表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第一王子はモテない  作者: 東野 千介
敵か味方か
32/58

ドラゴンの謁見

ベテルギウス・ドラゴンの久々の登城に多くの貴族達が関心を持たずにはいられない。

 それは当然だろう。何しろ三将軍に次ぐ実力をもつドラゴンがレスタークスとシャルルが相続争いをしているこの時期にやってきたのだ。何もないはずがない。


 わざわざベテルギウスが公式の謁見を申し込んだのでレスタークス派、シャルル派を問わず多くの貴族が謁見の間に集まっている。


 「あれが、ドラゴンか・・・」


 「だいぶ痩せられておるな」


 「『強欲のドラゴン』も衰えたものよ」


 貴族達は病身でかつての面影を見ることができないベテルギウスに半ば安心した様子でささやきあっている。

 謁見の間では病気のリサリア王ルーデルに代わってレスタークスが対応している。


 「ベテルギウス。久しいな。父が病身のため私が名代としてここに座らせてもらっているが構わないか?」


 「ご無沙汰しており申し訳ございません。レスタークス殿下が名代としてなんの不足がありましょう。恐悦至極にございます」


 「身体を壊していたと聞いていたが、その後どうだ」


 「見てのとおり。いつでも殿下のために槍働きをしてみせましょうぞ」


 力強くうなづくベテルギウスだが、病気で痩せた身体からは槍を持つどころか、もはや戦場に赴く事すらできないのは見て取れる。


 「まあ、そう無理をする事はない。ここのところ他国の動きも落ち着いているし、事実としてしばらくは大きな戦もなさそうだ。ベテルギウスの力も借りることはないだろう」


 「それは残念。しかし・・・」


 ベテルギウスは一息つくと、意を決したように気合を入れなおし、


 「しかーしっ、他国はどうあろうとお国の中にけしからぬ輩がいるのもこれまた事実!もしも!もしも!レスタークス王子に弓引くものがいれば、このベテルギウス・ドラゴンがこの命にかえても全て焼き尽くしてごらんにいれる!」


 ベテルギウスはその枯れた老体からは考えられないほどの大声でその場の空気を震わせる。

 そして視線は射殺すようにシャルルを見据えている。

 『ドラゴンの咆哮』に身体を震わされて、シャルルがにらみつけられるという非礼を受けているにもかかわらずシャルル派の者たちは一言も発せずにいる。

 役者が違いすぎるのだ。かろうじてウインが苦々しい顔をして睨み返しているくらいで他の者は皆目を伏せて視線を合わせないようにしている。


 レスタークス派、中立派の者たちも騒然としている。

 レスタークスとシャルルの間に相続争いがあるのは周知の事実だがそれを公然と口にした者はこの場のベテルギウスが初めてだった。


 「ベテルギウス、心配するな。気持ちはありがたく受け取っておくが、今は本当に大した問題はない・・・取るに足らぬ程度の問題はあるがそれはいずれ片付けるつもりだ」


 のんびりした顔でゆっくり答えるのはいつも通りのレスタークスのふるまいだが、


 「さすがはレスタークス殿下、まさに次期リサリア王にふさわしい落ち着きぶり!」


 ベテルギウスは大げさに言うことでレスタークスがまるで大人物の行動のように演出していく。

 こうなると今までのレスタークスの少し鈍いような物言いが「実は思慮深さからきているのでは」という錯覚を周りの者は覚えてしまう。「レスタークス殿下は愚鈍だと思っていたが案外・・・」「あの堂々たる物言い。勘違いしていたのかもしれんな」「あのドラゴンがあそこまで褒めるとは・・・」とささやき始める。


 そのざわつきをわざと少し続けさせて、言いたいようにいわせていたが


 「突然大声を出して失礼いたしました。なにぶん老人なものでつい声がおおきくなってしまいまする。殿下もお忙しい身の上でしょうから私はこのくらいでお暇させて頂きましょう」


 ベテルギウスは一礼してざわめきの中を振り返えることもなく退出する。


 謁見の間を出るとすぐにシリウスが、


 「父上、どうでしたか?かなり騒がしくなっていましたが」


 待ちきれないように問いかけてくる。


 「まあ、うまくいった。これで日和見の者どものかなりの数がレスタークス殿下に付くだろう。これはいくら戦に強かろうが若輩のお前たちではまだ出来ない事だ。戦の強さ以上に名声が必要なことだからな」


 二人の息子につげるベテルギウスの顔色は悪かったが、それははればれとしたものだ。


                  *



ベテルギウス一行が早々と帰路につく準備をしている中、シリウスとプロキオンは「少し用事がある」と部下たちに告げて王宮のある場所に向かう。


 「おい、どういうことなんだ!俺をだましていたのか!」


 シリウスたちは謝罪のためにある騎士の元を訪れたのだが、シリウスが言葉を発する前に先に詰め寄られてしまう。


 「すまないな。リアカ。事情が変わったのだ」


 「すまないですむか!理由をきかせろ」


 怒鳴りつけている大柄な騎士、リアカはウインの甥にあたる男でウインの若いころのように直情的な性格をしている。

 そのまっすぐすぎる性格のおかげで戦場では一騎駆けをするほど勇猛な働きをしているが、政治的な駆け引きは苦手で一度信じ込んだら深く考えないところがある。

 叔父のウインの影響もあって『レスタークスのような軟弱な者には王になる資格はない!』と思い込んでおり若手の反レスタークス派の中でも急先鋒だ。


 そんなリアカと何度か戦場を共にしているうちにシリウスたちはお互いにその力量を認め合っていたのだ。

 そして親交を深めていくうちにリアカはシリウスたちもレスタークスへの敵意がある事を知ることになり、より親交を深めていた。

 今回の跡目争いでも当然ドラゴン騎士団はシャルルに味方するものだと思っていたのだ。


 「ごめん。理由はちょっと言えないな。なにしろ王国の・・・」


 プロキオンはいつものシリウスよりは軽い感じで答えているが、


 「プロキオン!」


 すぐにシリウスにたしなめられてバツの悪そうな顔になる。


 「このような事になってリアカには悪かったと思っている。だが、俺たちがここまで変わったことにはそれだけの理由があるのだ。しかし、プロキオンの言うようにそれを公にすることもできないのも事実だ」


 「理由も言わずに納得しろというのか!」


 「すまない・・・」


 リアカの責める言葉にシリウスはひたすら謝っている。

 プロキオンも今度は黙って頭を下げている。


 「では、どうあってもレスタークスにつくというのか」


 シリウスたちの決意が固く変わらないことはリアカにも伝わってきているがもう一度確認する。


 「そうだ。俺たちは命を懸けてレスタークス殿下にお仕えする事にした。ドラゴンは全軍をあげてレスタークス殿下を守る」


 「悪く思うなよ。あくまでリアカがシャルル王子につくなら次に会うときは敵同士だ」


 あれほどレスタークスを嫌っていたはずの二人の変わりようにリアカはわけがわからなくなっていた。

 だが、二人の意思が固いことも知ったのでそれ以上何も言うことができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ