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二つ名オンライン  作者: そらからり
1章 二つ名
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6話 転職

 ガラクサという街はDNOを始めたプレイヤーにとって初めて訪れる街である。

 初期位置はモンスターが跋扈する草原であり、そこでプレイヤーは闘いを身体で覚えるのだが、逃げ回って街に来るプレイヤーも少なくない。もしくは、闘いの途中で体力が減った者が回復するために街へと戻る。

 

 なので一般的なプレイヤーは冒険者レベルが10になるまでには一回はガラクサに訪れる。よほど強い者、早くレベルを上げたい者であれば効率を求めて街へは行かずに初期装備、初期アイテムのみでレベル10へと到達する。

 初期アイテムは回復ポーション薬草が10個、それにこの世界共通で使われているマネーであるゴールドが2万ゴールド与えられている。


 このゲームは世界中で売られている。ゲーム内では翻訳機能が十全に備わっており、少なくとも言語で困ることはない。だが、それに対してプレイヤー数はそこまで多くない。

 ログインをしたきり戻ってこない者が多いのだ。その理由がこのゲームの最大の特徴である二つ名にある。

 強い二つ名を与えられた者は良い。初期から闘え、強くなれる。二つ名は千差万別であるが、それでも能力は質も量も違う。

 訳の分からないもの、弱すぎて闘うどころか常にダメージを負ってしまうものなどを与えられてしまった者はログイン開始後すぐにログアウトし、それきり戻ってこなかった。


 だが、彼らは知らない。訳が分からない能力程、他のプレイヤーと闘ったときにその分からなさを相手自身が体感し、弱い能力は成長するにつれ初期に強かった者を圧倒する程の強さになる可能性に満ちていることに。


 リュウキとシズネが助けたプレイヤーであるマラータも訳の分からない能力の一つであった。

 細身であるが、線の細さは決して弱々しい印象を与えず、優し気な顔を振りまく。ブロンドゴールドの髪は若者の安っぽいものではなく、周りの目を十分に引き付ける。

 

 モンスターに気を取られリュウキは気づかなかったが、マラータはイケメンの類であった。


「転職か。なら冒険者ギルドに行こうか。俺も今のでクエストが終わったし。君達も転職前に冒険者の登録をしておくといいよ。転職のクエストがあるからそれだけで経験値が入る」


「へえ、そうなんだ。ありがとう」


「……ありがとう」


 二人は素直に礼を言う。まだこの世界について知らないことだらけであるのだ。聞いておいて損はないだろう。


「闘うことについては……もう何も説明はいらなそうだね。二つ名も大丈夫かな?」


「その二つ名なんだけど、中々レベルが上がらないんだ」


 未だに二つ名のレベルは上がらない。二つ名のレベルの上限がいくつか分からないが、リュウキにはじれったくなってきていた。


「あれ?知らないの?二つ名は転職しないとレベルが上がらないんだよ」


 マラータの言葉にリュウキは衝撃を受けた。あれほどまでに闘ったのが無駄だったのか……いや、冒険者レベルを上げるためだったんだ、無駄ではない。そうリュウキは考え直す。


「……じー」


 シズネがリュウキを睨みつけるように見る。


「え、そうなの⁉いやシズネ、俺も知らなかったんだって!」


「心配しなくても、経験値は入っているから、転職すればレベルが上がるかもしれないよ」


 シズネの目線がようやくリュウキから外れた。

 ほっとしながらリュウキはシズネの目線の先を見る。


「それにしても、日本にいたら一生見れなかった景色だな」


 リュウキたちがいるガラクサという街はヨーロッパの街並みをモチーフにしたもので、道の中央には河が流れ、建物はレンガで作られている。

 人通りは少なくないが、一々避けるほどではない。

 たまに道の端で布を広げているのはプレイヤーによる露店であろうか。

 店を飛び出して呼び込みをかけているのはプレイヤーか、はたまたNPCなのか。リュウキもシズネも初めて見るものばかりで歩みは中々進まない。


「よければフレンドになってくれないかい?僕としては君達みたいな強いプレイヤーとは知り合いになっておきたいからね。もちろん、僕にできることならできる限りのことはするからさ」


 マラータの申し出はありがたいものであった。いずれリュウキのほうから申請させてもらおうかと思っていたのだから。


「ああ、俺も友達はたくさん欲しいし、シズネもいいよね?」


「……リュウキがいいなら」


 互いにフレンド申請をし、他にもこの街での機能や、ゲームのシステムを聞いているところで一つの建物に行きついた。


「ここが冒険者ギルドだ。さ、中に入ろうか」


 これまでにあった建物とは一回りも違う大きさの冒険者ギルドの扉を押すと、中からは喧騒が広まる。




「ようこそ冒険者ギルドへ。未登録者の方がお二人ですね?すでに冒険者登録をしているマラータさんはあちらへどうぞ」


 ギルドの中には多くの冒険者らしき男女、受付に並ぶ見目麗しき女性たち、大きな板にはクエストであろう紙が幾枚も貼ってあった。


「じゃあまた後でね」


「ここまでありがとう」


「……またね」


 マラータが去っていき、リュウキとシズネはギルドの受付嬢の元へと行く。


「まずは登録をなさるということでよろしいですか?それともクエストを依頼なされますか?」


「転職をしたいんですけど、どうすればいいですか?」

 

 リュウキとシズネのとりあえずの目的は転職。そして二つ名のレベルを上げることだ。


「でしたら登録からですね。……はい、登録が終えました。転職に移りますね」


「ずいぶん早いですね」


「その辺はゲームですからね。では転職の説明ですが」


 受付嬢はNPCであるはずなのにメタ発現をする。リュウキにとってはよくできたNPCだなくらいにしか思わなかったが。

 受付嬢による転職の仕方は簡単であった。

 駆け出し冒険者がLV10に達していれば転職は冒険者ギルドに来ればいつでも出来る。

 最初は下位の役職であるが、上限までレベルを上げれば上位の職業につける。他の職業に転職してもその職業のレベルはリセットされないため、いつでも戻れる。

 職業ごとに得手不得手、ステータスの上下、スキルがあるため、二つ名に合わせたものを取るのが普通らしい。


「……決めた。私はこれにする」


 リュウキが転職可能な職業を眺めているうちにシズネは早々と決めてしまった。


「えーと、じゃあ俺はこれかな」


 リュウキは二つ名で補正されているATK、AGIと相性の良い格闘家を選んだ。武器は必要なく己の手足で闘うため『悪鬼変身』も使いやすいであろうとの考えだ。


「ではお二人ともこれで冒険者登録並びに転職は以上です。お疲れ様でした。初めての転職ということで二つ名レベルのほうに少しだけ経験値が入りましたので後で確認しておいてくださいね。そうそう、クエストはあちらのボードから閲覧、受注できますので時間があるときに見ていってくださいね」


「どうもです」


「……また来るね」


 受付嬢との会話が終わったのが合図であったのだろう。

 LVが上がった音がした。


「マラータの言ってた通りだ、二つ名のレベルが上がってる」


「……これで強くなった」


「シズネは何にしたんだ?」


「……テイマー」


 テイマーとはモンスターを使役する職業。モンスターを倒した時に一定の確率で使役可能となる。使役されたモンスターは育成することができる。

 プレイヤーのステータス補正はMPやINTであるためシズネには良いだろう。それに、モンスターに壁役となってもらえばシズネは安全な場所から魔法を放てる。

 モンスターをテイムする確率はLUKも関わるためシズネにはぴったりとも言えた。


「よし、後で何かテイムしに行こうな」


「……楽しみ」


 二人は冒険者ギルドを後にして街へと再び繰り出した。

 これからの冒険に必要なものを買うために。

 マラータと後で会おうという約束など忘れて。




 リュウキ 格闘家     LV1  

     『悪鬼変身』   LV2

 HP  150

 MP  40

 ATK 20 

 DEF 15

 INT 15

 AGI 20

 DEX 15

 LUK 15

 *ATK・AGIに補正

 所持スキル:格闘家スキル




 シズネ テイマー    LV10  

     『地底神王』  LV2

 HP  100

 MP  60

 ATK 5

 DEX 15

 INT 25

 AGI 5

 DEX 20

 LUK 20

 *HP・MP・ATK・DEF・INT・LUKに補正、AGI・DEXが微減少

 所持スキル:岩魔法 テイムスキル



ちょいちょい修正してますが、VRMMOってこんな感じなんですかね?

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