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第001話〈異世界へのチート転移?〉

いつも通りの帰り道。いつも通りの日常。何もなく終わり、何もなくまた始まっていく。


「はぁ……」


俺は夜異(やこと) (しゅう)、小説、漫画、アニメ全般が大好きなどこにでもいるごく普通の高校生だ。


好きな作品は自分の傍に立つ悪霊で殴りあうやつや吸血鬼とナチスが戦うやつ、あとは奈落の底で待つお母さんを探して大穴へもぐるやつとか里の忍者で狐の少年が里のトップになりたいやつ。


気になった人はぜひ調べてみてくれ、おもしろいぞ。


友達がたくさんできたり、もしかしたら彼女も作れたりしないかなと期待しながら高校に入ったが、結局1年以上経ってもボッチ陰キャのまま、このまま、何者にもなれずに終わっていくのだろうか。


まぁ一応友達がいなかったわけでもない、特に八坂春樹ってやつとは親友で毎週遊んでる。


別に不満があるわけではない。


ただただ、退屈だった。


「何か変わらないかな。もっと刺激があるような日々に。」


ピロン


どこからか音が聞こえる。スマホの通知と似ているが、それは異質だった。 スマホのスピーカーからではなく、直接、脳の奥深くで鳴ったような……


「え……?」


慌ててポケットからスマホを取り出すと、画面にはノイズが走っていた。 バグかウイルスかと思った瞬間、画面の中央に、見慣れない文字列が浮かび上がる。


——————————

恭喜


你被选中成为穿越者

——————————


「……は? 漢字?」


(このフォントの方式……中国語だろうか。なぜ俺のスマホに?)


消そうとして画面をスワイプするが、全く反応しない。電源ボタンを長押ししても、画面は変わらない。


それどころか、スマホが異常なほどの熱を持ち始めた。


熱い、掌が焼けるようだ。


思わず放り出そうとした瞬間、焦りで手元が狂い、画面の文字を強くタップしてしまった。


ドクン!!


画面の文字が弾け、新たな文字列が表示される。


———————

已确认


开始穿越

———————


頭の中で、男とも女ともつかない、酷く無機質な声がカウントダウンを始めた。


【3.2.1……】


(いや、なんで中国語なんだよ……!)


そんなツッコミを入れる猶予すら与えられない。 カウントが「0」になった瞬間、世界のすべてが、真っ暗になった。



***



「う……なんだ、ここは!?」


再び目を覚ますと、そこは不気味な洋館のような空間だった。整備されておらず、長らく人がいなかったのだろう。


「おいおい、冗談だろ?まさか、異世界召喚って(いつもの)やつか?」


自分の体を確認する。幸いどこにも異常はなく、荷物もそのままだ。


「家族と会えなくなるのは寂しいが、これからは相当わくわくできそうだ!」


未来へ胸を躍らせ、張り切って周辺の探索を行う。


(こういうのはチートが転がっていると相場が決まっているのだ。)


「ん?なんだこれは?」


怪しげな注射を見つけた。内部には怪しげな赤黒い液体。しかもうごめいている。


「うえ……。他には何かないのか?」


とりあえず重要アイテムではありそうなので、鞄に入れ、探索を続ける。


その後、ステータスオープンやら鑑定やらを試してみるが、どれも反応はしなかった。


「本当にステータスとかないのか? 鑑定とかは? せめてチュートリアルとかさぁ……」


廊下を進むにつれ、鼻を突く血の匂いや腐臭がしてきた。 足元を見れば、じっとりと濡れた黒い染み。


壁には何かが激しく暴れたような巨大な爪痕。


「お、おい、転移早々ヤバい化け物に襲われたりしないよな……」


その時、曲がり角の先から「グチャ、グチャ」と、肉を咀嚼(そしゃく)する(おぞ)ましい音が響いた。


心臓が跳ね上がる。 恐る恐る角から覗き込んだ柊の目に映ったのは、正気度を激しく削る「異形」だった。


(ひぃ……!)


表皮が腐ったような巨大で人型の怪物。腹からは内臓が漏れ、二本の腕は異様なまでに長い。


フィクションで見るようなかわいいファンタジーなおではない。これは、本物の怪物だ。


柊はとっさに逃げようとするが、踏んだ床板がギシリと物音を立てる。


それに気付き、怪物がぎょろりと目を柊に向ける。その目には濁り、殺意がこもった視線が柊を射貫く。


怪物の裂けた口からどす黒いヨダレが垂れる。


「GUUWWWAAAAAAA!!!」


怪物はうなりを上げる。


「う、うわぁぁぁぁ!」


柊はそれにビビッて柊は腰をぬかし、這うようにして逃げる。


凄まじい足音を立て、怪物が突進してくる。


「いや、嫌だ! 来るな、誰か助けてくれよぉッ!!」


柊は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、全速力で逃げ出す。


しかし、17歳の普通の高校生の足が、飢えた怪物に敵うはずがない。


背後に迫る死の気配。背中に向けられた爪が、柊の背中を切り裂いた。


「ごはっ!?」


衝撃で床を転がり、壁に背中を打ち付ける。 目の前には、鋭い牙を剥き出しにして飛びかかってくる化け物の姿。


(死ぬ――俺、何者にもなれないまま、ここで食われて死ぬんだ……)


転移の喜びはとうに消え失せていた。


その瞬間、脳内に無機質な声が響く。転移前と同じ声。


【安装完成,开始重置语言。言語を日本語へ再設定しました。】


「な!なんだ!?まさかチートがやっと来たのか!?」


だが、怪物はそんなことを気にせず柊へ攻撃を繰り返す。


それをすんでのところでかわすと、脳内で再び声が響き、目の前に半透明画面が表示される。


【チュートリアルを開始します。】

————————————————

チュートリアル任務:眼前の怪物を殺害せよ


報酬:ガチャチケット1枚 システムポイント200


失敗ペナルティ:死亡


制限時間:5分

————————————————


「はぁ!?ふざけるな!武器もなしにどうやってこんなものと!」


逃走を選択できないことに絶望する間もなく、怪物の腕が再び振り下ろさる。今度は柊の胸に深い傷を付けた。


「ぐあぁ!だ、だめだ!やっぱりしぬんだぁ!」


————————————————

宿主の危険を察知。

チュートリアルにつき特別に鑑定を発動します。


対象:内容物が不明の注射器


鑑定結果:異種吸血鬼の細胞。使用することで進化に特化した異種吸血鬼へ変異可能。

————————————————


「な、あれを使えっていうのかよ!」


しかし、もはや使う以外の選択肢は無かった。


「ええい!一か八かだ!」


バッグからあの注射器を取り出し、自身の腕に内容物を注入する。


「ぶッ、ぐえぇぇぇあ!」


激しい吐き気が込みあがり、眼前には怪物が迫る。


本能的に転げ、攻撃を回避する。


しかし、吐き気は止まず、今度は全身から激痛が走る。


心臓が爆発しそうなほど跳ね上がり、全身の血管が黒く浮き出る。


「ぐああああああああ!」


痛みによって表情がゆがみ、再び目を開けたとき、すべてが変わって見えた。


怪物の攻撃はスローモーションのようにゆっくりで、全身に力がみなぎる。今ならやれる。


「この野郎ッよくも!」


怪物へ急接近し、こぶしを内臓が露出した怪物の腹へ叩き込む。


「GISYYYAAAA!!」


怪物は痛みからかのけぞるが、口を開き、柊へ噛みつく。


「ふんッ!」


右腕で咄嗟(とっさ)にそれを防ぐが、そのまま噛み砕かれる。


「痛ってぇえええ!」


右腕が租借(そしゃく)され、怪物に飲み込まれる。


「お前ぇ……よくも、よくもよくもよくもォ!」


怒りと、全身の細胞が沸騰するような飢餓感が柊の理性を焼き切った。


残った左拳を固め、怪物の顔面へ向けてありったけの力で振り下ろす。


べチャリと肉が爆ぜる嫌な音が響いく。


吸血鬼の怪力は、怪物の鼻梁(びりょう)を容易くへし折り、眼球を眼窩(がんか)の奥へと押し潰す。


怪物は狂ったように四肢をバタつかせ、柊の体を肉ごと引き裂こうと爪を立てるが、柊はそれを物ともせず攻撃を繰り返す。


痛覚が麻痺しているわけではない。激痛はある。だが、それを上回る『殺意(漆黒の意思)』が体を動かしていた。


「死ね! 死ねよおぉぉッ!!」


マウントポジションのまま、左拳を叩き込み続ける。 二発、三発と殴るたびに、頭蓋骨がパキパキと不快な音を立てて砕け、中からドロドロとした脳漿(のうしょう)と赤黒い血が四方に飛び散った。


柊の顔面は、怪物の生温かい返り血で完全に染まる。


相手の抵抗が完全に無くなり、その頭部が床にこびりつく『ただの肉塊の山』に変貌しても、柊は拳を止めなかった。


その拳はすでに原型を留めていない腐肉のスープを虚しく殴り続ける。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」


ようやく動きを止めた柊の口内には、飛び散った怪物の血が数滴、紛れ込んでいた。


酷く鉄臭く、生ゴミのような悪臭。


しかし、変異した柊の喉は、その呪わしい液体を「もっと欲しい」と激しく渇望し、無意識にゴクリと飲み干してしまっていた。


自身の異常性に気づいた時、柊の双眸(そうぼう)は、以前の黒ではなく、底の知れない怪物の深紅へと変色していた。


視線を落とせば、さきほど噛み千切られた右腕の断面から、生き物のように(うごめ)く無数の赤い肉繊維と神経がゆっくりと生え、失われた肉と骨を再構築し始めているところだった。


【任務が完了しました。報酬を授与します。】


画面が現れ、そこにガチャチケットであろう物が表示される。そして、画面の右上にある数字が0から200へ変化した。


【チケットを消費してガチャを回しますか?】


「はい、だ。」


柊は額に浮かぶ汗をぬぐい、それに返答する。


【ガチャを実行……結果:[Fランク]『装填されたデザートイーグル』を取得しました。】


画面に銀色の大型自動拳銃、デザートイーグルが表示され、へ手を伸ばすと、デザートイーグルは画面の平面から立体物となって飛び出し、柊の手に収まる。


「デザートイーグル……弾をみるにこれは50AE弾、そして装弾数は7発、薬室(チャンバー)の1発と合わせても8発か、無駄にはできないな。」


右腕はすでに再生が始まっており、あと数分もすれば完全に治るだろう。


「システムってよべばいいのか?これは。俺のステータス画面とか出せるか?」


【了解しました。】

————————————————

【使用者ステータス】

宿主:夜異 柊

年齢:17

種族:人間→吸血鬼(黎血種)

身体:168cm→171cm

体重:59kg

ポイント:200

魔術属性:無し


【基本能力】

体力:28.3/30(10+20吸血鬼補正)

魔力:12.4/30(15+15吸血鬼補正)

精神力:11.8/15(パニック状態により低下中)


筋力:25(10+15吸血鬼補正)

速度:30(10+20吸血鬼補正)

防御力:20(10+10吸血鬼補正)


【状態】

瘴気汚染度:2.8% (安全状態)

吸血鬼融合率:5.0% (アンファンス)

興奮状態Ⅱ 残り2分42秒


【所持】

デザートイーグル 残弾8/7+1

学校の制服ブレザー(損傷)

スマホ

バリバリする財布

日本円 1145円


【スキル】

・再生Ⅲ

魔力を消費することで再生速度が大幅に上昇。

失った四肢や臓器を再生させることも可能。


・視力強化Ⅱ

受ける攻撃が半分の速度に見える。

暗闇や簡単な阻害を見通せる。


・日光弱点Ⅰ

日光にさらされている場合、

毎秒0.1ダメージを受ける。


・聖属性弱点Ⅰ

聖属性から受けるダメージは1.5倍になる。


・陽属性弱点Ⅰ

陽属性から受けるダメージは1.5倍になる。

————————————————


「やっと少しはチート転生者っぽくなったな、吸血鬼になったせいでだいぶ弱点が増えたが……ていうか魔術適正無しかよ……」


柊はわずかに余裕を取り戻す。


「ところで、この瘴気汚染度と吸血鬼融合率ってのは?なんかやばそうなんだが。」


画面がステータスから切り替わる。


————————————————

・瘴気汚染度

瘴気にどれほど侵されているかの数値

進めば進むほど精神力が低下し、最終的には発狂します。


注意:瘴気が高濃度の環境下では体によきせぬ変異が発生する可能性があります。


・吸血鬼融合率

肉体がどれほど吸血鬼と一体化しているかの数値

進めば進むほどステータスが上昇し、様々な効果が得られます。

20%ごとに段階が上昇し、スキルが解放できます。

現在は最下段階のアンファンスです。

————————————————


「まじか、瘴気とかあるのかよ……融合率のほうはいいとして、どうにかする手段を見つけないとな……」


やっと上がってきた気分が再び落ち込む。


「んで、この黎血種というのはどういうことだ?」


————————————————

・吸血鬼(黎血種)

進化することに重点を置いた吸血鬼の変異種。

段階の上昇は黎血種の固有能力です。

最上位段階まで到達すれば、神に等しい力を獲得できます。

————————————————


「ありがたいことこの上ないぜ。上限が高いっていうのはいいことだ。」


ここがどこなのかを理解するために、柊は前へ進む。

第一話なんでね、長くなってもうた。

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