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ヤンデレ系暗黒乙女ゲームのヒロインは今日も攻略なんかしない!  作者: As-me・com


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〈38〉ヒロイン交代

 緊迫する空気の中、勢いよく部屋の扉が開いたかと思うと今まさに名前の出ていたそのメイドがやたら目をキラキラとさせて乗り込んできたのである。


「あぁ、みなさま!あたしのために争わないでぇ~っ!!」


 その悦に入った演技臭い言葉と動きに思わず呆気に取られてしまい、私たちはみんなで呆然とメイドに視線を集中させてしまった。そしてそのメイドは頬を紅潮させて身震いをしたかと思うと「やっぱり、あたしはヒロインなのね!」と呟いたのだ。




「……」


「……」


「……」


「…………えーと、このメイドがその男爵令嬢……よね?」



 やっと思考が追いついてきて私が思わずそう聞くと、リヒトはすでに頭を抱えていた。やはりこのメイドがその男爵令嬢のようだ。


 そう言えば、いたなぁ……こんな人。本気で忘れてたわ。


 すると男爵令嬢……えーと、キャサリン?だっけ。キャサリンは私をチラリと一瞥すると「フフン」と馬鹿にするように鼻で笑ったのである。


「あなた、この状況をわかっているのかしら?いつまでも大きな顔をしてられると思ったら大間違いよ!みなさまが求めてるのは、あなたではなくあたしなんですからね!?」


 そして「あたしはまさに“ヒロイン”なのよ!」と言って高笑いを始めた。


 それを見て、私はふいに閃いてしまったのだ。





 ………………もしかして、これって隠されていた“救済ルート”なのでは?と。




 最近は忙しかったのもあって断念していたけれど、元々は蜘蛛の糸ほどの救済ルートを探すべく奮闘していたのだ。ヒロインである“私”が救われるにはそれしかないのだから……。エリオットの言う通り、ジェンキンスとエリオットがいなくなれば残る攻略対象者はルーファスのみだけど私に彼を攻略するつもりはない。というか、もしも攻略したって絶対バッドエンドまっしぐらに決まってるのにこのままではまさに詰んでしまう崖っぷちな状況だ。でも……そんな時に《《彼女》》が現れてくれた。


 そう考えた途端、ニヤニヤと笑っているキャサリンがまるで女神のように輝いて見えてきた。



 そうよ、まさにこれは《《救済》》だわ。だってキャサリンはルーファスと結婚してくれると……《《私の代わりにヒロインになってくれる》》と名乗り出てくれているんだもの!


 ヒロインの交代!きっとそれが隠しルートなのだ!


 私はやっと見つけた救済ルートを目の前にして浮き足立ちそうになるのをぐっと堪える。これがゲーム画面なら選択肢が出ていることだろう。喜ぶのは正しい選択肢を選んでからにしなくては全てを台無しにしてしまうからだ。


 ……ここまで長かったなぁ。ジェンキンスルートも回避し、エリオットルートもなんとかなった。だから、ルーファスルートも絶対に回避してみせるわ!

 

 大きく息を吸うと、私が何かしようとしていると気付いたのかエリオットがそっと私の体を離して代わりに手を握ってくれた。もしかしたらちょっと巻き込む事になるかもしれないけど、エリオットならきっとわかってくれるはずだ。


 だから私はキャサリンに告げたのである。



「そこまで言うのなら、あなたにはルーファスと結婚して候爵夫人になってもらうわ!」と。







 もちろんリヒトとルーファスは困惑した顔をした。まさか私がそんな事を言い出すとは思っていなかったようだ。キャサリンだけが「ほんとに?!やったわ!あたしの勝ちね!」と両手を挙げて喜んでいる。


「何を世迷い言を……!」


「そうです、エレナ様!エレナ様が次期女公爵となることは決定事項なのですよ?!ルーファス様はあくまでも伴侶として……」


「全ての決定権は私にあるんでしょう?だから私はルーファスと結婚する権利をキャサリンに譲渡するって言ってるの!キャサリンと結婚した人が次期メルキューレ候爵になるのよ!」


「そんなめちゃくちゃな……!そ、そうです!使用人は?!エレナ様が候爵家を継がないのならばあなたを慕っている使用人たちが全員解雇されるんですよ?!それでもいいと?エレナ様は使用人たちを見捨てるおつもりですか」


 リヒトが苦し紛れにそんなことを言ってきた。そう言えば、最初の頃にそんな風に脅されて私は今回の事を了承させられたのを思い出した。でも、《《今なら》》それもすぐに解決出来る。


「────あら。それならその使用人たちは全員エリオットに雇ってもらうわ。ラファエ公爵家は広いし、多少使用人が増えてもいいわよね?エリオット」


「もちろんだよ、おねーさま。それにおねーさまを僕の婚約者としてラファエ公爵家に迎え入れたら、おねーさま親衛隊の使用人たちは引き抜こうと思っていたし……なんの問題もないよ」


 私の親衛隊?エリオットが私の話に乗っかってくれたのは助かったが、そこまで盛らなくてもいいのに……。あ、でもリヒトにはダメージが入ったようだ。なにせ私を脅していた唯一の弱味が消えてしまったんだものね。


 こんな方法、エリオットがラファエ公爵になってなければ思いつかなかった。もちろんきっかけはキャサリンのおかげでもある。


「私は、メルキューレ候爵家の全ての権限を放棄するわ!もちろん財産もいらないし、無関係の平民に戻るわね!あ、エリオットのところで使用人として雇ってもらおうかな」


「だから、僕の婚約者になってってば。僕はおねーさまが平民でもなんでも構わないんだから!ね?」


 そう言って念を押すようにエリオットが微笑んだ。今は“そう言うことにしとけ”という事だろうか?まあ、確かにそれならラファエ公爵の権力でゴリ押し出来そうだものね。それにエリオットとなら楽しく暮らせそうだ。しばらく好意に甘えさせてもらうものいいかもしれない。



 さぁ、それはともかく……ヒロイン交代よ!










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