96話
あれから少女への聞き取りを暫く行ったが、やっぱり新しい情報は何も出てこなかった。勿論何かを知っていて隠している可能性が無いわけじゃないが………仮にそうだとして、拷問して何かを吐かせるなんてしようものなら後が怖い。俺としては出来るだけ避けたい手法でもあるし。
「本当に大丈夫なんだろうね?この寮で預かるなんて」
「ま、だからわざわざ部屋まで移されたんだろ。何かあったら俺の責任だからな」
ある程度やることが片付いた後には夕方近くになっていた。俺とエリーは荷物を移動させた新しい俺の部屋でソファーに座って今日あったことを振り返る。
話していた様子だと、あの少女は俺の従者だという立場になっているらしい。だからあの少女の全責任は俺が持つという事にして、特別に寮に少女の部屋を用意してもらった。
ただし、俺と少女の部屋は他の部屋から離された場所に移されているが。理由は察せるだろうけど。
「………変に牢屋や別の所にいさせるよりは、君がすぐ近くで監視できるところにいた方が結果的には安全なのかもしれないけど」
「まぁな。ただまぁ、あいつも言ってしまえば被害者だろ。必要以上に邪険に扱う必要がないと思ったのが主な理由だよ」
「被害者、ね。それについては否定しないけど、だからと言って君が責任を負う必要があるのかい?」
「誰かが負ってやらなきゃいけないだろ。多分あいつを目覚めさせたのは俺だし、【覇雷】の件もある」
どちらにせよ、放っておくという選択肢が一番有り得ない訳だ。それに、恐らくあいつは大丈夫だろうという感じがする。ただの勘でしかないけどさ。
そして、俺は暫く彼女の監視と世話をするために先生から暫く休みを言い渡されていた。とは言っても、課題は貰ってるが。父さんに紹介しに行っても良いけど………これ以上悩ませたくないんだよな。絶対もう話は聞いてるだろうけど。
「で?」
「ん?「で?」ってなんだ?」
「………あの子の名前、どうするんだい?」
「あー………どうするか」
名前を聞いた時、あいつは自分の事を11号だと名乗った。少女は自分の事をそれ以外に定義できず、他の事はマスターに従う事と、戦うこと以外は分からないと言っていた。
けどまぁ、人に対して11号と呼ぶのは流石にあんまりだろう。厳密には純粋な人じゃなくても、元々は人だったのは間違いねぇし。
「………どうするか」
が、急に名前と言われてもな。何も思いつかなくて同じ言葉を繰り返す。フェリスの時はフェニックスという響きから取って名前を付けれたが、今回の相手は人だしな。
敢えて参考にできそうなのは11号だが………11号?なんにもイメージが湧かないぞ。
「なんて呼べばいいと思う?」
「それを僕に聞かれても」
「おい投げるなよ!!お前つい最近俺の隣で背負ってくれるって言ったじゃん!」
「それは彼女の問題で、君自身が何か抱えてるって訳じゃないだろう?」
………それを言われると何にも返せないんだが。仕方なくまた1人で考え込むがやっぱりこれと言って思い付かず…………名付けって難しくね?なんて今更なことを考えていた。
その時、俺の部屋の扉がノックされる。
「ご主人ー?いるー?」
「あぁフェリスか。入っていいぞ」
「はーい。あ、エリシアも一緒だったんだ」
「まぁな。ところで、あいつのこと聞いたか?」
俺の質問に対して、フェリスは一瞬だけ何の事かといった表情を浮かべたが、すぐに心当たりがあったのか納得の表情に変わった。
「あ、うん。それなら聞いたよ。でもご主人様が部屋を移すなら私もこっちに移動させて良かったのに」
「あの少女が特別なだけで、男と女でフロアを分けてるのは説明したよな?」
「フェニックスを人間と同じ女の子扱いするのってどうなのかなぁ…………?」
「外見は可愛らしい女の子なんだから仕方ないだろ」
「………えっ!?ご主人さまは私が可愛いの!?」
「あーうん可愛い可愛い」
主にペットとしてだが。…………いや待て、これ下手したら語弊が生まれるな。普通にフェニックスという鳥をペットとして考えたら愛嬌はあるというだけだ。勘違いはしないで貰いたい。
「うわぁ…………!エリシアが言ってたこと、今なら分かるかも!!」
「なんでだよ」
「おや、ようやく主の悪い男ぶりが分かったかい?」
「うん!ご主人さまは悪い男なんだね!」
「いやだからなんでだよ。そこで通じ合うなって」
「悪い男なんだね!」じゃねぇんだよ。聞いたことねぇよそんなセリフ…………とまぁ、話が少し脱線したが。
茶番が一段落着いたところで、フェリスにも一応今の悩みを伝える。正直この件で戦力になるとは思ってないが、仲間外れは良くないし。
「名前かぁ…………大変そうだね」
「まぁな」
他人事のように呟くフェリス。いやまぁ、他人事なのは当然なんだろうけど。
そうだなぁ………名前……名前…………11……か。
「イレーナ………とか?」
「………ふむ。良い名前なんじゃない?」
「うん!私も良いと思う!ご主人さまって名付け得意だったりするの?」
「いや全く。と言うか、得意って言うほど何かに名付けることが多い奴なんて殆どいないと思うけどな」
「そうなの?私はご主人さまがくれたフェリスって名前好きだけどなぁ…………」
「…………そりゃ良かった」
若干安直過ぎたんじゃないかと自分では心配していたが、気に入って貰えているようで少しホッとした。
「おや、照れてるのかい?」
「そういうわけじゃないけど…………まぁ、折角考えた名前だし、それを好きだって言って貰えたのは嬉しいけどな」
「あっ!ご主人さまのことも勿論好きだよ!?」
「いや、別にそこのフォローはいらないぞ?」
そういう話じゃないし、嫌われてるとは思ってねぇし。多少マシになったとはいえ、まだどこかズレてると感じるのは仕方ないんだろうな。まぁ、素直な分イライラまではしないが。
「…………そうだ、ノイン。話は変わるんだけど」
「ん?なんだ?」
「結局、あれから一度くらいリリィに顔を見せたのかい?」
「……………」
やっべ。




