ピンポン少女〜前編〜
(今回の話は主人公の弟子、灰庭 忍葉の視点でお送りします)
やっと夏休みだ。
しかし私たちには休みがない。
師匠(主人公)曰く授業がない今は朝から夜まで修行漬けが出来るまたとない機会だと言っていた。
正直私たちにとってはたまったものではない。
学校の夏休みの宿題だけでも普通の学校の倍以上有るのにその上修行だなんて。
しかし、師匠は夏休みの前半、用事があるみたいで私たちの修行を見ることが出来ないという。
私たちは内心喜んだ。
しかしその喜びも束の間、私たちの修行は続行することになる。
師匠は
「え〜と、僕のいない間、君たちはある場所に行って修行してもらいたい。
え〜と、その前にこの学校は広い敷地を有する。
海水浴場やスキー場、キャンプが出来る山も所有している。
その山奥に山小屋がある。
そこには人が住んでいてこの学校の卒業者、もちろんたぐいまれな能力を持っている女性が住んでいる。
その女性の名は卓間 球和さんという方だそうだ。
僕がいない間、その人に修行を付けてもらうことになる。
ちゃんと教えを請うように。
後、注意して欲しいのは彼女は非常に小さい、背が低いのだ。
僕も直接会ったことがあるから言えるのだが彼女に対して「小学生」という言葉は絶対に使わないで欲しい。
これは約束だからね」
といろいろと忠告を受けた。
次の日、私たちはとにかくその山小屋を目指した。
朝出れば昼ぐらいには着くだろうと師匠は言っていた。
ていうかうちの学校はどんだけ敷地が広いんだよ!!
山道も結構厳しいし。
忍びの里出身の私だから楽に登れるが、他のメンバーはヘトヘトだ。
私は
「さぁ、みんな頑張って!!
あと少しでゴールよ!!」
と励ましながら進んだ。
いくら修行で鍛えているからと言ってこの山道は厳しすぎる。
氷見谷さん、海城さん、芸林さん神居さんはかなり疲労困憊のよう。
昼ぐらいには着くと言うことだったのだがもうとっくに昼は過ぎている。
私たちは昼食は山小屋で食べようと思っていたのでお弁当も持ってこなかった。
それが今は一番悔いている。
夕方頃、ようやく山小屋に着いた。
山小屋には小学生らしき女の子が私たちを出迎えた。
ゴスロリ衣装のカワイイ女の子だ。
この山小屋に似つかわしくないほどにカワイイ。
私たちはその小学生らしき女の子が師匠の話した卓間さんだというのにすぐに気づいた
私が代表して
「あなたが卓間さんですか?」
と聞いてみた。
その人は
「あなたが遠山さん(主人公)が言っていた人たちですね。
ようこそ遠路はるばるご苦労様です。
昼ぐらいには到着すると聞いていたのでずいぶんと遅いご到着ですね」
と軽いジャブをにこやかに入れられた。
続けて
「遠山さんから聞いていると思いますけど、僕じゃなかった、私は卓間 球和と言います。
この山小屋で修行の研鑽に明け暮れています。
これから一週間、僕じゃなかった私があなたたちの修行を見ることになります。
早速、僕じゃなかった私があなたたちの食事をご用意いたしますね」
しばらくすると彼女が豹変した。
「あ〜、めんどくせ〜。
普段のしゃべり方に戻すわ。
普段こんなかしこまったしゃべり方はしねぇんだわ。
一人称も「僕」だしね。
遠山さんに本性がばれないように猫かぶってろって言われたけどこんなしゃべり方するとむず痒くなっちゃう。
やっぱ、普段のしゃべり方に戻すわ」
私たちが呆気にとられていると
「まずは食事を用意するから、さっさと食べて修行を軽く済まそう。
と言っても今日は疲れただろうから僕の能力を見て勉強するんだな。
多分君たちが見たことのない能力だろうから」
私たちは早速夕食を取ることにした。
あの性格の人物からどういった食事が出るのだろうかと思っていた。
大雑把な性格そうだからさぞかし料理もおおざっぱなのだろうと思っていた。
しかし、期待に反して料亭クラスの料理が並んだ。
私たちは舌鼓をうち大変楽しい時間を過ごした。
夕食を食べた後、私たちは同情らしき場所に通された。
そこにあったのは1台の卓球台。
そして、彼女は卓球のラケットを持って私たちを出迎えた。
「これから僕はいろいろなパフォーマンスを見せようと思う。
もちろん能力を使ったパフォーマンスだ。
しっかりと見てくれ」
と彼女が言うと1人で卓球をし始めた。
私たちは呆気にとられた。
なぜならば対戦相手がいないのにちゃんとピンポン球が帰ってくるのだ。
もちろん壁に当てている訳でもない。
まるで透明人間と対戦しているかのようだった。
そしてそのラリーは次第に速くなり私たちの目では追いつけなくなるほどの速さに。
気がつけば彼女は宙に浮いていて姿勢もあり得ない状態でラリーを続けている。
常人には理解が出来ない光景だ
ピンポン球も目の錯覚なのか複数に見え始めた。
そして彼女自身も複数に見える。
しばらく見ていると目の錯覚ではないことに気づいた。
ピンポン球も彼女自身も分身をしているのだと。
そんな光景が1時間ほど続いた。
そしてそれが終わると彼女は
「明日からこれをマスターしてもらうから頑張ってね」
と笑顔で私たちに告げた。
「いや、絶対に無理だから」と私たちは心の中で叫んだ。




