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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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新婚旅行の場合 16

 指定された時間に迎えに来たネビロスは、ダンタリオンに抱きかかえられて現れたケビンを見て、何があったのかと(いぶか)しんだ。ダンタリオンはケビンの額にキスをすると親密な様子で何かを耳元で囁いていた。


「ではまた、いつでもお待ちしていますよ」


 ダンタリオンはケビンを自らの手で運び入れると頭を撫でる。ルイが笑いを堪えるような表情をしているのを見てネビロスはおおよそ何が起こったのかは想像がついた。ダンタリオンがケビンを気に入るとは少し意外な気もしたが、悪魔の好みはそれぞれだ。研究熱心なダンタリオンがケビンの魔力に興味を示したのかもしれない、と思いながらネビロスは見送るダンタリオンに会釈をした。

 ケビンは相変わらず腑抜けの状態でだらしなくルイにもたれかかっていた。


「ケビン、僕の唾液の成分で慣れたと思ったのに、それよりも強力だったってこと?」


 ルイはどこか不服そうに言ってだらりとしたままのケビンの手を持ち上げた。


「ほんとに力入らないんだ…すごいね。キスされて…どんな感じだった?」


「…どんなって……説明すんのは…無理だよ…キスされてみたら分かる…」


「それじゃあ分かんないよ」


 ルイとケビンの会話を聞きながらシエルは密かに笑っていたが、ルイの顔を見て少し説明を加えた。


「ダンタリオンは普段は穏やかで、いくら学生が魅惑の魔力を使おうともさらりと余裕で(かわ)す悪魔だが、狙った獲物は逃さないことでも有名なんだよ。ただ滅多に狙いを定めることはしないからその力に気付くものも少ないが、この先ケビンを陥落させるためなら恐らく手段を選ばない…ダンタリオンも少々変わっているからね。病で妻を亡くしてからは一切誰にも興味を持たなくて、彼も病ではないかと噂されていたくらいなんだ。そうではないと分かって私は少し安心したよ…」


「…シエル…もしかして、ケビンで試したの?」


 傍らのリツの言葉にシエルは僅かに目を見開いた。


「おや、私はそこまで入念に計画していた訳ではないよ。ただ…興味を持てばいい…くらいには思っていた。予想以上に気に入ってしまったようだけどね。ケビン…ひょっとすると君は自分の計画の順番を変える必要が出てくるかもしれない。そのくらいには珍しく燃えているダンタリオンを見た…とだけは教えておこう」


「え…それ…本気で言ってます?俺…襲われるってことですか!?」


 ケビンは何とも情けない表情をした。


「襲う?彼は紳士だ。君が納得しない限りはそんな暴挙には出ないよ。ただ…夜毎夢に現れて口説くくらいのことはするに違いないけれどね。マーキングされたんだ。あの手この手で君が頷くまで誘惑するに違いないさ」


 シエルはそう言いながらリツを見る。リツの顎に触れたシエルは微笑んで唇を重ねた。


「ケビンの魅力のお陰でリツから彼の視線を逸らすことができて助かったよ。ダンタリオンは誰の妻であろうが、気に入れば己のものにする悪魔だ。魅力的な魂は悪魔を引き付ける。今回はケビンの魂とその変わった魔力がダンタリオンの欲望に火をつけたのだろうな。彼の亡妻も、女には絶対にならないと豪語していたが彼の手によって呆気なく手折られたんだ。果たしてケビンは、どこまで耐えられるかな?」


「結局俺は…生贄(スケープゴート)かよ…あぁ…でも、耐えられるかどうかって聞かれたら…自信なくなってきたな…ダンタリオンとストラスって…どっちが強いんだ?」


 ケビンの質問にシエルは笑って首を横に振った。


「…強さの本質が違うから、何とも言えないな。ストラスは戦闘能力もかなり高いし頭脳戦もそれなりに強い。ダンタリオンは戦闘能力はそこまで強くはないが頭脳戦はとてつもなく強い…」


「…ケビン、今ひょっとして女の子になってもいいかな?とか考えてる?軽々しく結論は出さない方がいいと思うよ?そりゃ、ダンタリオン先生は魅力的だけど、僕だってこうなることを決めるまでには色々考えたからね?」


 珍しくルイはケビンを思い留まらせようとしているようだった。ケビンはルイを見てニヤリと笑った。


「あ、バレた?だってもう何ヶ月かしたらルイだって妊娠する予定だろ?それなら今俺が先に女になって妊娠してた方が、ルイの出産を待つ間も退屈しないかな、なんて思ったりね…リツと妊婦仲間になって女子トークすんのもアリかなって。俺は長い間生きてきたけどさすがにそんな経験は一度もないからな」


「退屈…って、そんな理由でケビンはアッサリと女の子になるつもりなの!?」


 ルイは信じられないと言わんばかりに、声を張り上げる。リツもケビンの思考に思わず驚いてしまった。動じないのはシエルのみだった。


「悪魔は退屈を嫌うからな…ケビンの思考も分からなくはない。ま、選択はケビンに任せるよ。仮にダンタリオンとの間に子が出来たとしても、彼はその子を悪用したりはしないから安心するといい。彼と亡妻との間には残念ながら子はいないんだ。魔力の相性が良くなかったのか…だから彼はケビンを抱きしめてまずは相性を確認したんだろうな。彼も子どもが欲しいことには違いない。ましてや…私がリツを見つけてしまったからな…」


「えっ?それは…どういうこと?」


 リツの言葉にシエルは少し気まずそうな表情を浮かべた。


「彼は…天使がどうしても見つからなかった場合には…自分が私の子を産んでもいい…そう申し出てくれたことがあった…過去に一度きりだが…私は冗談でもそんなことは言うなと言って聞き流してしまったのだが…そのくらいダンタリオンは子どもが欲しかったのだろうなと…今日の彼を見ていて思ったんだよ…」


「そう…なんだ…」


 リツは複雑な思いのままケビンの方を見る。ケビンはますます困った顔をした。


「うわー俺が…そういう話に弱いのを知っててわざと言ってる…?外堀から埋めないでくれよ…切ないじゃん…」


「そういう話なら、僕はもうケビンを止めないよ?ダンタリオン先生なら優しくしてくれそうだし、ケビンを引っ張ったり丸めたりしていた先生よりは、僕もダンタリオン先生をお勧めするなぁ」


「ルイ!?お前、もしかして…」


「ん?ケビン、あの先生にも言い寄られていたでしょ?聞こえてないとでも思ってたの?」


 ルイがニヤニヤ笑う。


「おや、そうだったのか。彼は巨大な悪魔だからな。いくらケビンの伸びが良くても無事に済むかは保証しかねるな」


 シエルの言葉にケビンは盛大なため息をついた。


「ケビンってば、魔界に来てモテ期到来だね。思ってたのとはちょっと違ったかもしれないけどさ」


「ほんとだよ、なんで俺はそこそこイケメンなのにお姉さま方じゃなくて男の悪魔にばっかり口説かれてんだよ!」


 ケビンの情けない声に、ルイはクスクスと笑った。

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