10話 赤黒兎の証
朝起きてブクマが増えてて嬉しいですね
「……この子の名前何がいい?」
「ちょぉぉっと、待っててな!」
MPは完全に枯渇し、HPが未だ回復しきれない中、リポップしたブラックラビットがシズネへと襲い掛かる。
シズネよりかは体力が回復しているリュウキは当然、このブラックラビットたちを撃退しなければならない。
出し惜しみなしで、『悪鬼変身』をフルに使いシズネの回復までの時間を稼ぐ。
「……うん、決めた。……この子は今日からラビ」
ブラックラビットのネームドモンスターであるブラッドラビット。そのテイムされた個体にラビという名が付けられた。
「よろしくな、ラビ!あ、ちょ、待ってぇぇ」
今リュウキが相手をしているのは3体のブラックラビット。油断すれば弾丸のように兎たちが飛んでくる。
「……やっぱり私も手伝う」
「いや、シズネがタゲ取るわけにはいかないから……」
「……じゃあ、この子だけでも」
シズネの腕からラビが放たれる。
ラビはシズネの元からブラックラビットのうちの一匹へと走りかける。
「ラビ、そいつは任せても大丈夫か?」
「キュルル!」
一匹減ったことにより攻撃に移ることができるようになったリュウキはブラックラビットの攻撃をかわしながら蹴りを入れ、爪で薙ぎ払い、拳を突き上げる。
「グル!」
「グビュ!」
「キュー!」
ブラックラビット二匹は攻撃力の上がったリュウキの攻撃によりそのままHPバーを散らし、ポリゴンとなって消えた。
「うん? 鳴き声が一つ多かったな。ラビももう倒したのか?」
そう思いリュウキはラビの方へと振り返ると、そこにいたのはブラックラビットに踏みつけられたラビの姿があった。
「何でだよ。ど、どいてくれ!」
ラビのHPが減っているのを見て慌ててリュウキは残り一匹となったブラックラビットに爪を振り下ろす。
「何でこんなに弱くなってるんだ⁉」
あんなにリュウキ達を苦戦させたブラッドラビットの面影は残っていなかった。
あの突進も、攻撃を受け付けない毛皮も、奥の手の角も何一つ。
「……たぶん、レベルのせい」
そう言ってシズネはラビのステータスを見せてきた。
ラビ ブラッドラビット LV3
『赤黒毛皮』 LV1
HP 100
MP 20
ATK 15
DEX 11
INT 9
AGI 17
DEX 8
LUK 8
『赤黒毛皮』LV1
アクティブスキル:HPが2割を切ったときに全ステータス上昇
パッシブスキル:すべてのダメージを-5する
「……弱いなー」
「⁉キューキュー」
リュウキの呟いた弱いという言葉に反応してラビが蹴ってくる。
しかしその蹴りも大した痛みではない。マッサージに近いくらいだ。
今のラビのステータスは駆け出し冒険者と遜色ないほど。二つ名も攻撃をそこまで無効化できるものではない。よく見れば大きさも少し小さくなっている。1mはあったはずのラビは小柄であるシズネが抱き上げられるくらいの大きさになっている。
「てか、硬い硬いと思ってたけどこいつ二つ名持ってたんだ。しかも攻撃をマイナス……どうりで連打系の攻撃が効かないわけだよ」
連打系は当てることに重視しているため、一撃の威力は全力の一撃を分割しているのと同じだ。つまり、一撃の威力を低くしているわけで、その一撃を『赤黒毛皮』という二つ名で威力を減らされたら、ダメージは無くなってしまっていたようなものだ。
防御力高いなーと思って闘っていたが、まさかこれが二つ名の効果だったとは。
「……しばらくはこの子も一緒にレベル上げ」
「そうだね。でも、そろそろ戻ろうか。ギャブーさんに言われた分の素材は確保できたかな?」
「……一つだけ足りない。……この、黒兎の証ってやつ」
「……俺も持ってないな」
「……でも、これなら持ってる」
シズネが見せてきたのは、赤黒兎の証というアイテムだ。恐らくはブラッドラビットをテイムしたときに手に入れたと思わしきアイテム。
「テイムしてもアイテムって手に入るんだ。ギャブーさんにこれでいいか聞いてみるか。多分上位アイテムぽいし」
「……うん」
「ギャブーさん、ただいま戻りました」
「お、さっきの兄ちゃんたちか。どうだ?何か集まったか?」
ギャブーへと指定されていたブラックラビットの素材を渡していく。
合計で8体ほど倒したが、LUKの高いシズネが止めを刺していたためアイテムのドロップ率は非常に良かった。
「おお、十分十分。これだけあれば作れそうだ。……うん?証だけないな。まああれはかなりのレアだから仕方がねえか……」
「それで、代わりにこれ使えませんか?」
「金を少し積めば俺の知り合いのつてをたどって見るが……うん?何だこれは」
「ブラッドラビットってモンスターのドロップなんだけど、どうです?」
「……おいおい」
ギャブーは呆れたように言う。
「やっぱり、ちゃんとした黒兎の証じゃなきゃ駄目ですか……」
「いや、大丈夫だ。むしろ大丈夫すぎるくらいだ。これならより良い防具が造れるぞ!しかし、どうやってあんなの倒したんだ? あれは中級者以上のやつらが倒すモンスターだぞ。攻撃は通らねえわ、当たらねえわで、初心者は逃げるのが普通なんだが」
「……(ふるふる)」
シズネがギャブーのすそを引っ張る。
「ん?どうした嬢ちゃん」
シズネの肩にラビが召喚される。
「……倒してない。……テイムした」
「な……⁉」
ギャブーは絶句したまま固まってしまった。
「テイムモンスターって珍しいんです?」
そういえば街中ではティムモンスターは全くと言っていいほど見ない。
テイマー自体少ないのだろうか。
「んんー。テイマーである嬢ちゃんを前にして言うのもなんだが、テイムモンスターのステータスを見たか?」
「……うん。……弱かった」
「だろうな。だけど、初心者ならむしろそれでいいかもな。テイムってのが体験しただろうが、そもそもの話で確率が低い。嬢ちゃんはよっぽど運が良かったんだろうな。そしてテイムモンスターのレベル。これが問題だ」
「……この子はレベル3だった」
「ああ、なら嬢ちゃんのレベルは高くても6か。それなら育てやすいだろう。テイムモンスターのレベルは職業レベルと二つ名のレベルを合計した半分の値だ。だからテイマーのレベルが上がれば上がるほどテイムしたモンスターとのレベルは離れちまうんだ。まあ育てるのを手伝ってくれる仲間がいれば別だけどな」
嬢ちゃんには兄ちゃんがいるしな。そうギャブーは最後に言って、仕事に戻って行った。
「兄ちゃんたちが次来る頃には仕上げとくからよ、次はいつ来れそうだ?」
「今日はもう終わろうかと思っていたんで、明日になりそうです」
「分かったよ、じゃあまたな」
DNOのログアウトは場所によってやり方が違う。街中であればどこでもいつでも可能である。街中では他のプレイヤーに対して攻撃、スキルの使用はできないため安心してログアウトが可能である。
街の外――モンスターが跋扈するフィールドではログアウトは可能ではあるが、10秒間プレイヤーがログアウトしても身体だけは残る。その上、モンスターをおびき寄せるようにシステムが作動するため、再びログアウトしたら街に死に戻りしていたなどということが有り得てしまう。
「じゃあシズネ、また現実でね」
「……うん」
二人は街中でのログアウトのため即座に身体も消えていく。
初心者二人が初日にDNOをプレイした成果……それが今後、他のプレイヤー達の注目の的となる原因だとは二人には知る由もなかった。
「……今日は帰るね」
「そうだね。もう5時か。明日もうちに来る?」
「……うん。明日も午前中には来れる。……あの家にはいたくないし」
「シズネ、何度も言っているが、俺の両親はシズネがこの家で暮らしても別にいいって言ってるんだぞ?」
「……それはまだ。……(だって、まだリュウキは私のこと幼馴染としか見てないし)」
「うん?最後何か言ったか?」
まだ、ということはいずれはあの家を出る決心はしているのだろう。
リュウキとシズネは幼馴染とはいえ、男と女である。家に来い、それはリュウキにとってもある意味での告白のようなものであったのだが……。
「(やっぱり気づいてもらえないか。まあ俺はシズネにとって兄みたいなものなんだろうな)」
互いに面と向かって好きとは言っていない二人は幼馴染としての距離感から抜け出せないでいた。
「明日は熊だったっけ?頑張ろうな」
「……うん。……じゃあね」
シズネはリュウキに手を振り、帰って行った。誰もシズネに興味を持とうともしない家族の元へと。
リュウキ 格闘家 LV7
『悪鬼変身』 LV2
HP 200
MP 67
ATK 50
DEF 22
INT 17
AGI 47
DEX 18
LUK 18
*ATK・AGIに補正
所持スキル:格闘家スキル
装備:ギャブー印の失敗作(格闘家用)
シズネ テイマー LV5
『地底神王』 LV2
HP 124
MP 85
ATK 10
DEX 21
INT 37
AGI 8
DEX 43
LUK 28
*HP・MP・ATK・DEF・INT・LUKに補正、AGI・DEXが微減少
所持スキル:岩魔法 テイムスキル
装備:ギャブー印の失敗作(テイマー用)
まだ矛盾は起きてませんよね?
わりとやりがち
まだ、って今後もやるつもりは別にないですが……
二人のレベルは前回よりも少し上がってます。ブラックラビット3匹を直接倒したリュウキは2、パーティメンバーでもらえた経験値のためシズネは1だけ上げてあります。




