63話 情報精査
話はタルカを攻める少し前に戻る。
1人の女忍がサブロー・ハインリッヒに呼び出されて居た。
サブロー「よく来てくれたチヨメ殿」
チヨメ「人妻を呼び出すだなんて、娘ではなく私の方が好みでしたか?」
サブロー「あぁ、魅力的な女性だ…と言いたいところだが俺の心は、向こうに捨ててきたゆえな」
チヨメ「俺の心は何ですか?」
サブロー「実はな。既に決めた人が居るのだ」
チヨメ「まぁ。それはアヤメが悲しみますわね。それが実りましたら側室としてお側に置いてあげてくださいな」
サブロー「ふっ。考えておこう。此度、チヨメ殿を呼んだのは…」
チヨメ「主人には話せない内容なのでしょう?」
サブロー「流石、モリトキの妻だ。話が早くて助かる。モリトキに内緒でナバル領の背後関係を探ってもらいたいのだ」
チヨメ「ナバル領のですか?」
サブロー「あぁ。ベア卿の動きには一貫性があるように見えて全然ない。それに連れてきた兵たちのほとんどが傭兵と見える。本国からの密偵にしては、タルカ領のように臣下を連れてきているわけでもない。逃げてきたかのように思えてな」
チヨメ「成程。もし、調べて逃げてきたのがわかったらどうなさるつもりですか?」
サブロー「さてな。向こうの出方次第ではあるが…祖国を取り戻す覚悟を決めるのなら協力してやりたいとは考えている。敵の敵は味方ゆえな」
チヨメ「領主様。一つご忠言をさせていただきます。優しさは時に考えを鈍らせます。冷酷であれとは申しませんがこの地とナバル領を天秤にかけた時、決してナバル領をお選びになりませんように」
サブロー「あぁ、勿論だ。このことはまだ皆には秘密にしておきたい。頼めるか?」
チヨメ「かしこまりました」
それから数日後。
サブロー「モリトキも優秀だがその妻はもっと優秀ときたか…」
サブローは先程チヨメから受けた報告を思い出して居た。
チヨメ「サブロー様、ナバル領の件について御報告を」
サブロー「聞かせてもらおう」
チヨメ「ナバル領に居た傭兵の全てがベア卿ではなく、とある人物に統率されていました」
サブロー「ほぉ。興味深いなそれは」
チヨメ「サブロー様ならそう言うと思いましたので、詳しく調べたところ…ガルディアン王国の第二皇子であることが判明しました」
サブロー「ガルディアン王国の?」
チヨメ「このことをどう見ます?」
サブロー「ふむ。普通に考えるなら次期王位争いで、手柄を立てたいと考えた第二皇子が敵国に危険を顧みずに自身を補佐してくれている者と共に密偵として紛れ込んだと言ったところだろうが…継承順位の2番手に当たる者を密偵として送り込むなどあり得ん。十中八九投げてきたと見るべきだろうな。ガルディアン王国でも魔物の影がチラついてるように見える」
チヨメ「やはりそう見ますか。これは祖父から聞いた話ですが私たちが魔物の蔓延るダンジョンとやらを発見した時、ラルフ様はその管理を一任し、ドワーフ族が作った装備をくださり、妖精の守護を授けてくださったそうです。そのお陰で、祖父たちは魔物たちに臆することなく討伐を成功させ、ダンジョンから定期的に魔道具を得ることができるようになったのです。今まで、黙っていたこと申し訳ありません」
サブロー「チヨメ殿、気にするな。お主が何か隠していることは初めてお会いした時から見抜いておった。成程、モリトキは婿養子であったか…さてはこのことも知らんな?知っていれば俺が名を名乗った時、あのような反応はせぬはずだ。モリトキに知られぬためにチヨメ殿を用いた俺の判断は間違っていなかったようだな」
チヨメ「その慧眼、感服せざるを得ませんね。話を戻してもよろしいでしょうか?」
サブロー「あぁ、頼む」
チヨメ「第二皇子の名はジャックス。ジャックスは、ベア卿のことをフレミング閣下と呼んでいました。閣下とは、ガルディアン王国における将軍の地位に付く者たちの総称です」
サブロー「チヨメ殿、解説までありがたい。第二皇子が未来のために逃げ出すほどガルディアン王国の腐敗が激しいか…若しくはこれすら計略か…いや計略はあり得ぬな。そうであれば向こうは俺のことを上回るほどの知恵ものだ。俺の見た限り、ベア卿は頭よりも身体が先に動く方だろう」
チヨメ「では計略の線は無いと?」
サブロー「いや、考えたくは無いが第二皇子がめちゃくちゃ頭が回る可能性は捨てきれないだろう。チヨメ殿は引き続きジャックス第二皇子とやらの人となりをできるだけ調べてくれるか?」
チヨメ「かしこまりました」
話を終えるとまるで影に溶け込むかのようにチヨメが姿を消した。
モリトキ「お館様、先程チヨメの気配を感じたのですが」
サブロー「あぁ、すまない。アヤメのことで怒られていた。いつまでも好意に気付かないなんて可哀想ですとな」
モリトキ「そ、そうでしたか。お館様の手を煩わせてしまい申し訳ありません。家に帰ったらきつく言っておきます」
サブロー「そうしてくれると助かる。まだまだやることがたくさんあるというのに女と乳繰り合ってる暇はないからな」
モリトキ「はっ!」
あぶなかったな。
流石は、夫婦。
空気で感じ取るなど。
モリトキにはタルカ領の諜報をもっと振っておくとしよう。
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