アラサー女教師たちと戸隠神社 2話
時刻は朝9時、通勤ラッシュの概念がないゴールデンウィークのこの東京は少しザワついてるようにも見える。
私こと松本みなみは少しだけ二日酔いだった。
いけない、私はストレスを感じるとすぐ酒に逃げてしまう。
そのせいかよく財布が軽いと感じる時が多々ある。
少し節約もしなきゃと戒めつつ、私はフラフラのまま駅から降りたところにある広場で待ち合わせをしていた。
そして、ようやく到着すると宮島先生と佐々木先生が既に立っていた。
「おはよーって……あんた!昨日程々にしなさいって言ったのに飲んだでしょ!顔げっそりしてるわよ!」
「お……お疲れ様です……。」
宮島先生は相変わらず説教する。
でも、最近は嫌味とは感じず少し愛を感じてる気がしてこのやり取りも楽しいと思える自分がいた。
「ほら!このちんちくりんなんて、私よりも30分早く来てたみたいなんだから!」
「……え?佐々木先生……私より1時間弱も早く来てたんですか?」
この背が低い女の子は佐々木結愛先生。
理科を担当している同僚である。
背が小さく可愛らしいイメージがあるが実は2個上なのと喫煙者など色々ツッコミどころが多い人だ。
「……全く、社会人たるものプライベートこそ健康維持に務めるべき。」
「そ……そうなんですね。すごい。」
すると、得意げに腕を組む佐々木先生にちょっと宮島先生が少し睨んで突っ込む。
「あんた、本当は何してたの?」
ん?本当?
「……ナンパしてきた男が俺は体力に自信があるとか言ってたから朝まで搾り取ったら逃げられた。」
「うおおい!?私より不健全なことしないでくださいよ。」
少し合点がいった。
そういえば佐々木先生授業に遅刻するリベラルなタイプだった。
「……あ、でも身体はちゃんと洗ったから安心して。」
「い……いや、聞いてないです。」
佐々木先生はドがつくほどのスケベである。
こうしてたまに男を食い荒らすのだけど、性欲が強すぎて大抵の男は逃げ出すのだ。
見た目は10代の少女のようなのに……夜ではどんな姿になるのだろう。
「さて!しょーもないワイ談は置いといて行くわよ!」
「「はーい。」」
こうして私たちは、約束通りホットヨガに行くのだった。
☆☆
「へ〜これがホットヨガスタジオ。」
なんというか、私とは違って美意識の高そうな女性が並んでいた。
髪がサラサラしていて、肌が綺麗……なにより、猫のように引き締まって、しなやかな体つきをしていた。
私のお腹は……う、摘める。
流石にダイエットした方が良さそうだ。
水素水を少し飲んでから部屋に入るとまるでお風呂のように蒸し暑い部屋になっていた。
サウナよりは少しぬるく、それでいて湿り気が体の表面にへばりつくようだ。
「じゃあ、まずは簡単なポーズから取りましょ!」
私たちは指定のポーズをすることになった。
宮島先生は手馴れていて、ポーズだけでも美しく感じた。
あとついでに佐々木先生もポーズが完璧だった。
ちょっとムカつくけど佐々木先生はなんでもできるタイプだった。
その気になれば料理とかスケボーとかも要領よく掴むことができる。
そして……私は。
「ま……松本先生……?大丈夫?」
「……足の角度が違う。それにバランス感覚も悪い。」
身体が硬かった。
普段山のようなデスクワークで座りっぱなしなのと、朝までダラダラ酒を飲む体たらくが見事に身体の硬さに響いていた。
「だ……大丈夫ですよ……これで、ひぃ!」
そして、腰がビキリと響く感覚があって私は床に突っ伏していた。
「……大丈夫?」
「すみません、そういえばこの前腰やってたの忘れてました。」
「あんた、26なのに……。」
まだ20代だと思ってたけど、思ったより私は老化が激しいみたいだった。
髪のケアだけじゃない。他にもケアをしておこうと思った。
少しレベルを下げて本当に初心者向けのポーズにするのだけど、久しぶりに汗をかく感覚が気持ちよかった。
悪い老廃物がデトックスされて、身体がほぐれる感覚が心地よい。
最初こそ手こずったけど、デトックスしていい女に近づいてる感じがする。
「……ああ、眠気も吹っ飛びそう。」
「いや、佐々木先生だけなんか違いますよ。」
「……私はある意味運動してるから余裕。」
「下ネタ絡めないと会話できないんですか!?」
ツッコミを入れると、他の女性たちもこちらを見てしまう。
いかん、明らかにバカ丸出しだ。
「松本先生?今だけはこいつに構うのやめましょうね?こっちまで恥ずかしいから。」
「肝に銘じておきます。」
適度に水素水で補給をしつつ、私たちはホットヨガを終わらせてシャワーを浴びて外に出る。
すると、なんということだろう。
さっきまで二日酔いで灰色に見えていた世界がこんなにも彩ってみえた。
しかもクーラー使ってるせいで慢性的に体温が低い状態も解消されて、身体が活発になるのを感じる。
人って、体温大事なのだと語彙力に欠けた感動をする程だった。
「てか、まだ11時なんですね。」
「そうね……あ!ついでにスタバでも行かない?」
「……あり、カフェインなんて飲んだら最高に整いそう。」
私たちは、最高の朝活を終えてガールズトークに花を咲かせることにした。
結局いつもの学校と同じ感じになったけど、これはこれで少し特別な感じがした。
私の休日はまだまだ続く。
この後も波乱万丈な時間が来ることを、知ることもなく。




