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95話

 校長に案内されて向かったのは、学校の地下。てか、ここ地下なんてあったんだな。知らなかったぞ。

 と思ったが、広さ的にこれは大工ではなさそうだな。校長が人為的にダンジョンを作れるなんて話があったし、それの応用なのかもしれない。

 相変わらず便利だな魔法って。戦いにしか使えない俺と違って。


「おや、急にため息をついてどうしたんだい?」

「別に」

「ふむ…………この空間を見て、君の魔力の融通の利かなさに改めて落胆した?」

「お前そこまでいったらこえーよ、なんで分かるんだよ」

「君のことは何でも分かるさ」

「えぇ…………」


 本当にエスパーかよ。しかも自信たっぷりに胸を張って答える所を見るに、自分では本当に変なことだとは思っていないらしい。


「今の君は、話してくれる事より黙っていることの方が多いだろう?また一人で背負わせないためにも、僕は君の事を理解しなきゃいけないからね」

「エリー…………いや、結局理由がなんであれお前が心を読んでくるのは怖いぞ?」

「ふふふ」

「怖いって」


 俺たちがそんなやり取りを交わしていると、先生は少し困ったように話し始める。


「これから会いに行くのは、一応油断ならない相手なんだがね………」

「油断はしてないですよ?」

「………ここまで軟禁していて一切暴れていない所を見るに、心配する事もなさそうだしね」


 エリーの言葉に頷く。本当に危険な相手なら、誰もいない地下に閉じ込められて何もしないというのはちょっと有り得ない。特に閉じ込める以外の拘束はしていないらしいし。

 そう考えつつも、俺達は目的の部屋の前へとたどり着く。ドアは厳重な結界を何層にも貼られて封印されていたが、やはり俺の中の炎のせいだろう。何度か感じた事のある、気配のようなものをこの先に感じる。


「準備は良いか?」

「大丈夫です」


 俺が頷くと、校長が魔法陣に手をかざす。そして、一つずつ結界が消えていく。それにつれて気配も少しずつ強くなっていくのを感じた。

 ………いや待て。これ扉の目の前にいるんじゃ?俺がそう思ったのも束の間、最後の結界が解けるとともに、ドアが激しい音を立てて勢いよく開く。俺は何となく予感していたが、他のみんなはそうもいかなかったんだろう。驚いて身を引き、咄嗟に魔法を構えていた。


「………」


 しかし、それをやった本人は周りの態度など一切気に留めた様子もなく無言で俺を見つめていた。その瞳に映る感情はなく、何も言わないせいで俺と少女でひたすら見つめ合うだけの謎の時間が生まれてしまった。


「………」

「………」

「あー………元気か?」


 取り敢えず、ふと頭に浮かんだ質問を投げかけてみる。皆がもっとマシな質問あっただろと言わんばかりの顔をするが、浮かばなかったもんは仕方ない。

 しかし、少女は特に迷う様子もなく頷いて答える。


「はい。不調はありません」

「そうか………あー………んー………なぁ、こういう時ってどうすればいいと思う?」

「さぁ?」

「少しは考えてくれ………」


 結局、一つずつ聞かなきゃいけない事を聞いていくしかないか。前置きは………もういいだろ。単刀直入が一番だ。


「そうだな………色々聞きたいことがあるんだけどいいよな?」

「お答え出来る事であれば」

「じゃあ、お前を作ったのはあいつら、って事で良いんだよな?」

「あいつら、とは?」

「アルヴィースとシーカー。この名前に聞き覚えはあるだろ?」

「いえ。ありません」

「ありません………?まさか、目覚める前の記憶がないのか?」


 もしそうだったら、こいつはあいつらについての重要な情報を何一つ知らない事になる。どうかそうでない事を願ったが、現実は無情だった。


「私はマスターの力によって誕生しました。それ以前の事柄については、何も知り得ません」

「………はぁ。収穫はないか………けど、俺の力ってなんだ?俺は【天焔】をお前に使ったことは無いし、そもそも死んだ体に命を吹き込むことも出来ない………と思うんだけど」


 まぁ、絶対にないとは言い切れないが。如何せん死んだことが無いから分からないし………いや、けど魔龍と戦った時は………完全に凍り付いた俺はどうなっていたんだろうか。

 あの時は【天焔】の覚醒で助かったけど、もしあの時の俺が死んでいたとしたら………そこまで考えると、校長が代わりに話し始める。


「あの時この子の肉体は確実に死んでいた。であれば君の力とこの子の力が共鳴し、覚醒することで新たな命を得た、と考えるのが自然だろうな」

「………まぁ、無いとは言えないですね。俺の時の事を考えれば」

「………君の時?」


 先生が若干低い声で呟く。あ、まずいなこれ。という予感がしつつ、今は聞こえていなかったフリをする。また何か脱線しそうだし。

 校長も何か言いたげだったが、俺に合わせてくれたらしい。俺は今は怖くて振り向けないが。


「………となると、俺が接近したことで【覇雷】が覚醒したってことですかね?」

「恐らくはな」


 【五属の継心】の間で、協調する力があることはルーナとの件で明確だ。それに、少女が眠っていた時に感じた、確かな気配のようなあれもそのせいだろう。

 となると、やっぱり有り得ないとは言えないか。どちらにせよ、それによって新たな【五属の継心】の継承者が目覚めた訳だが………


「校長、改めて聞くんですけどこの子幾つに見えます?」

「………少なくとも、君達とそう大差は無いように思えるが」


 そうだよな。と心の中で同意して、俺は今までの【五属の継心】の継承者達のことを思い出す。俺の事を振り返っても仕方ないが、まぁ多分俺が一番最初の覚醒者であるのは多分間違いないだろう。

 そして俺の次がギルト。あいつは俺より少し歳上に見えたが、そこまで大きな差が開いてるわけではなさそうだし、ほぼ同年代だろう。けど、戦ってみた感じだとまだ覚醒してそれほど期間が経ってるわけではないはずだ。


 次はルーナ。言わずもがな俺と同年代。あのダンジョンで俺と対峙する事を選び、目の前で覚醒した。知っている中では3番目の覚醒者だ。しかし、その力への適性は俺以上の可能性がある程に早い順応を見せ、正直幼い頃の暴走は何だったんだと言いたくなる。


 最後がこの少女。先生や俺から見ても肉体だけならほぼ同年代。詳しいことは知らないが………まぁ、聞いた限りだと現状覚醒者の中だとダントツでこいつが強そうだ。それは【覇雷】の力だけではなく、実験体としての力も含めてだが。


 今の時代になって現われた4人の覚醒者。やっぱりこれは偶然なんかじゃない。そして全員がほぼ同年代であるのも何かあるはずだ。

 フェリスなら何か………いや、だとすればあの夜に言ってくれているはずか。けど、継承者達の誕生が偶然ではないとすれば、一体何が起ころうとしているんだろうか。


「ノイン?」

「あっ………すみません、ちょっと考え事をしてまして」

「それは見ればわかるが………やはり、お前以外の覚醒者が現れた事が気になるのか?」

「………えぇ。まぁそんなところです」


 そうだ。俺以外にも継承者がいたことは、ごく僅かな人しか知らない。ルーナの件はエリーも知っているだろうが、その先のギルトの事まで知っているのは恐らく国王とフェリスだけだ。

 結局、自分で調べるしかない。けどどこから調べる?そんな悩みが生まれ、呆れ気味にエリーから再び名前を呼ばれるまで、俺はまた考え事に集中してしまっていたのだった。



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