65話
そんなこんなで翌日のお昼時。
俺は能登畠山当主と対面すべく本丸へと移動していた。
本当はもう少し早くやる予定ではあったんだけど、参加予定者に体調不良者が居たようで少し延期したらしい。
ちなみに体調不良者は二人居て、一人は秀盛様でもう一人は温井さんである。
症状は頭痛に吐き気、胃もたれなど……どう考えても二日酔いですねえ!
酒精強いのにぱかぽか飲むから。
「御子神殿はこちらです」
謁見の場所に向かうと、そこには既に人が揃っている状態だった。
俺が秀盛様と共に室内に入ると、皆の視線が一斉にこちらへと向く。
集まった視線に一瞬帰りたくなったが……一番偉そうな人の前に小声で座る様に促されたのでモソモソと座った。
「畠山左衛門佐義総である。遠路はるばるよく来られた」
「御子神真です。こちらこそお招き頂き感謝します」
こちらへニコリと笑いかけるナイスミドルなおっちゃんに、挨拶してぺこりと頭を下げて置く。
たぶん作法的には間違っているんだろうけど、そこは向こうも承知済みなので少し視線が生暖かくなっただけで済んだ。
ちなみに謁見の場となったのは大広間ね。
だだっ広い部屋には俺含めて6人しかいない……本来はもっと家臣がずらっと並んで居るのだろうね。
でも俺が礼儀作法とか知らんぞと言ってあるので、あまり人目に触れぬように重臣だけ呼んだとかそんなんでないかな。まあ、見えないところに居るだけで大広間の外には結構な人数が控えてそうではあるけど。
そういえば、よく時代劇などで偉い人は上座に座っているイメージがあったが、そうではなく俺と同じく畳に座っているね……これはおそらく俺に合わせてくれたものだろう。
他の重臣たちからの視線も悪意がある感じではなく、興味を持ってこちらを見ていそうなので割と俺の存在は好意的に捉えられているとみてよさそうだ。
まあ、悪意持っている人はこの場にこれないだろうけどねえ!
何せ例の範囲に本丸も含まれちゃってるから……護衛の人とか近づけなくて苦労してそう。
「右衛門尉から色々と聞いた。米の収穫量を倍以上にしたこと、それとあの全身を映す巨大な鏡……あれらの出所がすべて御子神殿であると、あれによって以降米に困ることはずっと減るだろう。それにあの鏡は公方様も大層お慶びであった……左衛門佐心より感謝する」
「そのようなお言葉を頂き、恐悦至極に存じます」
いや、まさかここまでがっつり礼を言われるとは思ってなかった。
付け焼刃の礼儀作法がはがれてしまう。てか使い方あってんのかこれ、恐悦至極とか初めて使うんですけど!
「うむ。……これほどの事、どう報いれば良いか悩ましいところよ」
…………おん?
これはもしかして、お礼を言うだけじゃなくて何か報酬をくれようとしているってことか?
ここは七尾城……すぐそこには自噴温泉が……つまり?
「御屋形様。御子神殿に護衛を付けるのはどうでしょうか」
「ふむ」
温泉入りたいんで、湧き出てるとこの土地ください!
なんて己の欲望を開放するか葛藤していた俺であったが、秀盛様が何やら言い出し始めて急に現実に戻されたんですが??
てか現状だと別に護衛とかはいらんのだけど……人数によっては食事の用意もできんし。なによりキャンピングカーの側にいれば害される事はないと思う。
んまあ、秀盛様はそのへんのこと知らんだろうし、遊佐さんもそこまで詳しく分かっている訳ではない……どうしようかな、日本刀でも素手で握りつぶしてみようかしら?
「それと境内地の守りを整えるべきかと……御子神様が居れば不逞の輩は入れませぬが、不在の時はそうもいきませぬ」
「そうだな……如何だろうか御子神殿」
「有難く頂戴つかまつる」
ごめん、めっちゃ護衛いるわ。
そっかあ……俺が留守の間はあの広場に入りたい放題だもんなあ。
冷凍ストッカーとかトレーラーとか置きっぱなしだし、今盗人でもこようものならとても不味い事になる。
まあまず人が来ることはないだろうから、平気とは思うけど……今後どうなるかは分からない。
護衛がいれば俺が留守の間は留守番して貰えるし、守りを整えるって柵とかも作るのかな。それならより安全だ。
護衛の人らの食事とかは現地のお金でどうにかなるだろう。
ここはありがたく秀盛様の提案を受けておくとしよう。




