×千寿ー04(順応)
「あ、そうだ。聞こう聞こうと思って、ついつい忘れていたんですが、」
「んー?」
ダルそうに、机に突っ伏す千寿さん。完全に俯いてしまっている、聞いても大丈夫なんだろうか。
「あの、聞いてもいいですか?」
「ちゃんと聞いてるから大丈夫よー。」
手を頭の上でひらひらしながら言う。
「あのですね、最初はそんな感じじゃなかったですよね?」
「何て?」
のそりと顔を上げる千寿さん。
「いえ、ですから、最初はそんな風じゃなかったですよね?」
「何が?どういう風に?いろいろ略しすぎよ?」
「………最初は、何ていうか、もっとしっかりしてたというか、喋り方も今とは違いましたよね?」
僕がそう聞いても、しばらくボーっとしていたが、やがて思いついたように言った。
「あーあれね。あれは、まぁ色々理由はあるんだけど。一番大きいのは実験ね。」
「実験?」
「そう、実験よ。」
「…………………」
「…………………」
「あのですね、これも前から言おうと思ってたんですが、会話を区切る場所がおかしくないですか?」
「おかしくは無いわ。きっと。」
「…………それで、実験っていうのは具体的には?」
「営業する時の、話し方の。」
「あ、本気で将来占い師を目指すんですか。」
「…………………喧嘩売ってるのね?それは。」
「いえ、そういう事では。………そ、それより、いくつかって言ってましたが、他にも何か理由があるんですか?」
「そういう話の逸らし方は………まぁいいわ。他には、ちょっとした遊びだとか、あと……」
変な遊びをしないで欲しい。
それより、何でそこで言いよどむんだろう?
「あと?」
「………恥ずかしかったから。」
「恥ずかしい?」
「何で聞き返すのよ!!貴方は!!だから、まだあの頃は、人とどういう風に話していいか分からなかったからよ!!分かった!?」
「あ、はい。」
まだよく分からないです。
「不愉快だわ。出て行って!!」
気のせいだと思うけど、少し顔が赤い。
今のを言うのは、恥ずかしかったのだろうか。
「…………いや、僕はまだ英知に用が―――」
「出てけ!!」
「…………」
追い出されてしまった。