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剣帝と呼ばれた一兵卒  作者: もやひと
ムンティホルムの戦い
53/152

分断

 フォルティドの兵士たちが、ひときわ木々の密集した地点を進軍していた、まさにその時。

「今だッ!」

 ブラナテラ軍が小隊長ヤコブの、姿無き号令が響き渡った!

 それに応えるが如く、巨木が数本、めきめきと音を立て、織り重なるように倒れ始めた!

 場所は、縦長に延びたフォルティド軍の隊列、その中ほど!

 それを受け、即座にフォルティド軍の先頭集団から号令が発せられた!

「グラヴィ隊、ロビータ隊は後退ッ! 指揮はグラヴィに預ける! 本隊は駆け抜けろッ!」

 あれが標的ッ――!

 ヤコブ小隊の隊員は、ある者は茂みの陰にて、またある者は樹上にて、その声の主を捕捉した。

 そして倒木は、全身の知覚を奪い取るかのような凄まじい轟音を伴い、フォルティド軍を前後に分け隔てた。

 かくしてブラナテラ軍は、まずは敵の分断に成功。

 数の上でも、まだブラナテラの側が少数ながら――それでも、戦える範囲にはなった。

 しかし、ヤコブ小隊の面々は、作戦遂行にあたっての不安を拭いきれなかった。

 フォルティド兵たちは、その統一された服装からも伺い知れるが――何より目を見張るべきは、精度の高い身のこなしと統率力。

 これは断じて傭兵の類ではない、間違いなくフォルティド公国の正規軍――しかも、その精鋭部隊――!

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