スケベな親友と雨のアバンチュール 4話
カッカ……カッカ……。
自分の部屋でノートにボールペンを走らせる音がする。
エジソンランプが机の上をオレンジ色に照らして、ただひたすら勉強に集中させている。
最近はこの時間が楽しくなりつつある。
数年前は勉強がこんなにも打ち込めるものだとは思いもしなかった。
そして、タイマーがなって俺は少しだけ身体を休ませてスマホをいじっていた。
「ふー!今日はここまでかな……。」
これ以上は頭に入ってこない、ぼんやりとした頭の中で今日1日の事がフラッシュバックした。
俺の親友、飯田蓮……。
そして、それを思う下級生の水無月メア。
しかし、飯田は今は別の女性と同居をしている。
家族でもなんでもない、むしろだらしなくて支えてる側の人間としてあいつは疲れている。
水無月さんは変わった子だけど、今あいつが笛吹さんを支えるよりかはいいんじゃないか?
飯田は良い奴だ。
でもだからこそ実は優柔不断なところがある。
もしかしたら、あの子がそんなアイツの助けになるかも。
そう思うと、俺は彼女の味方になろうと思えた。
そして、今日もゆっくりと布団に入り、俺はぐっすりと眠る。
少し厳しいかもしれないけど、これはあいつのためだから。
俺は、エジソンランプを消して疲れた身体をベッドに委ねると、あっという間に深い眠りについた。
☆☆
翌日。
「おっはようございまーす!」
「あ、飯田くんおはよ!」
いつも通りの朝に、あいつが来た。
今日も母ちゃんの顔を見て二ヘラ顔をしている。
だけど、いつもより視点を変えてみるとあることに気が付く。
飯田は……少しやつれてるように見えた。
明るく振舞ってるけど、明らかに表情は疲れていた。
「お?どうした、直輝……浮かない顔して。」
「いや、なんでもない。ちょっと勉強してて疲れが残ってたみたいだ。」
「うっわ……真面目だな〜。」
「飯田くん!コーヒー淹れたわよ!」
「お!いつもありがとうございます!……ひゃあ〜カフェインが染みるっす!」
飯田は部活や生徒会もしてるのに、人の世話もしている。
きっと、キャパオーバーでそれが顔に出てしまってるのかもしれない。
俺は……親友としてこの男に向き合うのを忘れていた。
こいつなら大丈夫だと思ったけど、そんなことはないはずなのだ。
そして、いつものように登校をする。
最近、雨季が続いて今日も雨だった。
雨は嫌いでは無いけど、コンプレックスの天パがうねるからあまり好きじゃないんだなと思い知らされる。
そして、飯田と二人で話して歩いて、少し踏み込むことにした。
「なあ……飯田。お前疲れてないか?」
「え?まじ?」
「まじって……よく見たら目の下クマ出来てんぞ!俺で良ければ相談に乗るから、ほんと……大丈夫か?」
しまった、朝からカッとなってしまった。
飯田と少しだけ無言で歩く。
すると、飯田は少しだけ息を吸ってから話し始めた。
「ちょっと……疲れは溜まってたかもな。」
飯田は素直に教えてくれた。
いつもはみんなの前で上手に振る舞うあいつが、久しぶりに弱みを見せていた。
「生徒会やりながら、水泳の練習して……家帰ったら笛吹さんが部屋を散らかしてそれを片付けて、料理作ってで……少し忙しいんだよな。」
「飯田……。」
明らかに彼は自分の時間がない。
それって無意識に疲れてそれを癒す場所が無いのかもしれない。
やっぱり、あいつとあの人は生きてる世界が違うんだ。
「なあ、飯田……しんどいなら俺は手助けできる立場で居たい。俺はお前に助けて貰ってばかりだ。」
「ああ、いいんだ。確かに忙しいけど……今の生活気に入ってるんだ!」
本当だろうか?
強気で言ってないだろうか?
具体的に何を気に入ってるのだろうか?
今俺たちは本音と建前の綱渡りをしている。
まるでこの歩道橋のように、どっちに転んでも転落しそうな……そんな難しい会話をしている。
踏み込みすぎてもあれだし……かといって当たり障りのないことを言っても意味が無い。
とりあえず、俺は水無月さんとの約束も交えてこいつの助けになろうと思った。
「飯田、たまには飯でも行かないか?」
「お!まじ?そうだな〜直輝と話したいんだけど、最近お互い忙しいしな。」
「なら!その時またゆっくり話そうぜ!俺はお前の味方だからさ!」
「はは……なんだよ。でもありがとう、お前のそういう所が有るから、俺は親友だと思ってるのかもしれないな。」
俺は、飯田と約束を交わすことができた。
何気ない会話だけど……少しでもそれが彼にいいキッカケになればいいと思う。
「んじゃあ!俺職員室で松本先生と打ち合わせしてくるわ!」
「ああ……また後で。」
俺は飯田と別れて水無月さんに約束が取れた旨を伝えた。
すると、直ぐに既読が着いて着信がかかってきた。
「もしもし……。」
「先輩!今会えますか!」
「ああ、いま昇降口にいるよ。」
しばらくすると、水無月さんが足音を立ててこちらへと来る。
運動は慣れて無いのか息が上がっていた。
「せ……先輩……お……おは……ゲホッ!」
「うん、まずは落ち着け?」
俺たちはいつもの通り空き教室で2人座っていた。
昨日と同じなようで、少し違う雰囲気で座っていた。
「飯田先輩とアポとったんですね!」
「いや、言い方な。」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「まあ……あいつもさ、断れない性格だからもしかしたら本人が気づかないまま負担になっていたら親友としても嫌だからね。もしかしたら、君みたいな子があいつの救いになると思ったんだよ。」
ぶっちゃけ、この子も変人だけど……でも飯田に負担や迷惑はかけない気がする。
昔の俺に似てる彼女が人と関わる良いきっかけにもなりそうだしウィン・ウィンが成立するわけだ。
「よし、じゃあ作戦会議するか!」
「はい!」
雨の滴る空き教室。
少しだけそこは雨漏りしていてあかりが暗く不気味な雰囲気を出している。
まるで、この後このふたりの行先が不穏なことを示すかのように。
そして、それ気づくこともなく俺たちは朗らかに笑っていた。




