友達(無能力者)
2年生になってしばらく経つが未だ実感はない。
何せ僕が女子高生をやっていること自体に現実離れしているからだ。
よくぞ女ばかりの学校で1年間過ごせたものだ。
女子校にしかも僕自身が女子として潜り込むなんて考えもしなかった。
正直、刺激的な毎日を送ってきた。
なぜ、僕が女子校に溶け込めたのか謎だ。
僕が溶け込んだと言うよりも周りが僕に合わせているのだろうか。
最初は元男子と言うことで警戒されていたのかも知れない。
でも次第に僕のことを周りは気にしなくなって来た。
着替えも最初は僕に遠慮しつつクラスメートはそれをしていた。
でも次第に僕の目の前で堂々とするようになった。
僕も初めは拒んでいたけど今ではさほど気にしなくなっている。
慣れって恐ろしい。
今ではクラスメートと一緒にお風呂に入るので出さえなんとも思わない。
僕も同じ女子だからなのだろうか。
それとも男には戻れないと踏ん切りがついたからなのか僕には分からない。
さて、僕が女子としての生活に支障が無いのは理由がある。
僕自身の努力はもちろん。
この学校に入る前に1年間女子として暮らすリハビリみたいなものをしてきた甲斐もある。
そしてクラスのみんなのサポートもあった。
僕の弟子たちは口あるごとに僕に女子としての自覚を強いてくる。
僕も馴染むようにそれに応えるように努力してきた。
でもそれ以外にも理由がある。
その前に説明しなければならないことがある。
僕たちがいる特進クラスだ。
表向きは学力が高い進学クラスだが実情は違う。
何せこの特進クラスは普通の生徒からは認知されていない。
つまり秘匿にされているクラスだ。
ちなみに学年に1クラスだけ。
生徒会長は特進クラスだが一般生徒から何処のクラスに属しているかは謎とされている。
ちなみに僕らは特進クラスのことを特殊科とも呼ぶ。
特殊科はクラスの半分は能力者だ。
つまり、僕ら以外にも能力者は沢山いる。
それぞれ自分の能力は秘匿されているので誰が能力者なのか分からない状態だけれども。
でも僕は誰が能力者なのかは一発で分かる。
それはどうやって調べるかは内緒。
とにかく僕は一目で能力者かそうでないかを見極めることができる。
自慢じゃないけど。
ということはクラスの半分は無能力者だと言うこと。
もちろん、彼女たちは能力者の存在をしてこのクラスにいる。
ではなぜ、無能力者である彼女たちは僕らのクラスにいるのだろうか。
理由は簡単。
彼女たちは天才だからだ。
それも僕らも舌を巻くぐらいに。
何せこのクラスは1年で高校3年間の内容が終了する。
2年生からは大学レベル、3年生からは(大学)院レベル。
到底僕たちには理解ができない範囲まで及ぶ。
僕たち能力者は授業の半分も理解ができない。
能力者といえども学力は普通に平均的なものでしかないから。
でも(無能力の)彼女たちは違う。
彼女たちは授業の内容をしっかりと把握しているから。
僕も彼女たちに試験の度にお世話になっている。
彼女たちも気にせず教えてくれる。
彼女たちは僕ら能力者のサポート役に将来なってもらうらしい。
そのためにもかなり頭の良い人たちが選抜されている。
ちなみにこの学校に入ってきて一番最初にちゃんと声をかけてきたのは委員長でも弟子たちでもなく無能力の娘たちだった。
特に今から紹介する3人とは今でも仲良しだ。
彼女たちの名前はさとうさん、すずきさん、たかはしさん。
彼女たちはいわゆる腐女子らしい。
腐女子とは僕も知らなかったんだけどBLが好きな女子のことを言うらしい。
彼女たちは僕の生い立ちに興味があった。
だから根掘り葉掘りその事を聞かれた。
一通り聞かれた後、僕は彼女たちから女子としての常識を教えられた。
それは今でも役に立つぐらいに。
ある日、さとうさんは
「あおい(僕)って、元男の子だったなんて信じられないよね。
姿はもちろん、声や仕草だって完璧に女の子だし。
女の子としての常識を知らないのはご愛敬だけど、私たちのアドバイスがなくても絶対に元男の子だってバレないって」
僕は
「1年間の練習の賜物かな。
この学校に入る1年前、1年間、女子として生活できるようにみっちり扱かれたからね」
と応えた。
彼女たちは僕の良き相談相手でもある。
能力のことは相談できないけどそれ以外のことは全て話しているような。
「好きな娘ができたんだ」
と僕が相談したことがある。
僕が一目惚れしたあの娘のことだ。
彼女たちは一様に
「え、男の子じゃないの?」
と驚いていた。
どうやら彼女たちは僕が男の子を好きなことにしたいみたいだ。
すずきさんは相手のことを聞いてから
「今年の1年生の中で一番の美少女じゃない。
ちょっと待って」
そして3人が一斉に「補正」と叫んだ。
たかはしさんが
「大丈夫、補正ができたから。
大体、可愛すぎる女の子は女の子であるはずがない。
男の娘同士の恋愛、応援するわ」
「いやいや、彼女はれっきとした・・・」
と僕が言いかけるとさとうさんは
「大丈夫。
妄想と現実の区別はついているから。
でも私たちにはそういう設定にしておいて。
あおい(僕)のことも結構妄想させてもらっているんだからさ」
僕は呆れて言葉が出なかった。
ちなみに彼女たち3人は自分たちで漫画サークルを作っている。
彼女たちの漫画を1回見せてもらおうとしたがなぜか断られてしまった。
「あおい(僕)には純粋でいて欲しいの」
と言う謎の言葉を残して。
彼女たち3人は僕を男として扱ってくれる。
(矛盾しているようだが僕を女子として接した上で)
だから僕も気兼ねなく彼女たちのグループに所属している。
そして彼女たちはなぜか少年漫画や少年アニメに詳しい。
僕が持っている漫画やアニメDVDは彼女たちが無償でくれたもの。
彼女たちがなぜこういったものを持っているのかを僕は知らない。
とにかく僕は彼女たちのおかげで結構助かっているのだ。
これからも彼女たちに助けを求めるだろう。
とにかく彼女たちは3人は僕にとってかけがえのない友達です。




