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神をも喰らうヴァイセント  作者: 文悟
転・ヴァイセントの異世界道中
53/73

ヴァイセントの異世界道中5(2/2)

お待たせしました!


タイトル間違ってました!修正

5月21日

男として、そして俺の公に向けた初の異世界知識の披露の場としては少々恥ずかしいが、俺達は下着を売るという方針に決定した。


この世界において、俺がそれと認識するレベルの下着は相当に高価な物で買い手も作り手も少ないために発展が無く、そのくせ一般の層から富裕層、果ては王族まで売り込める地球人イセカイジンも手をつけていないジャンルであるというのが理由だ。


また、俺としては特に男性下着をプッシュしたいと考えている。

何故ならばもうすぐ夏が来るからだ。


あくまで俺の中の日本の夏のイメージをこの世界にも重ねているだけではあるが、どんなものにせよ、そんな暑い季節に布オムツのような激しく蒸れる下着を俺は身に着けたいとは思わない。


タマちゃんがかぶれてしまうではないか。痒くなるではないか。

また、同じ理由でチンをノーガードも却下だ。


ふんどしは割りと過ごし易いように聞いたことがあるが、この世界ではふんどしのように股に巻いているだけなのでやはり布オムツ状態であるのと同じだと思う。

それはいかん。


同じ男としてそんなオマタの事情は改善してやらねばならない。

いや、勝手にそうだと決め付けているだけだがな。



とりあえず男性下着は作り易そうな形で考えてトランクスを作るのは決定した。

あとは女性下着だが、ブラジャーに関してはやっぱり最初はスポーツブラのような形状がいいだろうな。もともと似たような品があるし、それを軽量化した感じで安価にして出せれば食いつきはあるだろう。


それから数を作りながら俺の世界での一般的な物に近い物を作っていければ良い。

胸を持ち上げて形を作る部分の支えのところに入れられそうな物ってあったかなぁ?


ああ、パンティーの形に関しては我に策アリだ。

普通のも作ればいいが、多分もっと作り易く、今の下着に近い使い方で身に着けられる物がある。


それは何かって?

紐だよ、ヒモ。

ヒ・モ・パ・ン。


是非とも真っ先にメイプル、ピエタに装着してほしいと思う。


二人には熱く語りたいところではあったけど、メイプルの目がちょっと怖かったのでその場では止めておいた。


まあとにかく、作る物はだいたい見えてきたわけで、あとは何が必要か、どれくらいの費用がかかるかとか、あとは一日でどれくらい作れるかとかが問題だ。


そうそう、特に必要な物の中で生地の種類と価格が重要だろう。

俺は丈夫だから麻でもそこまで気にはしないけど、下着に使うならば丈夫なだけでなく肌触りも重視したい。また、生地は安ければ安いほど良い。


あるだろうか、そんな物?

いや、あると信じてそこはメイプルとピエタに任せるしかない。

メイプルにはそれなりに思い当たる品がありそうだったし。



とりあえずその日は夜明けまで詳細を詰めて行き、どこかからニワトリ(?)の声がしたところで一旦終了。眠たそうに目を擦るメイプルを抱き寄せ、ピエタにトランクスをもう一枚作ってくれるように頼んでから、俺はベッドに横になった。


作る方は役に立てないかもしれないが、俺にもできそうなことはいくつか思いついている。

もしかしたらかなり大規模な話になるかもしれんが、その処理はメイプルに頼もう。


瞼を閉じるとすぐにメイプルの寝息が聞こえ始め、俺もまた深い闇の中に落ちていった。










………






翌朝、朝食を済ませた俺達は、二手に分かれて行動を始めた。


え、朝食は抜きじゃなかったかって?

ははは、ウチのメイプルも最近は丸くなってきてね、俺の腹のムシがグオーグオー唸るもんだからさすがに食べさせてくれたよ。


おかわりは却下されたがな!



まあ、それは良いとして、メイプル・ピエタ組みは生地を探しに商店街へ向かい、俺は独り小さな手提げ袋を持って軍の寮を訪れていた。スノクの惨劇の報告書を提出に来ているというスノク駐留軍・戦闘教官ブリックに会うためだ。


まだ鐘は八つ鳴ったばかりだったが、アポも無く突然訪れた俺をブリックさんは笑顔で招き入れてくれた。朝食はすでに済ませ、今日は暇を持て余していたのでちょうど俺に会いに行こうかと思っていたらしい。


目的はまた戦闘訓練だったがな!

怪我人は大人しくしろよオッサン。


「体が鈍るといかんからな!はっはっは!」


本当に人間か疑わしくなるブリックさんに俺は苦笑で返して、早速訪ねた理由を話した。

俺の素性に関してなどはところどころぼかしているが、家族を探すために金貨が二百枚必要なことや、借金がダメなので自力で稼ぐがないといけないこと、また、それにより商売をしようとしていること、そしてその商売に協力してほしいことを伝える。


「ふむ、事情は把握した。私自身は……そうだな、キミに協力してあげたいと思っている。キミに世話になった者も少なくはないから声をスノクの者に声をかければ多くの者は君に協力を惜しまないだろう。それで、具体的にキミは何を売ろうとしていて、私に何を求めているのかな?」


協力が前提とは有り難い。

俺は手提げの中から一枚、奇妙な形をした布製の筒を取り出した。


「コレは?」

「コレが俺の売り出そうとしている商品です。男性用下着のトランクスと言います」

「トランクス?男性用の・・・・下着?」


ブリックさんにトランクスを手渡すと、ブリックさんは奇妙な物を見るように目を見開いて上から下から、中に外、それがどんなものかを確かめる。


「はい、男性用です。最近、この国の下着事情を知ることがありまして、俺の聞いた感じだと、それは男女ともに非常に悪いと言いますか、具合の良いものでは無いように思いました。特に男性は布を巻いただけの下着が中心で、なかには穿かない人もいると」

「あ、ああ、そうだな。この国だけでなく大陸のほとんどの国は同じだろう。下着のような汚れや傷みの激しい品に人は金をかけたりしない。下着を買うというのは貴族や金持ちにだけ許された謂わば贅沢な“遊び”だからね」

「それも聞き及んでますよ。で、それだと色々と困ることがあるだろうなって思ったんです。かぶれたり、病気になったり。ほら、特に男性は夏場が……ね?」

「ん?あ、ああっ、それ・・な。うむ、長く甲冑など着ていると、あとがかなりキツイことがある。私もそうだが私の教えている者の多くも時期になるとモノの手入れ・・・には余念がなくなる。因みにだが、危ないのは夏場じゃないぞ」

「え?」

「意外にも冬場だよ」

「えっと…………ああ!」


確かに、寒くなると着込むし、中に熱が篭る状況が多くなる。

結果、熱も湿気も逃げ場が無くなって蒸れることが多くなるってことか。


「じゃあ、なおさらコレがオススメなんですよ。穿き易く脱ぎ易い、そして通気性がよくて蒸れ難い」

「ふむ、確かに風通しは良さそうだ。生地も丈夫なのを使えば長持ちするだろうしな」

「破れたりで気をつけるのは股ぐらくらいですね。ゆったり目で作ればあまり問題は無いですけど」

「そうか。それなら良い品だと思う。だが、高いのだろう?」


まあ、問題はそこだろうな。

でも、俺は高く売るつもりは無い。


「いえ、高くはしません。今は生地から探していますからハッキリは言えませんが、最終的に一枚を銅貨数枚で買えるところまで値段を落とします」

「なに!?」


ブリックさんが目を剥いた。

そうだろうよ。普通は下着に金貨一枚が当たり前だからな。


「それは……安いな」

「まだ、その段階にはできませんが、現状でも銀貨一枚で二枚組みとかの販売が可能かもしれません」

「ほう。銀貨一枚でも二枚は安い」

「また、女性下着も新たな形を用意して安価で販売するつもりです」

「女性用もか。それはまた革命的なことになるな」


上手くいくと職人には睨まれるかもしれないな。

商人はいくらでもやりようがあるが。


「それで、キミはコレを私にどうさせたい?」


ブリックさんが首を傾げて俺にトランクスを返す。

俺はつとめて真面目な顔をして、トランクスを受け取った。


一呼吸置いて、ブリックさんを見つめる。



「コレを軍で買えませんか?」



それが俺の思いついたこと、その一だった。


軍の構成員は基本的に男性だ。しかも間違いなく千人前後は所属している。

一人につきさっき例を上げた銀貨一枚でトランクス二枚を売った場合、原価を考えずに単純な利益だけで計算すると銀貨千枚。金貨にすれば百枚分だ。


軍人の給料はそれなりに高いはずなのでブリックさんの言ったように下着二枚が銀貨一枚はかなり安い。気に入ってくれれば買うのは一セットだけではないだろう。


色々差し引かなければいけないが、軍に買ってもらえれば二百枚を超えるのはそこまで難しいことではないように思えた。


メイプルにも相談し、聞いてみる価値はあると言われている案だ。


ブリックさんにどれほど発言力があるかは判らないが、彼の言ったように構成員の多くは今の下着には満足してはいないのだ。受け入れてもらえる可能性はあった。



だが、俺の希望とは裏腹にブリックさんは難しい顔をして唸った。


「難しいな」

「それは、軍が買うのはってことですか?」

「ああ。分かっているだろうが軍は国の所有だ。売り込みに来た商人から直接買うことは無い。そういうのはすべて国に伺いを立ててからだ。書類を作成し、申請、それで許可されたら買うことができるが、まずそこまでなることはほとんど無いし、時間がかかる。だが、キミには時間が無いのではないか?」

「ええ、一ヶ月しか」

「だったな。まあ、個人が買うなら問題は無いから、私からひよっ子どもに勧めてあげよう。もちろん私も買わせてもらう」

「ありがとうございます……」


でも、一人二人、一枚二枚じゃ意味が無いんだよな。

まあ、数を用意できるかもまだ未定ではあるんだけど。


俺が困って眉根を寄せると、ブリックさんも困った顔になる。


「すまんね、大した力になれなくて」

「ああ、いえ、勧めていただくだけでも有り難いことですよ」

「もう少しこう……軍を動かせそうな何かがあれば、大っぴらじゃなくても力になれることがあったかもしれないんだがね。軍も利益が無いと動かないんだ。ああ、金になるかって意味じゃないよ。国益とか、困っていることの解決に繋がるとか、そういうのだ」

「……軍の……利益……」


軍の利益になることか。

国益、もしくは困っていることの解決。


困っていること……。

軍がいま困っていることって何だ?


軍が困る。

国が困る。


ん?


「あの、突然ですけど、いま、この町の治安とか失業率とかどうなってますか?」

「ん?本当に突然だな。いまのオラバルトは“最悪”だよ。避難民が大量に流れてきたせいで治安は最悪。失業率はぐんぐん上がってきている。もともとの住人も仕事を失って家を無くして浮浪者になる者もいる。軍や管理責任者は統制しようとしたもののもたついてしまい、結果人数が膨れ上がって、今じゃもうお手上げの状態になってきているそうだ。人員を回してくれってお願いにきたら逆に手が足りないって嫌味を言われたよ」

「なるほど」


ならば、俺はそれに解決の糸口を開けられる・・・・・かもしれない。


「ブリックさん」

「ん、なんだい?」


メイプルには言ってないけど、この際だ、何でも試す。


「俺は現状を打破する方法を提示できるかもしれません」

「な、なに!?本当か!?」

「はい。でもそれは俺の商売が上手く行かなきゃ話になりません。軍や町のお偉いさんだけでなくギルドなんかの協力も必要です」

「そ、それはなんだね?我々はどうすればいい?」


そう、それが成功すれば僅かでも解決につながる。


「俺、会社を作ろうと思います」

「か、カイシャ?」



カイシャという巨大組織を作る。

それが俺の思いついた案、そのニだ。






アドバイス、感想お待ちいたしております。

リメイク版のためにもご意見が非常に力になります。


みなさんにいつも感謝感謝です!

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