63話
「とりあえず渡せたので良しとしよう……」
多少の罪悪感を胸に抱きながら、キャンピングカーに戻ってきた。
時間自体は掛かっていないので、遊佐さんが夕飯前に俺が来るのを待っているなんてことにはなっていないはず……だが、なるべく早く必要なものを持って行こう。
「よっし、瓢箪とコップ系とー……つまみにもなりそうだしご飯のお供持っていくかな。あとちょいお高め缶詰と自家製燻製も」
燻製は好みが分かれそうな気もするけどね。
この時代に燻製があるか知らないけど、なければ何か煙たい……と言われて終わる可能性もある。
まあ、食わせた反応が気になるから持って行くとしよう。
二人が苦手そうなら俺が食うから問題ないしね。
「あ、お茶漬けの素……締めに良さそう」
お酒を飲むからには締めが必要だよね。
お茶漬け自体しばらく食ってないから有りだな。
まあお米が余るかどうかは別の話しだが。
俺と遊佐さん居る時点で厳しい気がしなくもない。
「……」
屋敷に戻ったら遊佐さんが庭で飯盒を火にかけていた。
どういうことなの。
「む、戻られたか」
「はい、まあ無事に戻れました」
その光景に思わずその場に立ち止まっていると、俺が戻ってきたことに気がつい遊佐さんが振り返り、声を掛けてきた。
「すぐ出来るでな、御子神殿は中で待っていてくだされ」
ただそれも一瞬のことで、遊佐さんは再び飯盒へと視線を戻し火の調整を始めた。
「……ご飯炊くのは遊佐さんの役目なのね」
「うむ!」
独り言のつもりだったけれどばっちり聞こえていたらしい。
まあ、楽しそうでなによりです。
「ご飯に合うもの持ってきたんで、これも一緒に食べましょう」
「おお!」
それじゃ一足先に宴会場? に向かうとしますかね。
もしかしたら秀盛様もう居るかもだし、万が一待たせでもしてたら大変だ。
「待たせたかな」
「私たちも今揃ったところですよ」
幸いなことに秀盛様は俺が部屋に入ってそして遅れて遊佐さんが入り、それから少し経ってから入ってきた。
あと数分遅れてたらアウトだったかも。
まあ、俺らが入ったの見てから入ってきた可能性あるけどねえ。
てか宴だよな。
みた感じ俺、遊佐さん秀盛様の三人しかおらんけど。
「本来であれば正式な宴にすべきでしょうが、重盛より御子神殿は堅苦しいのは好まないだろうと聞いていたので、今宵は我ら三人のみです」
「お心遣いありがたく……正直なところ宴の作法などは知りませんので助かります」
顔に疑問でも出ていたのだろうか。
秀盛様が疑問にこたえてくれた……そして作法とかさっぱりな俺のためにこの人数だったようだ。
ありがたいねえ。
「では食事としましょう」
遊佐さんがそう言うと戸が開いて料理が次々に運び込まれてくる。
予想よりもずっと種類が多い。
てっきり遊佐さんの炊いたご飯にお魚と汁もの、あと漬物とか想像していたんだけど……よく分からん料理が一杯だ。
分かるのは海産物をたくさん使っているってことぐらい。
「……さすが能登ですね。海の幸がこんなに」
「この辺りは良く獲れますから」
ありがたい。
能登って海産物有名だし、現代でも海の幸は食べる予定だったんだよね。
その時は結局食えなかった訳だけど。
こうしてまた食べる機会がくるとは……っと、さっそく頂くとしよう。
遊佐さんとかすでにご飯お代わりする勢いだし。
「んー……おいしい」
焼き魚が一匹丸々出てきたんだけど、塩加減が良い塩梅でおいしい。
脂もほどよくのってるねえ……でも何の魚だろなこれ。地物の魚であまり出回らないやつなんだろうか。
まあ美味しければよし!
あとはー……あれ、筋子っぽいのがあるな。あれ食ってみるか。
……ん?
何かさっきからチラチラと遊佐さんがこっちみてくるけど……あ。
「……つい久しぶりに食べた海の幸が美味しくて忘れていましたが、お酒を持ってきましたので良ければ」
「うむ!」
「これはかたじけない……重盛飲み過ぎぬようにな」
予想以上に豪勢で旨い食事に夢中になってお酒出すの忘れてた!
瓢箪は……そこに転がってる。コップもあるな。
「これ飲む用の器です。こちらはお二人に差し上げますので良ければ使ってください」
「これは……っ」
「おお、これは綺麗ですな!」
実はコップなんだけど、切子グラスを用意していたりする。
取り扱いの難しいガラス製品だけど、個人に渡すだけなら……たぶん問題ないかなーと。
ちなみにお値段の方はと言うと。
何年も箱の中にしまいっぱなしだった奴ですってことで、格安で売ってたのを購入したやつだったりする。
正規の値段で買ったらとてもじゃないけど買えなかったろうねえ。安く譲ってくれた人に感謝である。




