5話「魔王様と伝説のスナイパー?」【後編】
魔王は肩に『魔王銃マーク13』を無造作に担ぎ、不敵な笑みを湛えながらスナ・イパーへと歩み寄った。
「さて、貴様の実力とやらを見せてもらおうか。さあ、どこからでも掛かってくるが良い」
「ほう、その余裕……後悔させてくれるわ!」
スナ・イパーが叫ぶ。
同時に、彼が構える『魔王銃マーク12』の銃身が怪しく光り、数多の魔力弾が猛然と放たれた。
だが、魔王は避ける素振りすら見せない。
それどころか、目一つ動かさずその場に立ち尽くしていた。
直撃――。
誰もがそう確信した瞬間、放たれた銃弾の嵐は、まるで目に見えない壁に弾かれるように不自然に軌道を曲げ、魔王の体をかすめることすらなく背後へと通り過ぎていった。
「なんだ? 伝説のスナイパーとやらの実力は、その程度か?」
「……なっ!? 貴様、何をした!?」
驚愕に目を見開いたスナ・イパーが、狂ったように引き金を引き続ける。
だが、結果は同じだった。全ての弾丸は、まるで魔王を嫌っているかのように彼を避け、城の壁を虚しく削るのみ。
(やはり、本物のマーク12だな……)
魔王は冷ややかに分析していた。
(アレには俺様の魔力を登録してある。製作者である俺様に当たるはずがないのだ。むしろエリザベスに任せていたら危なかった。……アレには『俺様の魔力を倍化する』という機能もついているからな。下手をすればエリザベスは⋯⋯)
「さて、そろそろ飽きたな。……散れ」
魔王が気怠げにマーク13の銃口を向けた。
スナ・イパーを狙っているとは思えないほど、適当な構え。放たれた乱射は、あさっての方向へと飛んでいく。
「バカめ! どこを狙っている!」
「……フッ。バカはお前だ」
魔王が指を鳴らした瞬間。
壁に当たった銃弾が鋭角に跳ね返り、意志を持っているかのようにスナ・イパーへと収束した。
「あり得ない……ッ!?」
全弾命中。
伝説の狙撃手は叫び声を上げる暇もなく、衝撃で吹き飛んで動かなくなった。
その鮮やかな――それでいて奇妙な手際に、エリザベスは琥珀色の瞳を輝かせる。
「あれ……魔王様。今の、凄い技術じゃないですか! ちゃんと魔王っぽいですよ!」
倒れたスナ・イパーの元へ歩み寄り、愛銃マーク12を回収した魔王が、照れ隠しのように鼻を鳴らした。
「あ、ああ。アレか? 驚くほどのことではない。マーク13には『マーク12を持っている者を自動追尾する』という機能が付いていてな。要するに、盗まれた時のための防犯機能だ」
「……」
エリザベスの瞳から、急速に輝きが失われていった。




