第二十九話 海賊
「終わったのね」
「アウル、帰りましょう」
ジェミーとアウルは戦艦ヴェルトムートへと戻っていく。
「ネスタ」
治療を受けているネスタの元にメストが訪ねてくる。
「終わったようだな。
これから更に大変になる」
「どこまでも共に歩もう」
「頼んだぞメスト」
戦いから一ヶ月が過ぎ、ハイド皇国とクルード帝国の終戦及び同盟の式典が開かれた。
「久々にアウルの姫らしい格好を見るな」
「姫様になんて口の聞き方だ!」
「いてっ!」
アルファの頭を殴るスヴァローグ。
「いいのよスヴァローグ。
久しぶりにドレスを着てなんだか落ち着かないわ」
「とても似合ってるわよ」
「ありがとうレベッカ」
「姫様、そろそろ」
眼帯をしたスヴェルがドアを開ける。
「分かりました」
「スヴェル将軍」
「レベッカ、次は負けないからな」
辛そうな表情を浮かべるレベッカに笑みを向けるスヴェル。
「はい!」
「じゃあ俺達も行くか」
アウル達は式典の会場に向かう。
「両国は長きに渡り戦いを続けてきた。
憎しみを重ね多くの命が失われてしまった。
我々は困難な道から逃げ、武力という安易な物に頼ってしまったのだ。
だが、この日をもって逃げるのをやめる!
かつての敵であった者を友と呼ぶのは難しい。
しかし、我々は失う痛みを知り奪う怖さを知っている!
だからこそ困難な道でも進んで行けると私は思う。
只今をもって、終戦と同盟を結ぶ事をここに宣言する!」
ネスタの言葉に会場から大きな歓声があがる。
「(これで世界は変わる。
これで…!?)」
会場内を見渡していたアウルの目にラウドの姿が飛び込んできた。
「姫様?」
「いない…ごめんなさい。
見間違いよね…」
式典は無事に終わり世界が変わりだし、それから一年が過ぎる。
「こちら異常なし」
「小さないざこざも無くなってきたんだし、兵器の開発なんていらねんじゃねぇか?」
「念のためだ。
それに開発なんてこの月面基地でしかしてないんだから、気にする必要ないだろ」
「はぁ…早く地球に帰りてぇなぁ」
「そんな事言ってるとアンノウンみたいなのが現れるぞ!」
「現れたら俺がぶっ潰してやるよ」
その時、二人のコックピットに警報がなる。
「嘘だろ!?」
「なんだあれ…」
「でかい…ドクロの旗。
海賊!?」
二人の頭上に巨大な海賊船が姿を現した。