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02ヴァビルが違法賭博を行っている現場写真や詐欺の被害者の証言などが必要

 ヴァビルがミルナリスの名を騙って、金銭を詐取していた決定的な証拠になる。ヴァビルの口座に振り込まれた記録があれば、立派な横領罪。


「その口座の記録は残っているかしら?」


 聞いてみる。


「はい。ノラウグスト家の経理部に記録が残っております。ミルナリス様のご指示であれば、すぐに開示できます」


「ええ、ぜひお願いするわ。できるだけ早く」


 内心で歓喜した。これは大きな収穫である。メアリーとルグダムからの情報で、ヴァビルの悪事の糸口が見えてきた。使用人からの情報だけでは、不十分だ。

 より決定的な証拠、例えばヴァビルが違法賭博を行っている現場写真や詐欺の被害者の証言などが必要。前世の記憶をたぐり寄せた。


 裏社会には、情報屋が存在するので彼らを使えばヴァビルの具体的な行動を追跡し、証拠を掴めるかもしれない。

 情報屋と接触するにはコネクションが必要だし、貴族の令嬢がいきなり裏社会の情報屋に会うのは至難の業。考える。


 物語の中でヴァビル子爵とつながりのあった裏社会の人間はいたのか?と。


 あー、いた。物語の序盤でヴァビルが裏カジノで多額の借金を作り、借金取りとして登場する男が。男は後にヴァビルに裏切られ、ヒロインによって救われるのだが今は関係ない。


 重要なのは、彼が裏社会の情報に精通しているということだけ。思い出す。彼の名前はギルバート。街の裏通りで、小さな質屋を営んでいる男なのだが、表向きは質屋だが、裏では様々な情報を取り扱っているという噂を持つ。


 頷きながら思案する。ギルバートに接触することを決めた。そこに至るために、事前に根回しが必要だろう。

 貴族の令嬢が一人で裏通りを歩くわけにはいかないから、護衛を連れていく必要があるが他の使用人たちにヴァビル子爵の悪事を調べていることを、知られるわけにはいかない。


 どうしたものか。


「うーん、普通に怖い」


 自分の専属護衛であるフォビアンを呼んだ。フォビアンは寡黙で優秀な剣士。ノラウグスト家に古くから仕える騎士の一族の出身で、ミルナリスの幼い頃から護衛を務めていた。


「フォビアン、少し付き合ってほしい場所があるのだけれど」


「はい、ミルナリス様。どこへでも」


 フォビアンは、いつも通り無表情で答えた。信頼している彼なら、余計な詮索はしないだろう。


「街の裏通りにある、とある質屋に行きたい。人目を避けて、静かに」


 フォビアンは、ミルナリスの言葉にわずかに眉をひそめた。貴族の令嬢が、裏通りの質屋に行くなど、通常では考えられないことだから。反応してしまうよね〜。


 彼は何も言わずに、静かに頷くそれでこそ我が護衛。ミルナリスは目立たない地味なドレスに着替え、顔をフードで隠しフォビアンと共に馬車で裏通りへと向かった。


 質屋は埃っぽい路地の奥にあった。薄暗い店内に入ると、カランカランと古びたドアベルが鳴る。


「いらっしゃい」


 店の奥から男が現れた。小柄で痩せこけた体格に鋭い目つきで、これがギルバートだ。フードを少しだけ下げ、話しかけた。


「お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


 ギルバートはミルナリスの身なりを一瞥し、ニヤリと笑った。


「ほう。お嬢さんにしては、随分と度胸があるようだね。何の用だい?」


「ある人物のことで、情報を求めてる。人物は、ヴァビル・アンダース子爵」


 ギルバートはミルナリスの言葉に、わずかに目を見開いた。ヴァビルの名前が出たことに驚いたみたい。


「ヴァビル子爵、ねえ。あの方とは色々とお付き合いがあるものでな。さて、どんな情報が欲しいのかな?」


 ギルバートの言葉にミルナリスは確信した。男は、ヴァビルと間違いなく繋がっていると。わかりやすいのか、わかりやすくさせたのか。


「ヴァビル子爵が、違法な賭博に手を出しているという噂を聞いたのだけど、真偽を確かめたい。それが事実なら、証拠を手に入れたい。それから、彼が金銭的なトラブルを抱えている、あるいは、いくつかの詐欺行為に加担しているという情報も知りたい」


 具体的な情報を伝えた。ギルバートは興味深そうに見てくる。


「お嬢さん、なかなか詳しいじゃないか。一体、ヴァビル子爵とどういう関係なんだい?」


「それは、関係のないこと。情報を提供してもらいたいだけ」


 毅然とした態度で答えれば、ギルバートはミルナリスの度胸に感心したように肩をすくめた。


「ふむ。情報提供内容では、ただでは済まされないぜ。それなりの対価が必要だ」


「もちろんよ。見合うだけの対価は、惜しまないわ」


 懐から小袋を取り出し、金貨を数枚見せた。ギルバートの目が金貨に吸い寄せられる。


「結構な額だ。いいだろう。あんたの要求に応えてやる。だが、時間はかかるぜ。ヴァビル子爵は用心深い男だからな」


「構わない。どれくらいかかるの?」


「最低でも、数日はかかるだろう。確実な証拠を手に入れるにはそれなりの時間がいる。お嬢さんには辛抱強く待ってもらう必要があるな」


「わかった。連絡はどうすればいい?」


「また、この店に来るんだ。情報を手に入れたら伝えてやる」


 ギルバートの言葉に頷き、質屋を後にした。これでヴァビルの悪事を暴くための、裏社会の情報源を確保できたわけだ。


 数日後、ミルナリスは再びギルバートの質屋を訪れた。フォビアンは店の外で待機させている。余計な情報はない方がいいし。


「いらっしゃい、お嬢さん。待っていたぜ」


 ギルバートはそれを見ると、ニヤリと笑った。

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