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【第一章:灰色の世界と紫煙の誓い】
西暦20XX年。世界は変わった。
健康増進法の極限的拡張と全球的な大気汚染予防条約の締結により、地球上から「煙草」という概念そのものが抹消された。喫煙は国家叛逆罪。煙をくゆらせる行為は、即座に特殊取締部隊によって鎮圧される。
世界は清浄で、息苦しく、どこまでも退屈だった。
「……また禁煙外来のCMか。くだらねえ」
街角の巨大ビジョンを見上げる青年、タツミはフードを深くかぶり直した。
彼のポケットの奥深くには、いまや世界で最も危険とされる秘宝が眠っている。
赤と白の紙箱——『ラッキーストライク』。
その中に整然と並ぶ、白く細い20本の巻紙。
そう、全世界が禁煙を強制されたこの時代に、ほんのわずか——世界で100人にも満たない「選ばれし者たち」が存在した。
彼らは遺伝子の突発的変異により、通常なら有害とされるニコチンを体内に取り込むことで、細胞が爆発的に活性化する特殊体質を持ち合わせていた。
彼らの名は——《ニコティニア》。
「待ってろよ、支配者ども。俺が最後の1本を吸い終える前に……この腐った世界に火をつけてやる」




