×千寿ー02(異端)
「ジョーカーって何だと思う?」
唐突にそんな質問をされた。
英知は読書に集中しているし、鞘香さんは、いつも通りに、何かを作っている。
それに、顔の向きからしても、明らかに僕に向けられた質問だろう。
「何って、それは、具体的な意味でですか?」
「聞いてるのは私よ。」
怒られた。というか窘められた。
………まぁ、質問に質問で返すのは良くないしな。
僕の思う所を言うとしよう。
「トランプの札、ですね。」
「あのね、貴方は私を馬鹿にしてるの?」
「いえ、すみません、冗談のつもりだったんですが。」
「………もっと具体的に言いなさい。」
そしてやはり、今日も命令口調だった。
いやまあ、怒らせた僕が悪いんだけど。
というか、僕は真面目に答えたつもりだったんだけど。ある意味では。
「そうですね、イレギュラーな存在だと思います。」
「ふぅん。」
「…………………」
「…………………」
いや!!いやいや!!そこで沈黙はおかしいでしょう!!
そういえば、前にもこんな事があったな。
「あの、それで、それが何なんでしょうか?」
「何が?それだけよ。」
「え、僕がどう思うかってだけ?」
「そうよ。不服?」
「………いや…………あの。」
続く言葉が上手く思いつかない。何と言っていいものやら。
「なかなか本質をついてると思うわ。その言葉の意味を、よく考える事ね。」
そんな僕を見かねたのか、千寿さんはそう付け加えた。
そして、視線を水晶に移す。
もう話は終わり、と言わんばかりに。
…………考えろと、言われても。