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商会の建物

「さあ、ここが商会の場所さ!」

親父に連れられて俺は城下町の一角、東側に近い場所に建てられた真新しい建物の前にやってくる。

ここが俺の商会か……。建物の位置から考えて平民も貴族も来やすく、他の商会の建物も建っている。それでいてスラムにも近いため囮としての役割も果たせる。まさに、うってつけの場所だ。……仕事に公私混同させない人間で助かるよ。そっちの方が好感を持てる。俺は前提条件が『誰かの何かを護る』ことだから出来ないあり方だ。

「中々良い場所だろ?」

「あ、ああ」

邪悪な笑みを浮かべる親父に若干引きながら俺は店の中に入っていく。

中にはトランプやチェス、俺が辺境伯に情報提供した様々な商品がところ狭しと置かれていた。

辺境伯に流した情報は基本的にはその地域で取れる木材を利用した物だ。例えば曲げわっぱの弁当箱や編み細工のバッグは日本の大館曲げわっぱと奥海津編み組細工の物だ。

これらの物は辺境伯の領民が作った物だ。

元々、こう言った伝統工芸品は農作物が育たない時に手工業として発展してきたもので、それを工業化させるのは難しい。そのため、辺境伯に資料を与えて作らせるように促したのだ。

辺境伯が出した条件はあくまで従業員の中に農民たちを組み込まない事だ。そのため、農作物が育たない時期にのみこれらを作らせれば従業員にならない。何せ、『雇用』ではなく『取引』だからな。

そして、今陳列されている物は試験的に売られている物だ。在庫は……予想だけどざっと二百個ほどかな。

「一階は平民向けだ。ツクモの要望通りだろ?」

「そうだな」

俺と親父は一階から出て外付けされた階段を登って二階の店内に入っていく。

二階は下の階とはうって違い、豪華絢爛の内装も贅を尽くされていた。

こっちは貴族向けの店でこの世界であまり流通していないガラス製品や貴族でも滅多に手に入らない最高級の金細工が置かれている。

(何だこれ……)

俺はあくまで平民たちにトランプやチェスと言った遊びや紙を広めるために商会を立ち上げようとしていた。だが、これは完全に貴族の店内だ。そうなると平民と貴族との衝突が起きるかもしれない。そうなれば……流血沙汰にもなりかねない。

「親父。独断で動いたな?(・・・・・・・・)

「はっはっはっ!その通りだ」

これから起こりうることへの怒りで拳を握りしめながら高笑いする親父を睨み付ける。

これで貴族たちにこの商会の事をより深く知られ、囮としての役割をより一層強くなる。独断で動かれた事についてはとやかく言うつもりはないが、やはり癪に触る。

「それじゃあ、そろそろ代理人と会お


「その必要はありませんよ、ツクモ様」


「っ!?」

突然背後から何者かが喋りかけてきたため、前方に跳びながら尻尾で攻撃する。

「……いきなりの接待ですね」

「……俺の背後に立つな」

床を転がり背後を見ると攻撃を受けてもあっさりとしているウィルエントレイ族の女がいた。

この女、どこかで見た気がする。でも、一体どこで……。

「初めまして、私はサード(・・・)。ここの代理人を勤めるものでございます」

「……ああ。よろしくな」

僅かな疑いを持ちながら俺とサードは手を握る。

まあ、そんな事は後で考えれば良いか。

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