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「聞いてほしいことがあるんだ」
そう言って僕は、テーブルを挟んで目の前に座っている人物の顔を見た。
その人は、ニコリとほほ笑みながら僕を見ている。まるで『何があっても僕の全てを受け止めるよ』と言ってくれているようだと思った。
ふうと息を吐き、僕は語り始める。
「僕は昔恋人が二人居たんだけど、二人とも僕と付き合っている時に亡くなったんだ」
「最初の彼女はね、僕が人生で初めて付き合った人だった。大学一年から彼女が亡くなった三年まで付き合っていたんだけど」
当時を思い出しながら話を進めていく。
「僕的には、わりと良いお付き合いをしていたと思っていたんだ。君の前で言うのは、失礼かも知れないけど……僕は、この人と結婚するんだと思っていた。……でも」
言葉を区切り、テーブルに置いてあったお茶を飲む。
この話をする時は、いつも緊張する。
「ある日、アパートの彼女の部屋を訪ねると――彼女と知らない男が一緒に死んでいた」