第1話 【緊急クエスト】絶望の腹痛。迎えるは社会的な死か、それとも…
「どうしてこうなった」
視界がチカチカと明滅する。
いずれは異世界へと転生し、大魔導士として無双しているはずだった。
だが、今両手に携えしは、伝説の聖剣……じゃなくて、銀色のバーベル。
戦う相手は、空を裂くドラゴン……じゃなくて、俺を押し潰さんとする無慈悲な鉄塊。
そして、お約束の美少女ヒロインとの甘い共闘……のはずが。
「はい、八天さん! ラストもう一回、押し切って!」
天使の顔をした鬼教官によって、俺は地獄の淵へと文字通り追い込まれていた。
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遡ること、数日前――。
俺は、人生史上最大の危機を迎えていた。
いつもと変わらない、退屈な通勤時間。
今日も冴えない一日が始まる――そう思っていた。
だが突如、俺の腹の奥底にて、不穏な雷雲が蠢く。
食料を無駄にしないという俺の主義は、最悪の形で裏切られた。
さきほど口にした賞味期限切れの唐揚げ。奴は、善良な市民を装った魔王のスパイだったらしい。
俺の胃壁の内側で突如として反逆の狼煙を上げ、けたたましい警告音と共に《緊急クエスト》がスタートする。
便意、後悔、焦りの三重苦が俺を襲う。みるみるうちに顔色が蒼白に変わり、脂汗が頬を伝っていく。
「やっべ……これ、会社まで持たねぇ……」
道中、立ち寄れるコンビニはない。家に戻ろうにも、もう間に合わない。
腹の中で繰り広げられるターン制デスマッチ。“雲虎”との死闘は、すでにクライマックス。だが、敵は強大すぎた。
詰み、完全敗北確定──
「……社会人としての生命を終えるか、道端の草木に栄養を与えるか……!」
どちらを選んでも、人としての尊厳を捨てることになる究極の二択。
だが窮地に陥ったことで極限まで研ぎ澄まされた俺の“心眼”が、普段なら見逃していたはずの“それ”を捉えた。
左手に見えた、小さな建物。
真っ赤な背景に白文字で、こう書かれている。
「最高の自分を目指せ!未来を変えるのは今!エンチャントジム」
「ここだ……! ここしかねぇっ……!」
このままでは、社会的な死を伴うバッドエンドが確定する。でも、ここなら……“何か”が変わるかもしれない。
──いやいや違う! 俺は今、とにかく!
兎に角!
「トイレがしたいだけなんですけどおおおおお!!!」
※完結済みのため、エタる心配はご無用!最後まで駆け抜けますので、安心してブックマークをお願いします!




