いでしょうし」

「でも、確かこの前の新型インフルエンザの時も、氏名や詳しい住所は伏せられてたよ」

「今回のウイルスは、感染力こそインフルエンザに到底及びませんが、感染した時の破壊力は凄まじいものがあります。あの新型は、いわゆるトリインフルではありませんでしたから、今回の不安度はあの時の比では無いでしょう。それが、あたかも犯人探しの時のような連携を生んだのかもしれません」

「もし、これが魔女狩りみたいなものに発展したら……」

「もしそうなったら恐ろしいことですが、今は住民の理性と秩序を信じるしかないでしょう」

「でも、初音ちゃんを保護しに行った時見た川崎さんの家の惨状を考えたら怖いよね」

「それは、周辺の警備を厳重に行うしかないでしょう。しかし、そうなったら警察の手だけではどうしようもなくなるかもしれません……」

「自衛隊? まさか米軍……」

「米軍は他国のこういう事件には介入できませんよ。彼らの宿敵であるアルカイダのような組織のテロだった場合は断言できませんが……」

「でも、自衛隊は出てくるかもしれないってこと?」

「彼らには独自のBCテロや生物災害に対応する部隊がありますから、そちらの方で頑張ってもらいうことになるでしょう。こちらのほうは、被害がこれ以上広った場合、知事が要請する可能性はあります」

「だんだん大事になってきたなあ。正直怖いよ」

「僕もです」

 二人は同時にため息をついた。


「葛西君も大変だなあ」

 電話を切ると、由利子はもう一度ため息をついて言った。その頃、葛西は対策本部で今日行った聞き込みの調書を書くのに四苦八苦していた。


 (「第3部 第4章 乱麻」 終わり)


  (※)アメリカ陸軍の医学研究所がある。


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