ライザ
「うぅうん」
二日酔いの重たい頭にはそれでも刺激が強い、ブラインドからの柔らかな朝陽がライザの赤い髪を照らす。
いつもの場所にあるはずの、パウチ容器のミネラルウォーターに手を伸ばす。
333mlの容量のそれは、まとめて冷蔵庫の上部に放り込んでおけばスロット状の取り出し口から、いつでも冷えた状態で取り出せる。
よく冷やされた333mlの水を飲み干し、音声コマンドで指令する。
「ブラインドを開けて」
「認識できません。もう一度お願いします。」
二日酔いの影響か、いつも朝一発目のコマンドは認識に失敗する。
「ブ・ラ・イ・ン・ド」「開けて」
シャー
心地よい駆動音とともにリニアモーターが作動し、ブラインドが上がり、窓の外の景色が腫れぼったい瞼の奥のライザの目に届く。
低空をドローンタクシーが飛び交い路上にはEVが溢れている。
一切の内燃機関は姿を消し、発電所の類も無いこの世界は腹立たしいほどの青空がどこまでも続いている。
SOLRと呼ばれるエネルギーインフラにより、化石燃料由来のエネルギーは前時代の物となっているのだ。
ライザの船はドックでメンテを受けている。クルーはライザ含めて約3名しかいない。しかもそのうち一人(一体?)は黒猫型のロボットだ。
半年間の航海を終えて、予想外に延びてしまった休暇を満喫すべく、自堕落な毎日を送っていた。
「ライザ、今日お昼…」
「あぁレオ、今用意するわ」
小学生の一人息子に急いでランチボックスを持たせる。レオを無事にスクールEVバスに乗せ、ライザは束の間の惰眠を貪る。
もう何時になっただろう。窓の外の太陽は大きく傾き、もう間も無くの夕暮れを告げている。
「ウソでしょ」
もうレオが帰宅するであろう時間だ。
急いで夕食の支度に取り掛かるライザ。
「えーと、今日はコレでいいか」
pizzaと書かれたコイン程の大きさの箱をフリーザーから取り出し、分子再配置型調理器に投げ込む。
数分後調理完了のビープ音とともに玄関のチャイムが鳴りレオが帰宅する。
「いただきまーす」
レオはこのピザがお気に入りだ。
なのに、ちょっと不満げな顔。
「どうしたの、レオ」
「なんか今日のピザ冷たいよ」
「えーと?、ゴメン」
振り向いてレンジを見る。供給電圧低下のエラーコードが一瞬見えた気がした。




