「僕のお母さんは△▽女優」1周年&累計5万PV記念回
……またか。
俺、天野直輝はこの経験を何度もしている。
何故か舞台に立たされていて、タキシードを着ていて上を見るとくす玉があったので明らかに今日は普通の日常とはかけ離れている。
とはいえ体育館の壇上なので妙にすきま風が寒いのを感じてまだ冬なのだと感じる。
やるならさっさとやって欲しいんだけど……。
「なー!次何あるんだ?記念回やるのはいいんだけど、こっちも事前に教えて欲しいんだけど?」
……?
返事がない。
どうやら、こちらの権限はないようでため息を着くと隣の暗がりから声が聞こえた。
「……ふっふっふ、今日は本当に特別な日なのよ?」
「いや、母ちゃん……あのね?いつも俺若干置いてけぼりなのよ。傍観者寄りで司会させられてるのよ。」
「OK!じゃあ……これから始めるわよ!ライトオープン!」
すると、母ちゃんがライトアップされる。
大胆にも赤いドレスを着ていて褐色の肌が綺麗に見える。
とはいえ、あくまで母親と認識してるせいかそこまで意識するほどではなかった。
しかし、母ちゃんは脇を上げて妙にウザったらしく俺にアピールをしてきる。
「どう、似合ってる?セクシー?」
「……それを実の母親に聞かれるこっちの身にもなってくれない?」
「ちょっ!それはそれで悲しい反応なんだけど。」
「……で今日はどういう日なんだ。」
いかんいかん、母ちゃんのペースに乗ると5割増でこの空間にいなきゃ行けなくなる。さっさとコタツに入って眠りたいものだ。
「ゴホンッ!今日はね……誕生日なの!」
「へ?誰の?」
「ああ……くす玉を開いて見ればわかるわよ。」
「なんだよ……とりあえず開けるぞー!」
今日は3月3日……。
全くどんな日か思いつかないのと、母ちゃんの主語を言わない性格のせいで更に混乱してしまう。
そして、俺は紐を引っ張るとくす玉の中から祝!僕のお母さんは△▽女優1周年という紙が出てきて更に色紙が俺たちの周りに舞い落ちてきた。
「実は……僕のお母さんは△▽女優が初めて投稿されて、ついに1周年が経ちました!!」
「ええ、そうなの!?」
どうやら俺たちの物語が1年経っていたようだ。
時間の早さとこれまでの経験が同時に降りかかる感覚がたしかにその時間を心の中に刻んでいたことを知った。
「なんか、1年ってあっという間なんだな。そういえばこの頃に俺と母ちゃんが喧嘩して、そこから色々変わったんだっけ。」
「ねー!タイトル出オチ感半端ないから最初直ぐに終わるのかと思ってた!」
いや、それが主人公の言葉かい。
まあでも母ちゃんらしいし、俺もぶっちゃけそう感じていた。
「……で、いつものあれかな?」
「うん!作者からも手紙もらってるよー!」
母ちゃんは手紙を読み上げてスポットライトの色が変わる。
さーて、どんな言葉が来るのやら。
「読者の皆様、いつもご助言や応援してくださるフォロワー様、そして……天野家を始めとする皆様。皆様のお陰で僕のお母さんは△▽女優は1周年……及びなろう&カクヨムにて累計5万PVを獲得できました。」
いや、固すぎやろ!ライトノベル小説だよね?これ。
「最初、従兄弟とタイトルを決めてノリで始めたこの小説がまさかここまで来るとは思いもしませんでした。エロいタイトルで家族愛と成長……という逆張りの発想から始まったこの小説、まさかここまで来るとは思いもしませんでした。」
確かに俺の物語はそんなハプニングがあることは無かった……はず。
俺の周りにいる人達とそれぞれの家族愛を感じながら輪が広がってる。そんな感覚に溢れていた。
「正直、僕一人の力ではここまで来れませんでした。ほぼ毎日書いてまだまだ目まぐるしい結果を出せた訳では無いですけど、そこからたくさんの人に恵まれて私は大きく変われた気がします。正直それまでの人生失敗だらけで夢も希望も無く自殺を考えてた私が、少しずつ生きたいと思えるようになっていきました。」
いつも明るい作者だったけど、時折ものすごく思い詰めた顔をする瞬間があった。彼の生い立ちは俺たちも知らないけど、きっとそれなりに大変な人生だったのかもしれない。
「悩みながら、並行して資格を取ったり作品の取材のために旅行して私は先日宮古島まで行ってきて、ある決断に至りました。これからも生きようと、そして私のコンテンツをもっと盛り上げようと思います。」
宮古島……え?沖縄?
実は今作の場所は大体作者が行ったことがある場所だけど本当に行動力があると思う。
「さて、これからについてお話します。私は何度もこの作品を完結した方がいいのでは、読む人に98万文字、及び365話も読んで頂くのも大変なんじゃないかなと……作品が大きくなる度に悩みました。リメイクも考えるほどです。」
え、98万文字?本できるじゃん。
分厚い本で僕のお母さんは△▽女優って書いてあったらと少し笑っちゃうかもしれない。
彼の積み重なりは努力の結晶のはずなのに、どうやら読みやすさとか彼なりに考えてるのかもしれない。
「なので、ある事を皆様に宣言しようと思います。私もまだまだですし、直輝には医者になるという夢ができました。それを中途半端に終わらせたくありません。なので、2年目もほぼ毎日投稿させていただこうと思います。」
「おお……がんばれー!作者!」
まさか、こんなタイトルにそこまで思いを込めてるとは思わなかったけど、俺も彼に報いるためにも医学部を絶対合格しなきゃ。
そう思うと力が湧いてきた。
「さらに発表です。実はもう始まってるのですが……過去の話をリメイクします!具体的に……1話ごとAIですがオリジナルイラストを添付してよりたくさんの方に楽しんでもらおうと思います!」
確かに最近イラストを加えることでかなりたくさんの人に見て貰えるようになった。
これからも作者はよくするように頑張るのかもしれない。
「最後になりますが、今後とも僕のお母さんは△▽女優をお願いします。」
俺も母ちゃんに合わせてお辞儀をする。
こんなに見てもらえてるのだ、少しでもシャキッとしなきゃ行けない。
そして、カメラマンの飯田がカメラを構えてこっちを向いた。
「……飯田、こんなところに。」
「直輝ー!これから写真撮影するから、1周年だから人差し指立てた感じで頼む!」
「こうか?」
母ちゃんも楽しそうに指を立てた。
「えへへ!なんかこういうのいいね。」
「寒くてしょうがないからさっさと終わらすぞー。」
「はいはい。」
「よし!撮るぞ!はい、チーズ!」
飯田のカメラからシャッター音が流れ、周りにはたくさんの人の拍手喝采が溢れていた。
こうして、相変わらず説明なしの混沌とした記念回は幕を閉じるのであった。
「ふー!疲れた。」
「いや、母ちゃんマイペースやな。」
「あ、ひとつ言い忘れてた!」
「……え?」
「次回!春と挫折と宮古島!楽しみにしてね!さーて次回もサービスサービスぅ!」
母ちゃんがどっかで聞いたことあるようなフレーズを言って投げキスをしていた。
うーむ、キツい!息子としては即座にやめて欲しいものだ。
俺はため息を着いて空を見あげた。
作者もこうして頑張っている。
俺も紆余曲折あってやっと医者になる目標ができたのだ。
これからも彼と伴走して、この物語を楽しむとしよう。
そう思うと、この体育館の寒気も少しだけ心地良くさえ感じていた。
「母ちゃん。」
「なに?」
「……1年、ありがとう。」
「あはは!何よ急に……これからも、よろしくね!直輝!」




