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22 謎のセンサー 【side 青木ティーチャー】

 ことりの母親と先日、近所のスーパーで出会った時の事。

 笹波家がホストファミリーをすると聞いて内心驚いていた。

 ホームステイに来た子と英語で話す機会が増えれば、もっとことりが英語の授業を好きになってくれると思っていたからだ。


 ことりの母親は、「半額」と貼られていくタイムセールの時間帯を狙ってきたのだろう。店員の横に立って、お目当てのアジの南蛮漬けに半額シールが貼られた瞬間、手を伸ばしてカゴに入れていた。


「ところで、何歳くらいの外国人がホームステイに来るのですか?」

「えっとねぇ、ことりと同じ年齢よ。だから、同じ高校に転入する予定だから宜しくね」

「わかりました。何かあればいつでもご相談下さい」


 そう言って、その時は別れたのだが後日、転入手続きの書類を見せてもらって目を見開いた。

 まさか、男が来るなんて思っていなかったからだ!!


 まさか、年頃の女の子の家に、多感な時期の男を一つ屋根の下に住まわせるなんて考えていなかったからだ。

 なんてことだ! ことりの母親は、そんな危機意識も持っていなかったのか!! 

 確かに陽キャでポケッとしているとは思っていたけれど、もうちょっと娘に配慮してやってくれよ!! と俺は、父親のような感覚になり、心の中で舌打ちをする。


 それから、ことりとルークという人物を遠目で校内で見かけることはあっても、タイミングが悪く、俺も授業の準備などがあり面と向かって会話することはなかったのだが。


 今朝は、嬉しいことにことりが俺の姿を見つけて、彼女から声をかけてきてくれた。その時は校内だから、近所のお兄ちゃんとしてではなく、先生として接していたのだが。


(何だ、コイツ)


 何となく、ルークからは俺と同類のニオイがして目が離せなくなる。


(コイツ、すでにことりに惚れているんじゃないのか?)


 俺の方が、何年も片想いをしてことりが成人するまで見届けるつもりで見守ってきたのに、同級生という立場を利用して正々堂々とことりの隣を歩いているのが、気に障る。


(前髪も鬱陶しいし、ダサい黒縁メガネまでかけているんだから、よっぽど根暗なアメリカ人なのか?)


 俺は、恋のライバルになりそうなルークをチラッと盗み見る。


(俺よりも背も高いなんてな。どっちが成人している男性かわからないな)


 チラッと向こうも俺を窺い見ている気配がする。メガネの奥から英語の先生という人物を観察しているのだろう。


(ん?)


 何となく違和感を感じる。こげ茶の瞳をしているが、とても目はパチリとしていて大きい瞳なんじゃないだろうか。

 髪もボサボサで、見た目はイケていないように一見すると錯覚してしまうが…


(コイツ、本当は顔の造形は整っていて、かなりカッコいいんじゃないのか?)


 俺の謎のセンサーが反応している。まだ先生として勤めた年数は浅いが、カッコいい部類の人間はすぐにわかる方だと思う。


 オイオイオイ。

 こんなイケメンがことりと同居なんて、まずくないか?

 ルークが一億歩譲って、誠実な男性だとしてもことりがルークに恋にしてしまう可能性もあるんじゃないのか? 


 ルークも何か感じたのか、会話を短めに切り上げるとことりと共に教室の方に行ってしまった。


「ヤバいな。俺もうかうかしていられないじゃないか。…でもルークは一年限定のホームステイだから…焦らなくても大丈夫だよな…」


 俺は恋路を邪魔になりそうな人物がことりの傍にいることに動揺してしまったが、ことりが彼に恋してしまわないように願うしかなかった。

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