最高で最悪なかんちがい(4話 3)
もう力尽きそう。
「それで、どうする? 時間余っちゃったけど」
「余っちゃったってぐらいじゃないでしょ、まだ二時間ぐらいしか経ってないよ」
......やっぱりノープランで行くもんじゃないな。
「映画とか行く?」
「おーいいじゃん、映画....映画!?」
「うん、映画」
思わず聞き返してしまった。
それがどうしたという風にしている冴木さんが恐ろしい。これが天然ビッチというものか。男女二人で映画とか恋人同士じゃないですかヤダー。
「じゃあ行こっか」
自分のやっていることに気がついてないようだがここは流されてもらうとする。
帰りたい
またもそう思ってしまうのはもうしょうがないんじゃないかと思う。だってショッピングセンターの中の映画館に着くまで十五分ぐらいかかっているんだ。しょうがない。二人とも方向音痴だったというわけではなく、冴木さんが周りの店に気を取られていたからだ。僕が必死に冴木さんを連れ戻そうとする様子を、周りの人が笑っていた。中には冷ややかな目を向ける人もいた。なぜだ。そんな甘酸っぱい関係でもないのに。
どんだけ恥をかけばいいんだ!
「や、やっと着いた」
「なにどうしたのー? 苦労しながら山を登り終えたみたいな感じで」
山ではないが峠は乗り越えたと思う。
「僕のことはいいよ、で、何見る?」
「うーん、わかんない」
衝撃の即答に思わず腰からへたりこみそうになる。なんのために苦労してここまできたんだ。
「ちょっと待ってほしい。なんのために僕がここまで苦労したか分かってる!?」
「別に時間があったから、もうちょっと見させてくれても良かったじゃん。それに映画なんて何でもいいじゃん」
冴木さんは頬をふくらませた。
何でも?......
「じゃあ、このヒーロー物の『チニソメルン 〜血の涙の理由〜』でもいいの?」
「うっ、さすがにそれはヤダかも」
僕の答えに冴木さんが顔を引き攣らせた。僕は考えを改めてほしくて聞いたのではなく単純にこの作品が好きなのでやめてほしい。でも同じ映画を二回も見る羽目にならなくて良かった。僕は一回みたらもう見なくていいタイプです。
冴木さんが慌てたように言ってくる。
「じゃ、じゃあこの恋愛物の『あなたに見てほしい』は?」
「僕恋愛物見たことないんだよねー」
「だから彼女いないんじゃない?」
ムカッ!
「冴木さんだっていないじゃないか....どの口から言うんだ....」
「今なんて言った?すごく不本意な事を言われた気がするんだけど」
「き、気のせいかと」
それより
「こんな馬鹿な会話してないで早く見に行かないと」
「そうだね、チケットは自分で買うからポップコーンとかドリンクは買ってね、かっこいいところみせたいんでしょ?」
ばれてましたか
映画の題名は適当に決めました。




