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4話「魔王様と伝説のスナイパー?」【前編】

魔王の威厳はどこへやら。

今、魔王は四つん這いになってガサガサと物陰を漁っていた。

埃にまみれ、なりふり構わず這い回るその背中を、白猫のエリザベスは魂が抜けたような目で見守っている。


「エリザベス……アレが見つからんのだ。お主、どこへやったか知らんか?」

「……魔王様。そんな事より、私達、前話であれほど格好良く扉から外へ踏み出しましたよね? 私はてっきり物語が大きく動くものだとばかり思っていましたよ」


ガサガサ、ガサガサ。

魔王は猫の切実な訴えなど耳に入っていない様子で、埃を舞い上げながら玉座の裏にあるタンスの奥深くへと頭を突っ込んでいる。


「はいはい、無視ですね。……ところで、その『アレ』とは一体何なんです?」

「アレだよアレ! うーむ、昔作った『魔王銃まおうじゅうマーク12』が見当たらんのだ。おかしいな、予備のパンツの横に置いたはずなのだが……」

「知りませんよ。というか魔王様。銃を携えた魔王なんて、聞いたことがありません」

「何を言う。魔王たるもの、銃を構えていなければ格好がつかんだろう?」


魔王は「よいしょ」と顔を上げると、手近なガラクタの山から一丁の無骨な銃を引っ張り出した。


「ふむ。見つからないなら、この『魔王銃マーク13』だけでもいいか」

「……あるんじゃないですか! だったらそれで十分でしょう、さっさと行きましょうよ」

「甘いな、エリザベス。男なら……いや魔王なら、二丁拳銃で決めたいのが道理だろうが」

「そのこだわり、今いります?」

「……まあ、無いものは仕方ないか。マーク13と対になるマーク12は超高級素材の塊だからな。伝説の金属オリハルコンに、先代の角、さらに希少な魔獣の涙……。金目の物を根こそぎ持っていかれた今の魔王城では、逆立ちしても新造は無理だ」


魔王はちり紙で銃身を拭きながら、未練がましく溜息をついた。

エリザベスは呆れ果てて溜息を返すと、しっぽで扉を指した。


「納得したならもう行きましょう。ぶっちゃけもう4話なのに、未だに魔王城から一歩も出てないんですから」

「わかっている、わかっている。では、今度こそ――」


魔王が重い腰を上げ、再び「それっぽい」威厳ある顔を作った、その時。

背後の重厚な扉が、凄まじい轟音と共に蹴破られた。


「見つけたぞ、魔王ッ!! この伝説のスナイパー、スナ・イパーが来たからには、貴様の悪事もろとも撃ち抜いてくれるわ!」


逆光の中に立つ影。

伝説の狙撃手スナ・イパーは、テンガロンハットの縁を指で押し上げ、鋭い銃口を魔王へと向けた。

猫は深いため息を吐き、「ほら来た」と言わんばかりの冷ややかな視線を主人に送る。

しかし、魔王は猫の様子など気にも留めず、不敵な笑みを浮かべて高笑いを上げた。


「フハハハ! よくぞ俺様の元まで辿り着いたと褒めてやろう。だが! 相手が欲しくば、まずは俺様の部下を倒してからにするのだな!」


猫は「また私ですか……」と、諦めに満ちた顔で、のろのろとスナ・イパーの方へ歩き出した。


「待て! エリザベス。気が変わった。……俺様が相手をしてやろう」


猫は足を止め、振り返って魔王の顔を見た。

その表情は、先ほどまでのふざけた様子とは打って変わって、酷く神妙なものである。


「急にどうしたんですか? 魔王様、変な物でも食べました?」


魔王は、スナ・イパーが構える銃を凝視したまま、絞り出すような声で呟いた。


「……あの銃は、マーク12……」


エリザベスに聞こえたのは、それだけだった。

魔王は不敵な笑みを浮かべ、スナ・イパーに向けて歩き出す。


「待たせたな。貴様は俺様が直々に葬ってやろう」


そう言って魔王は、手元のマーク13を構える。


「ほう。魔王も銃を使うのか。だが、よりにもよってこの私に銃で挑むとは愚かなり! 私は『銃が好きそうな人ランキング』第1位! 『銃と一緒に寝てそうな人ランキング』第1位! 『恋人にはしたくないガンマンランキング』第1位! そう、私は数々のタイトルを総なめにした男なのだよ!」


その堂々たる宣言に、猫は引き気味に呟く。


「……魔王様。こいつ、今までの奴らとは比べものにならない程ヤバそうです(頭が)」

しかし、魔王は本気で感銘を受けた様子で目を輝かせていた。

「タイトルを総なめ……羨ましい……ッ!」


猫は青ざめた表情で(こいつもダメだ……)と天を仰いだ。


(後編へ続く)


「えっ! これ続くの?」

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